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株とは何かがピンとこない訳

日本人は金融リテラシーが低いとよく言われている。それはたびたび資産運用についての知識がないと同じ意味合いで言われ、その場合すぐに「株式市場に長期投資することにより資産を形成すべき」と帰結するようだ。

それで株式市場について学ぼうするか、実際始めてみるのだが、どうもピントこない。そういう人が多いのではないか。

誰にでも簡単に売買できる、”上場株”というものは、実は逆に一番ややこしく、理解しがたい代物と言える。何故なら、上場株は、金融(企業金融)のプロセスの中で、最後になってようやく出来上がるものだから。

会社がビジネスの元手を得るため、誰かから出資を受け、その証として株式が発行される。例えば、5万円出資を受け、一株発行される。会社が儲かれば、配当金が得られるかもしれない。会社が大きくなれば、一株の価値は、5万円よりもっとずっと高くなっているのかもしれない。

ここまでの話は、シンプルで誰にでも理解できるだろう。

さて先ほどの会社が十分大きくなり、業績も安定した結果、証券取引所が株式の上場を認めた場合、株式は“上場株”となる。一般的にいつでも売り買いされるようになり、株価は当初の出資額の5万円からかけ離れて高く、しかも常に上下している。全くの初心者、もしくは子供が、この時点から株をみたとき、色んな疑問やモヤモヤが生まれ、すんなり直感的には理解できないのではないだろうか。

ここで上場株と、そうなる以前の出資とその証としての株式を比べて、表面的な大きな違いは”時価”というものだ。5万円出資して一株持っていても、その株の時価などあまり考えないものだ(理論上算出して、プライベートに取引することはあるが)。誰にでもいつでも売買できるようになった上場株には、”時価”がつき、それは常に上下し、ある意味その瞬間の時価が全てであり、その時価の根拠に正解はない。だから直感的、本質的な理解が難しい。

結果的に、株による資産運用についての教育は、長期投資の有効性といった現象論やテクニックに終始してしまうのではないだろうか。