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「生きる力」を育む。ーSTEP(南十勝長期宿泊体験交流協議会)って何?

皆さん、こんにちは。
地域おこし協力隊の長谷川彩です。

皆さんは、大樹町を拠点に活動するSTEP(South Tokachi Educational Project=南十勝長期宿泊体験交際協議会)という団体をご存知でしょうか?南十勝をフィールドに町内外の子どもたちへ様々な自然体験学習を提供している団体なのですが、今回はSTEPが実際にどんなことを行っているのか、スタッフのお二人に話を伺ってきました!

お話を伺った人

安保翔太(あんぽ しょうた)さん
十勝出身。青年層のネットワーク拡大と北海道の地域課題の解決をはかるNPO法人「ezorock」での活動を経て、2015年から地域おこし協力隊として大樹町に移住。協力隊卒業後も、個人事業主としてSTEPの業務を請け負う。

野村智貴(のむら ともたか)さん
恵庭市出身。北海道教育大学でアウトドア・アクティビティや野外教育、環境教育について学び、2021年度より大樹町地域おこし協力隊に着任。任期1年目。

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STEPの設立は2008(平成20)年。もともとは総務省・文部科学省・農林水産省が連携し推進した「子ども農山村漁村交流プロジェクト」がきっかけでできた団体です。このプロジェクトは、一次産業を生業とする農山漁村での体験活動を通じて、子どもたちの向学心や自立心を育み、地域間交流を活性化することを目的としており、大樹町はその受入先として名を連ねていました。

設立から14年目となる現在は、下記の活動を中心に行なっています。

①十勝管内の子どもたちに向けた川遊びや自然体験、第一次産業の職業体験といった日帰り・宿泊体験の企画・運営
②大樹町の子どもたちに向けた大樹学(小中高一貫で多角的な視点から大樹町を学ぶカリキュラム)の企画・指導
③道外からの子どもたちの受入れサポート

それでは、それぞれの活動について詳しくみていくことにしましょう。

①十勝管内の子どもたちに向けた日帰り・宿泊体験の企画・運営

まずは、STEPの主催事業である体験活動についてです。大樹町をメインフィールドに、南十勝(大樹町、広尾町、更別村、中札内村、忠類地区)の地域資源を活かした自然体験・農林漁業体験・交流体験を年間を通して行っています。2021(令和3)年のプログラムを例に具体的な活動をみていきましょう。

※今後の日程は、新型コロナウイルスの感染状況によって開催可否や日程に変更が生じる場合があります。

(1) 6月 林業体験

大樹町の萠和山(もえわやま)山麓にある宿泊施設インカルシペ白樺付近の町有林で白樺の除伐に挑戦。その木を使用してウッドクラフトや薪割り、火おこしを体験しました。

▲ノコギリを使って白樺を除伐しました
▲木のマグネットづくりに挑戦中

(2) 7月 川あそび

大樹町の尾田地区にあるカムイコタンキャンプ場での日帰り活動と二泊三日のキャンプ。子どもたちは、水中での浮き沈みや水の流れの特性を学びながら、川流れや飛び込みを体験しました。砂金掘りや魚釣りにも挑戦。この時期は、ウグイやヤマメなどが釣れるそうです。

▲ウグイが釣れました!
▲川の流れに身を任せる。とても気持ち良さそうです

(3) 10月 酪農体験

広尾町の菊地ファームで職業体験。放牧地に放たれている牛を間近で観察したり、餌やりの体験をしました。子どもたちは、自分より何倍も大きい牛に臆することなく、ふれあいを楽しんでいたそうです!

