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虎子奮迅 4-4

川上が出て行ってから改めて虎之介は山本に
『なんかすいませんでした。川上さんに失礼な態度とってしまいまして。それとこれさっきのコーヒー代のお釣りです。人前で渡すもんじゃないと思いまして。』

『そういうところは気が利くな、マコちゃんの前でお釣り渡されたら取っとけって言うとこやったからな。それとマコちゃんの事は気にしなくていいぞ、兄貴には仕事の仕方教えてやってくれとは言われてるけど行儀教えろとは言われて無いからな。』

『いえ、少しは行儀良くできる様に気を付けます。それとずっと考えてたんですが片山の兄さんが事務所当番の時だけでも手伝いに行きたいんですけど、どうですかね。昨日も体調悪そうでしたし。』

『ああ、丁度兄貴には話があるから虎からの提案として話しとく。でも隆二君がいつも付いてるやろ?』

『いえ、隆ちゃんも事務所当番には連れて行ってないみたいですよ。』

『ふーん、そうか。兄貴には兄貴の考えが有るんやろ。まあ、話しておくな。』

虎之介は軽く頭を下げながら
『はい、お願いします。』
と答える。

山本は何か考え事をしているのかしばらく沈黙が続いた後
『ところで山本さん、不動産関係の仕事ってしてないんですか?』
虎之介から山本に問いかける。

『おっ、どうした急に。そういうのに興味あるんやな、不動産の仕事はしてないけど丁度今、工場に使えるところ探そうと思ってたところやから一緒に探してみるか?
お互い勉強になるやろうしな、良い所があったら銀行から借り入れして買ってもいいしな。』

『はい、是非、お手伝いさせて下さい。』

『おお、分かった。数日内に銀行の人間呼んで相談してみるわ。』
『それより達也君のとこに虎は面会行ったか?』

『いえ、自分はまだ行けて無いんですよ。何かありましたか?』

『いやいや、別に大した事や無いんやけど元気かなって思ってな、今来てた川上のとこの組長が達也君の叔父さんにあたるらしいからな。』

『達也さんから聞いた事あります。なんかテキ屋稼業をメインでやってるとこやから性に合わんって言ってましたね。』

『今はそうでも無いらしいぞ、川上も金貸しやらなんやらで稼いで本部長までのし上がったようなとこあるからな。まあ最初の頃だいぶ俺が応援したんやけどな。』

『そうなんですね。違う組織でも友達が出世してくれたら嬉しいですね。』

『そうやな、虎も頑張ってくれよ。』
山本は虎之介に答えながらバックを持ち立ち上がり
『俺はちょっと出かけてくるから松永が来るまででいいから留守番しとってな。』
と玄関の方に向かう。

『分かりました、松永さん来て忙しくなかったら達也さんの面会行ってきていいですか?まだ出てきて1度も行ってないんで。』

『あー、今日はやめといてくれ、先に兄貴に話しとかないかん事があるから行くなら明日以降兄貴に確認とってから行ってくれ。』
と言って虎之介が返事をする間も無く慌てて事務所を出て行く。

虎之介はなんだか山本の様子がいつもと違うとは感じながらもさっきの会話と川上の訪問により達也の事で何かあるんだろうとは思ったが昨日殴られたところが今になって痛み出して考えるのをやめてソファーに寝転がった。
この時の虎之介にはこの件で後に巻き込まれる事になるとは思いもしなかった。


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