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優しい藍色に包まれて (3)

実話に基づきアレンジした小説です、40歳の千鶴が見知らぬ人からの猛アタックを受けるが、既に既婚の千鶴にとっては嫌悪感や背徳感に悩まされるくらい追い込まれる。しかし、それ以上に男はアタックを緩めない。その猛アタックの理由を知った千鶴は愕然とする。

ラインの交換を求められる

インスタグラムで知り合って1年間は、その男はとても紳士的でした。2週間に1回の几帳面なくらい正確なインターバルの連絡の他は特に逸脱したものはなく、言葉も丁寧でした。

私の名前以外は特にプライベートの深堀りせず、当たり障りのない会話で終始しました。実家が旅館で、インスタグラムの写真がその旅館であることは私から言ったことなので、その男からの質問ではないです。

しかし、ある日、ラインの交換を求められました。私は躊躇しました、そして一度お断りしました。理由は、私は結婚していること、インスタグラムはそのような目的でやっていないこと、そして一番の理由が、私だけが名前も容姿(和服の後ろ姿だけですが)も実家の場所も教えてしまっていること。

そして、その男は私からのお断りを快く受け入れてくれました。私は逆にそのような紳士な対応に安心して、少し信頼するようになりました。

私「あの・・差し支えなければ、お名前はなんて呼んだらいいのですか」
男「剛(たけし)と呼んでください」
私「ありがとうございます」
男「実は用事があって山形に行くので、千鶴さんの旅館に寄ってきていいですか、インスタのところですよね」
私「え!?は、はい ありがとうございます・・」


私の実家を知られてしまう

私の心は複雑だった、最初は私のインスタグラムが実家の営業に役に立った嬉しさでした、でも、剛さんがグッと私に近づいてきてしまったような警戒感で心が覆われてしまった。

そして、それから1ヶ月後

男「ラインのID教えてください」
私「この間、お断りしたのに・・どうしてですか」
男「そうでしたね、すいません。ところで新庄に行ってきましたよ、良い所でした」
私「そうなんですね、ありがとうございます(本当に行ったんですね)」
男「千鶴さんの実家も訪ねました、古くから旅館をやっていて、とても趣がありました」
私「私の実家まで・・そんなはずかしい」

再びラインIDの交換を求められたこと、そして、早速実家の山形の新庄に行って私の実家を知られてしまったこと。

この時初めて、これまでのやり取りは、もしかしたら私が目的かもしれないと感じました。とても胸騒ぎを感じました。私は既婚ですし、そういうつもりは全くないのです。

そしてインスタグラムのDMでのやり取りを初めて1年後(今から1年前)、ついにラインIDを交換してしまうのです。理由は、それまでの2回どころか、5回程度教えてほしいと繰り返して求められたことでした。

そのしつこさと、教えないと今度実家に行ったときに親に聞いてくると変なことを言い出した為です。少し警戒しましたが、いざとなったらブロックすればいいと思い、仕方なくラインを交換しました。


今日も狙われた私

今日は友人と夜ご飯を食べたので少し遅くなりました。京急蒲田駅から国道15号線を渡って細い路地を歩き始めました。周辺はすっかり深夜の静けさで、夜空は、月が満月に近いくらいまんまるに輝いていました。

もう夜11時を過ぎて、人通りも・・と言いますか前も後ろも誰も歩いていないようです、きっと環八の大通りの方に皆行っているのでしょうか。

ラインIDの交換以来、私はインスタグラムの閉鎖を考えていました、私の旅館や実家の自然を紹介しているつもりが、私自身の紹介になってしまったようで、そしてそれが基で実家に迷惑がかかったら本位ではなく・・。

その瞬間・・お尻をかなり強く触られました。私は思わず「きゃ!」と声を上げました。そっか、その後、今は両手に荷物を持っていて無防備状態であることを自覚しました。

自転車の男は通り過ぎて振り返り、私をずっと見ていました、私は前に進めずにその場で立ち竦んでいるしかできなくて、しかし、自転車の男は構わずに私を凝視しています。

怖くなって、何故か「ゆるしてください・・」とだけ小さな声で発声しました。そして、自転車の男はその場を立ち去りました。

そばらく放心状態で立ち竦んでいました。

あと8分も歩くと自宅なので、気を取り直して歩こうとした瞬間です、またお尻をぎゅっと掴まれた感触が走りました。私はとっさに「きゃ」としゃがみ込みました。(もう泣き声でした)

さきほどの自転車の男がぐるっと周辺を回って、再び後ろから私を襲いかかったのです。そうなんです、今2回も続けてお尻を触られたのです。

しゃがみ込んでも膝丈もあるタイトスカートなので、反射的に横に脚を揃えて浅くしゃがみ込むくらしかできなくて、状況を見守りました。やっと、スカートの裾が気になって、あわてて手で隠しました。

自転車の男は視界に入ってこない(立ち去ったのでしょうか)ので、速歩きで自宅に急ぎました。









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