▲牛が牧草を食べている姿を食い入るように見ています
▲牛の暖かさに触れ、何を思うのでしょう

(4) 12月 火おこし・調理体験

インカルシペの白樺林のなかで野外炊事に挑戦。薪ストーブを使って火をおこし、菊地ファームの牛乳を使ってホワイトシチューを作りました。こちらのプログラムについては町民ライターの岡山ひろみさんが取材を敢行!来週2月9日公開予定の記事で詳細をレポートします。お楽しみに。

▲薪ストーブに薪をくべてチョコバナナづくり
▲冬空のもと食べるシチューは格別です

(5) 1月 極寒つるつるキャンプ

大樹町の晩成地区での2泊3日の極寒キャンプ。早朝のワカサギ釣りや、氷上でのアクティビティを体験しました。氷点下でのしゃぼん玉や、漂流物でアイスホッケーなど冬ならではの遊びも。3日目は天然結氷した湖沼「オイカマナイトー」(全長4km)を3時間かけて横断しました。

動画レポートはこちら

▲ワカサギが釣れました(しかもダブル!)

(6) 3月(予定) いただきますキャンプ

一次産業を生業とする家庭への民泊を通して、食に関わる人の想いに触れる2泊3日のキャンプ。過去には、源ファームでのソーセージづくり、坂根牧場でのチーズづくり、そばや一秀でのそば粉を使用したガレットづくりなど、様々な事業者さんの協力を受け食品加工を体験。最後は自分で調理をして、保護者の方と一緒に食べています。

※現在はコロナウイルス感染症の影響により、民泊、保護者の方と一緒に食べることは行っておりません。

▲教わった方法でチーズを作りました
▲手作りチーズを使ってチーズ in ハンバーグ作り

②大樹町の子どもたちに向けた大樹学の企画・主導

大樹町では、小学校・中学校・高等学校が連携し地域の特性や教育資源(歴史・産業・宇宙・自然)を活かした教育活動「大樹学」に力を入れています。この「大樹学」においてプログラムや授業の企画をしたり、講師役を務める人材や関係各所との調整役を務めるのもSTEPの仕事です。

※大樹学についてはこちらの記事もご覧ください!

(1) 幼稚園/保育園/学童

未就学のお子さんへは季節に合わせて大樹の自然を楽しめるプログラムを実施。春に顔合わせをした園児たちは、夏は川遊び、秋は柏林公園で木の実や落ち葉を広めてお弁当づくり、冬は町営のスケートリンク閉場後に氷上遊びを楽しみます。大樹橋の下を流れる小さな川ではエビが獲れるらしいですよ。

▲カムイコタンキャンプ場近くで川遊び

(2) 小学校

4年生の地引網体験や、5年生の砂金掘り体験の連絡調整役を担当。砂金堀り体験では、スタッフとして児童を指導しました。「ノンストップで土を掘り続けるのはめちゃくちゃ大変」と野村さん。全身筋肉痛になるほどだそうです...! 5年生の宿泊学習でのプログラム指導(ウッドクラフトや石釜で焼くピザづくりなど)や、6年生の遠足(カムイコタンキャンプ場での地層についての体験学習)もサポートしています。

▲こんなにたくさんの魚が獲れました!
▲砂利をふるいにかけて砂金を探します

(3) 中学校・高等学校

中学生も同様に野外学習や宿泊学習のサポートをしています。また、ペットボトルロケットの製作・打上げのサポートや、町内に本社をおくロケット開発企業インターステラテクノロジズ(IST)の工場見学や宇宙航空研究開発機構(JAXA)による講座の連絡調整役など、航空宇宙産業の学びもSTEPが支えています。

▲空に向かって勢いよく飛んでいくペットボトルロケット
▲ISTの射場を見学する大樹高校の生徒

③道外からの子どもたちの受入れサポート

「森のようちえん 谷保のそらっこ」との交流

その他、STEPは大樹町の友好都市である群馬県吉岡町や姉妹都市である福島県相馬市など、ゆかりのある自治体や団体からも子どもたちを受け入れています。そのなかでも象徴的な活動に、東京都国立市谷保(やほ)の「森のようちえん 谷保のそらっこ」との交流があります。

▲谷保の子どもたちと大量のじゃがいも!

