なまみ

散歩が趣味です。大体今何歩あるいたか当てられます。

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散歩が趣味です。大体今何歩あるいたか当てられます。

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本を売るならブックオフ

自身の読書体験を遡ると、母の本棚にあったサン=テグジュペリの『星の王子さま』に辿り着く。 母の本棚は、小学三年生のとき、突然リビングに現れたような感覚があった。母…

なまみ
1か月前
9

散歩というタスク

真っ黒い雲が近づいている気がする。50キロ先くらいから、自分に向かってゆっくり。真っ黒い雲はこの世のいろいろな怖いものの象徴だ。雨の日、大きなクラクション、クソジ…

なまみ
11か月前

ここではないどこかへ

記憶にある中で一番初めに住んでいた家は、札幌の南区にある一軒家だった。その家は峠の手前に建っていて、周囲には住宅以外に、一台の自動販売機と山菜レストランとバス停…

なまみ
1年前
5

友達とは何か(あるいは美味しい海老フライの揚げ方)

二十歳くらいからPMDDの症状が月を追うごとに重たくなっていって、しんどいなあと自覚し始めた頃には生理周期も関係なく常に憂鬱だった。二年前に学童保育で働いていたとき…

なまみ
1年前
5

本を売るならブックオフ

自身の読書体験を遡ると、母の本棚にあったサン=テグジュペリの『星の王子さま』に辿り着く。
母の本棚は、小学三年生のとき、突然リビングに現れたような感覚があった。母親という生き物に対する興味と、それは同時に発生したように思う。『キャンディキャンディ』や『日本のきのこ』など、漫画や図鑑が多く並んでいて、それらは当時の自分が想像しうる母の趣味の範疇を超えていなかった。ただ、『星の王子さま』だけは違った。

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散歩というタスク

真っ黒い雲が近づいている気がする。50キロ先くらいから、自分に向かってゆっくり。真っ黒い雲はこの世のいろいろな怖いものの象徴だ。雨の日、大きなクラクション、クソジジイの立ちション、何の予定もない休日、無力な奴が振り絞る悪口、女児のパンチラ、戦争、予期せぬ裸体、親しい人の死。

休日にひたすら歩くと、雲が遠ざかっていくのが見えて、来週も生き延びられる、と思う。休日の逃げが足りないと、平日にツケが回っ

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ここではないどこかへ

記憶にある中で一番初めに住んでいた家は、札幌の南区にある一軒家だった。その家は峠の手前に建っていて、周囲には住宅以外に、一台の自動販売機と山菜レストランとバス停があった。特に娯楽もなかったけれど、家の正面に山があり、子どもたちが過ごすには十分だった。
記憶の中のその家は、大半が雪に覆われていた。私を含めた五人の兄妹は、母たちが共働きであるのを良いことに、車道に向かってノンブレーキでソリ滑りをしたり

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友達とは何か(あるいは美味しい海老フライの揚げ方)

二十歳くらいからPMDDの症状が月を追うごとに重たくなっていって、しんどいなあと自覚し始めた頃には生理周期も関係なく常に憂鬱だった。二年前に学童保育で働いていたとき、校庭を走り回る子どもたちを見ながら涙が止まらなくなって、職場へ行くことをやめた。それからは毎日家でずーっと泣いて、お腹が空いたら泣きながらスーパーに行って、ご飯を食べながら泣いて、帰ってきた恋人に八つ当たりをしながら泣いて、布団に入っ

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