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僕らの脳はモジュールで出来ている:読書レビュー「進化教育学入門」②

※全文公開、投げ銭方式

こんばんは、駆け出し眼鏡です。
今回は、「進化教育学入門」という書籍の感想の続きです。

★★★☆☆

前回は「準備された学習」についてメモをまとめました。今回は後半に書かれている「課題専用モジュール」について書いていきます。


「汎用型プログラム」と「課題専用モジュール」
筆者によれば、人間の脳は「汎用型」ではなく、「課題専用」の小さなプログラムが集まってできているそうです。

ヒトの脳は、外界の多様な事物・事象の状態や変化を把握できる複雑な構造と働きをもっています。脳は、パソコンにたとえると、「汎用型プログラム」ではありません。(p.116)
「文書作成」や「図形作成」「表計算」といったさまざまな課題作業を、1つのプログラムが、課題に合わせて器用にこなすようなパソコンではなく、多くのパソコンがそうなっているように、「文書作成」のための専用のプログラムや「図形作成」のための専用のプログラム…といった具合に、課題ごとに、その内容にあった専用のプログラムで対応するような構造になっています。(p.116-117)

そしてこのそれぞれの内容にあった専用プログラムを本書では、「課題専用モジュール」と言います。この「課題専用モジュール」、重要なものは3つあり、それぞれが独立して動いています。

1. 生物専用モジュール:生物の基本情報を前提にして、各々の生物の修正・整体等の理解や学習を担当するモジュール

2. 物理専用モジュール:重力、バランス、運動の基本法則などの物理基本情報を前提にして、さまざまな物理現象の理解や学習を担当するモジュール

3. 同種専用モジュール:ヒトの感情や心理に関する基本情報を前提にして、対人的なやり取りの理解や学習を担当するモジュール


なぜ理系科目に躓く人が多いのか
ちなみに本書では、科学的知識を学校教育で学ぶ際に躓く人が多い理由として、この人間が持っている「課題専用モジュール」の理解と現実の間に齟齬があることがあげられています。

例えば、「上に上がるボールどちら向きに力がかかっているか」という質問に対して考えてみます。「物理専用モジュール」の理解では、「上昇するものには、上向きの力がかかる」「すべての物には重力がかかる」という二つの法則が働いています。しかし実際は、ボールにかかっている力は単純に観れば重力のみです(実際は条件次第で空気抵抗などがかかります)。

ここに齟齬が起きるため、理解することが難しいのではないか、と本書では述べています。


課題専用モジュールと現象の理解の関係
筆者によると、「何かを理解する」ということは3種類の情報を得ることと同義だそうです。またヒトは、それぞれの課題モジュールについて、この3種類の情報を得ようとします。

ヒトによる事物・事象の理解というのは、結局の所、言語で表せば三種類についての情報を得ることである。
1.現在や過去の状態の把握「何が、いつ、どこで、どのように、どうして、どうしている」
2.因果関係の把握「〜だから…になった」
3.仮定や未来の把握「もし〜なら…だ」
そして、われわれの脳内の各種の課題専用モジュールはすべて、それぞれの分野で、このような三種類の様式で事物・事象を把握しようとしている。(p.142-143)

本書で挙げられている例をもとに少し詳しく解説します。
ある場所で土砂崩れが起き、男性が巻き込まれたという状況を仮定します。

物理専用モジュールの場合
・状態の把握:彼は何をしていたのか、なぜそこにいたのか、どの辺りで巻き込まれたのか
・因果関係の把握:ここのところ雨がひどかったから、土砂崩れが起きた
・仮定や未来の把握:もし道が塞がれていたら、救助を呼ぶのには時間がかかるだろう

同種専用モジュールの場合
・状態の把握:彼はどういったヒトなのか(歳、見た目、職業など)
・因果関係の把握:彼は山菜をとりに山に登ったから土砂崩れにあった
・仮定や未来の把握:もし怪我をしていたら治療が必要になるだろう

といった形で、理解の仕方が変わるわけです。
※すでに書籍が手元にないため半分うろ覚えで書いています。大体こんな感じという理解でどうぞ


ヒトによって理解が早いモジュールが異なりそう

これ読んでいて思ったのが、ぼくの場合圧倒的に「同種専用モジュール」t「生物専用モジュール」での理解が遅いんですね。「物理専用モジュール」での理解が抜群に得意。

この「モジュール」で脳の特徴を捉える方式は、ハワード・ガードナーらが提唱している「多重知能理論」と関係があるらしいんですが、各々の強みを理解するのにも役立ちそうな考え方だなと思います。

では、本日も最後までお付き合いいただきありがとうございました。


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