もともとは、スタッフの安保さんが前職のezorock時代に縁があったことがきっかけで交流が続いていた谷保のそらっこ。2017年から3年連続で大樹町へ来町し、尾田地区にある認定こども園に通う子どもたちのお父さんを中心に組織された「尾田おやじの会」との交流が始まりました。おやじの会一行も2018年に谷保を訪れ「十勝に比べれば非常に小さな自然環境のなかで工夫を凝らして自然学習をしている姿」に感銘を受け、それが現在の「体験活動クラブ どんぐり」指導のきっかけになったということでした。

※ 体験活動クラブ どんぐり…おやじの会が主催する体験活動クラブ。毎週月曜日の放課後、道の駅コスモールたいき横の交通公園などで外遊びができる。

▲十勝の広大な雪原を馬そりで駆け巡る

生きる力を育むために自然のなかで遊ぶ

大樹町の地域おこし協力隊として、STEPの活動は知っていたつもりでしたが、町内外を問わず子どもたちの学びにこれだけ関わっていたとは思いませんでした(知らなくてすみません)

 最後に、安保さんと野村さんに「STEPでの活動について思うこと」を聞いてみました。

10年以上、活動を続けてきたことの成果について話してくれたのは安保さんです。

「プログラムに参加してくれた子どもたちには、活動を通してメッセージを伝えていますが、ここで学んだことが明日からの生活にどう生かされ、どこまで定着するのかは僕らには分かりません。それでも、この10年間アップデートをしながら活動を続けてきた意味は、参加してくれた子どもたちの反応から実感しています」

例えば、数年前に開催した「開拓キャンプ」で小屋作りを体験したある少年が家に帰ってから自宅前に大きな穴を掘り、工事現場で木をもらって実践をしたという話を聞いたこと。

例えば、10年前から参加していた子どもが、今は大学生になってボランティアとしてSTEPの活動を支えてくれていること。

 例えば、常連の子どもが中学に進学して(生活スタイルやスケジュールの都合上)STEPへの活動に参加できないことを自覚して、泣いているところを見たこと……

「楽しかった活動に参加できなくなることだけではなく、STEPに携わる大人に会えなくなるのが寂しいという気持ちをもってくれるのは、とても意味があることだなと思いました。心のつながりというか、『信頼できる大人がいる』居場所にもなっているということだと感じています。これからもそういう場所としてSTEPが発展できればいいなと思います」

一方、昨年4月からスタッフとして子どもたちと接している野村さんは、「頭をつかって遊ぶということに慣れていないのかな」と率直な感想を口にします。

「僕が小学生だったのは、ほんの10年前ですがもっと自分で想像をしながら遊んでいた気がします。屋外というフィールドにどんなものがあって、どんなふうに遊べるかを考えていたというか。木を揺らしたら虫が落ちてくるとか、どんなものが火をつけたら燃えるのか、とか……体験的に体を使って、試しながら遊ぶことが今の子どもたちは少ないのかもしれません」

たしかに、今の子どもたちの遊びの主流であるゲームは、遊び方のルールや目的地に辿り着く(=ゲームをコンプリートする)までの道筋が決まっています。YouTubeなどの動画は完成したものを受動的に見て、「おもしろかった」と思うだけで終わってしまうことも多いでしょう。(もちろん動画の中でも物事を考えさせたり、視聴後の余韻に意味があるものもありますが)

「自分たちで考えて楽しめる場を自分たちで作る、ということを子どもたちにはもっとしてほしいと思います。それができるプログラムをこれからも提供していきたいですね。この思考過程ができれば、勉強やスポーツ、いずれは社会で生きていくために応用ができますから」と野村さん。

 決まった遊び方のフォーマットやルールがない自然のなかで、法則を見つけて試してみる。トライアンドエラーを繰り返して、成功したらそれを誰かに共有する。意見を交換してさらに「最善」を見つけていく。そこには、ヒントを与えてくれる大人もいます。自分で見つけたルールが、正解のない社会をしなやかに生きていく道しるべになる……

 まさに「生きる力」を育む。

STEPのパンフレットの表紙にあるコピーの通りですね。

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4、 送信!

 また、子どもたちと一緒に活動をしてくれるボランティアスタッフも随時募集中です。詳細は下記リンク先をご覧いただき、お気軽にお問い合わせください。






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