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売れてる本がつまらないのはなぜか。

 最近、売れている小説を中心に読むようにしている。僕は昔から、多くの人が褒めているものに対して距離をとってきた。しかし、実際のところどうなのかは確かめないと分からない。そんなわけで、ベストセラーを調べて読んでいるのだ。

 結果はどうだったか。面白くないものばかりだった。なんで売れているのか全く理解できない小説があった一方で、人気の理由が予想できるものも存在した。それを踏まえた上で、どうしてつまらない本なのに売れるのかを考えたいと思う。

 ベストセラーになるのには、二つの要素があると考える。わかりやすい面白さと本を読まない人の貢献だ。

 まず、幅広く人気を獲得するためにはわかりやすいことが求められる。理解するために読者が考える必要があったり、予備知識が必要であったりすると、多く売れることは起こりにくい。

 そして、普段本を読まない人が買うと、その本はベストセラーへと一歩近づく。現代人の多くはほとんど本を買わない。具体的なデータは分からないが、一ヶ月に一冊でも買っていれば多い方だろう。そう考えると、年間に数冊しか買わない人の、その数冊に選ばれる本が売れるということになる。

 これら二つの要素を並べたとき、売れる本がつまらない理由が見えてくる。普段本を買わない人は、読まない人でもある。つまり、普段本を読まない人が、わかりやすい本を買っているということだ。

 読書初心者にとって、わかりやすい本は面白いことだろう。その口コミは瞬く間に広がり、さらなる読者を呼び込む。そうやって、ベストセラーは作られるのだ。

 一方で、僕ら読書好きにしてみれば、わかりやすい本はもはや物足りないと感じることが多いだろう。僕はそう思っている。読者が快楽を得るための小説ではなくて、読者自らがそれぞれの感性や思考によって楽しむ小説の方が面白いと感じるのだ。

 多数決は正しさの証明ではない。であるならば、売れているという事実も面白いことの証明にはならないのだ。

 しかしながら、本が売れない時代において、ベストセラーは救いである。その売り上げによって新たに出版できる本もあるだろう。そうならば、僕らはベストセラーのつまらなさを指摘するよりも、むしろ積極的に宣伝していく方が得策なのかもしれない。

 なんだか良い子ぶってしまったようだ。ここまでの内容は、僕の本心ではあるものの、自分に対して納得していない部分もある。やはり、ダメな本にはダメだと言わなければいけないと思うのだ。

 現代はホワイト社会だと言われる。酷評することを自然と避けるようになり、SNSには当たり障りのない感想が溢れている。みんな傷つきたくないのだ。それなら僕が犠牲になろう。

 言うべきだと思うなら、勇気を出して言おうじゃないか。それで自分が傷つくことになろうとも。

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