SaaS営業の『ブラックボックス』 代理店営業における3つの大前提
本記事は「#SaaSLovers 秋のブログ祭り」 のバトンブログ企画記事です。10日目担当の、HubSpot Japan株式会社で代理店営業をしている橋本太一(@taichhashimoto)と申します。昨日、Holmesの津田さん(@small5_td)からバトンを受け取りました。
このnoteを読んで欲しい方
・SaaS代理店営業にご興味がある企業様
・SaaS代理店営業の方
株式会社LEAPTの戸栗さん (@ShoheiToguri) にお誘い頂いた本企画ですが、最近コロナの影響もあって読書量が増えて、思考にふける時間が多かったので、猛烈にアウトプットの機会を欲していた矢先のことでしたので大変ありがたいです。1週間前に初noteとしてストーリー調の自己紹介をしてみました。
単なる自己満足に陥らないように、どういう内容を世の中に発信していこうと悩んだ結果、今回のトピックは実はあまり語られることのない代理店営業における3つの大前提とさせていただくことに決めました。大前提と言っているくらいなので、これから代理店営業を始めたいと思っていらっしゃる企業様、営業の方にとってお勧めしたい内容です。
私自身がHubSpot Japan株式会社で代理店営業ポジションに就任する前に知っておきたかったことは今になって振り返ってみるとたくさんありますが、その勘所を押さえるのにも時間がかかるのは当然ですし、たらればを言っても仕方ないですね。当時の私が本noteに巡り合っておけばもっと代理店営業を早く理解できたかも知れない、そんな目線で書き進めていきます。
原因はすべてわれにありという思いに徹してこそ、失敗の経験も生かされ、成功への道がひらける。 by松下幸之助
経営の神様も言っています。自分の失敗を自責だと認めてこそ、成功の鍵があると。私自身も自分の失敗から学び直し、同時に皆様の成功に役立つことがあれば幸いです。
代理店営業とは
代理店営業って本当にブラックボックス化しがちなんですよね。ここでブラックボックスと言っているのは、代理店様や個別案件に関してのやりとりは属人的になりがちですし、その関係値を数字で測るのも難しいので、マネージャーや周りのメンバーからは実際の職務で何をしているかが見えにくい状態を指しています。
だからこそ、トランスペアレントにその状態を説明することで、周りからの理解を得られれば、代理店営業としても動き易くなる気がします。
私自身、2017年5月にHubSpot Japan株式会社に当初3人目のインサイドセールスとして入社して以来、Japanでは初めての代理店新規開拓ポジションなど様々な役職を経験させていただきましたが、代理店営業(HubSpot JapanではChannel Account Managerと呼ばれる)のポジションについた時が一番職務内容に戸惑いました。
今、私の言葉で「SaaSビジネスにおいて代理店営業とは、〇〇である。」と言い切ってしまうとしたら、「SaaSビジネスにおいて代理店営業とは、代理店様のお力を借りしながら営業パフォーマンスを最大化する仕事である。」となりますが、この答えが正解かもまだ分かっていないですし、一応形になるまで無数の障壁がありました。
ポジション就任当時の私目線で、このふわっとした代理店営業ならではの難しさを誰か分かりやすく解説してくれていれば...と思った点を3つの大前提としてまとめたいと思います。
①とにかくステークホルダーが多い
②売ることだけが仕事じゃない
③パートナーとしての関係構築
①とにかくステークホルダーが多い
SaaSビジネスにはベンダーとクライアント(ユーザー)が存在する。
ベンダー側に立ってみると、営業組織一つとっても直販営業と代理店営業が役割として別れている。一方で、クライアント側に立ってみると、SaaSを使いこなすための伴走支援や現場業務を助けてくれる代理店様もいる。
こう考えるだけでもステークホルダーが多数登場してきて複雑ですが、更に、案件ごとによって絶妙な距離感が求められる(これが各ステークホルダーをアメーバ状に散りばめた理由)ことが非常に多いのです。ある代理店様はクライアントをベンダー側に直接お繋ぎしたいというご要望や、また、ある代理店様は商流だけはうちを通して欲しいというご要望など、様々あります。
②売ることだけが仕事じゃない
代理店営業の仕事でもっとも重要なのは代理店様と協力して自社製品を販売することとよく言われますが、「販売する(=サービス提供先を選定する)」という行為は代理店様にとって氷山の一角でしかありません。私が関わってきた中で、成功しているなと感じる代理店様(パートナー)のケースを一般化してパートナーサクセスサイクルと呼んで図式化してみました。
この図を俯瞰して見てみると、彼らは自社サービスを売り込むというスタンスではなく、インバウンドマーケティングの実践により有望な見込み客を惹きつけて、ボトルネックに対する解決策を提案し(※ここが代理店営業が一番サポートしがいのあるところ)、サービス提供の質にこだわって顧客満足度の向上に努めています。
Kaizen Platformのスドケンさんが以下のようにツイートしています。
確かに、見込み顧客の言う課題に対してソリューションを提案するのは簡単なのですが、それだけで満足することなく、しっかりとボトルネックの発掘まで努力し、出来る限り理想的なステップを描いてあげるのも代理店営業の仕事です。よくある代理店様とのコミュニケーションを例に挙げると、以下の通りです。
代理店様「橋本さん、この見込み顧客様がメール配信に困ってるからMAツール入れたいと言ってます。」
橋本「代理店様、この見込み顧客様はメール配信自体に困っているのではなく、どのターゲットにどのメールを配信するかの施策の部分に困っているのではないですか?」
代理店様「実際に見込み顧客様に聞いてみたところ、まさにその施策の部分に困っていて、一緒に考えながらMAツールの選定もすることになりました!」
このように、代理店様の視点を一段階上に持ち上げることも代理店営業の大事な役割です。
③パートナーとしての関係構築
HubSpotの代理店営業(Channel Account Manager)に期待される仕事は世間一般の代理店営業に比べて、あまり単純なものではないようです。なぜなら、マーケティングコンサルタント(Channel Consultantと呼ばれます)と協力して代理店様のビジネス自体をより強固なものにし、そのサービス提供先を一緒に見定めて行くからです。
その際に、HubSpotの代理店営業はインバウンドセールスとして正しいアドバイスをする必要があります。特に私のような若輩者にとっては経験も知識も自分よりよっぽど深い代理店様に対面するので気をつけていることは、こちら側から地道でも少しずつ価値提供をして徐々に代理店様からの信頼を勝ち得ていくことです。その延長線上に、同じ目線で協業していくための本当の意味でのパートナーと言える関係性が築けるものだと信じています。
逆に、代理店様にとって販売数にノルマがあったり、ただSaaSを売り切る(リセラーモデルのような)ことを期待されているような場合だと、一緒にお仕事を推し進めるパートナーのような関係は必要とされていないのでしょう。
ちなみに、代理店様目線で見たHubSpotのパートナー制度に関しては株式会社100の田村さん(@KeiTamura100)が詳細に書いてくれているので、ご参考にどうぞ。
改めて皆様にお伝えしたいこと
代理店営業のお仕事というのは、誰でも失敗しがちです。それかもしくは、正解の無い問題をひたすら解き続けている感覚と言った方がイメージが伝わるかもしれません。それ故に、代理店営業担当者独自の施策を試すことなどもできるので、私にとってはとてもエキサイティングです。
誤解を恐れずに言うと、直販営業であれば見込み案件数 x クローズ率 x 顧客単価=売り上げのように公式化できることも多いのですが、代理店営業はその計算式の変数の中に定量的に測るのが難しい代理店営業と代理店様(パートナー)との関係値が入ってくるのでより難易度が上がるのではないでしょうか。
私が頭の中でイメージしている方程式は以下です。
見込み案件数 x クローズ率 x 顧客単価
x 代理店様との関係値
= 売り上げ
HubSpot内でも営業メンバーとして代理店営業が比較的大きな目標を任される傾向にあるという事実も踏まえると、方程式内における代理店様との関係値こそが他の営業との一番の違いであり、売り上げにレバレッジを効かせられる要素なのではないかと考えます。
そういえば、何でも数式化したがるのは前職からの上司の教えでもある、「ゴールから考え、差分を埋めるアクションを日々の業務にブレイクダウン(≒因数分解)しよう」という思想の影響が大きいのかも知れません。
本日は代理店営業の大前提をお伝えしましたが、もし反応が良くてニーズがあればいつか「代理店営業の極意」みたいなスーパー代理店営業チックな記事が出せればと思います。取り留めの無い内容にも関わらずお付き合い頂いてありがとうございました。
そして、私も皆様の失敗から学びたいです。しくじり先生会とか、failure forumみたいなことを企画しても面白いかも知れないですね。
P.S.ちょうど昨日HubSpot Japanで代理店営業のポジション(Channel Account Manager)が募集かかったみたいです。ご興味ある方は是非私までお問い合わせください。
明日の #SaaS Lovers の予告
次に私がバトンをお渡しするお相手は、元App Annie代表で最近独立したと話題の向井俊介さん(@Shun_Mukai0718)です。#旬トレでご存知の方も多いのではないでしょうか。全ての職種に通ずる大事なお話をしてくれるとのことで、めちゃくちゃ楽しみにしております!