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映画界の成功者は、魔法使いになれる。

業界にはそれぞれ、社会に知られていない特徴がある。その中のスペシャリストたちは誰にも話していない、勝機をもっているものだ。知っているだろうか、映画界で成功すると、魔法使いになれる。これ、たとえ話ではない。

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太一(映画家):アーティスト業界情報局
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日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、
監督がスタジオから発する生存の記
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『 最近のはなし: 』

実家や自宅よりも、スタジオで過ごした時間の長い人生だった。部屋にこもり続けることで世間との違いを獲得してきた自負が、揺れている。みんなが部屋にこもり続け、スペシャリストであるわたしよりも美しく、豊かな時間を過ごしているようだ。悔しいのでわたしは、散歩の習慣を得ようとしている。まだ価値を見いだせず、10分ごとに「あぁ、本読みたい……。」などと。

さて、はじめよう。

『 業界、そろそろ限界 』

映画業界の実態は長い間、知られないままにある。映画人においてもこの“業界”を、俯瞰して全景を説明できる人物は少なくさらに、自在に具体を案内できる人物は、皆無に近い。

理由は大きく、2つ。
コミュニティのクラスターが小さすぎるために情報共有が難しいことと、業界間、ジャンル間、世代間での国境が機能しており実質的な移動が困難なことから、それぞれの解像度を上げたところで、比較ができないことにある。

映画界に限らず、美容、健康、医療、飲食、教育、宗教、政治、どの業界においても、同じ状況は起きている。しかし、障壁を越えて情報を管理できている人々は、存在する。

ちなみに、
映画に例えることを、許して欲しい。立場的に対外的な説得力が生めるだろう、という作為的な狙いと、問題が起きたときに正面から受け止める位置にあることからだ。国内外問わず映画界はなかなかに、喧嘩が多い。業界人として生存している限りにおいては逃げ切ることができないので、いつ、誰が相手であろうと刺し違える覚悟は必須だ。

では、順を追って説明してみよう。

『 プロデューサーと監督の常識は一変した 』

まず、俯瞰できる存在の筆頭は、「プロデューサー」だ。想定内だろう。
しかしそのプロデューサーからは見えない、場所がある。それは、映画の制作現場だ。プロデューサーが設計した撮影現場と編集仕上げ現場を合わせて、制作現場、という。

このクラスターは村意識が強く、スタッフたちは、プロデューサーとの間に心の壁を持っている。その結果、プロデューサーからは見えない場所が多い。それを把握しているのが、「監督」だ。想定内だろう。

ここで、認識を確認してみよう。

映画スタッフの多くはプロデューサーのことを、お金とスケジュールを牛耳る幹部であり、自分たちの雇い主だと考えている。自分たちとではなく、PCの画面と向かい合っている無機質な存在、だと。大きく外れてはいないだろう。

一方、映画スタッフの多くは監督のことを、スタッフと共に闘っているリーダーであり、プロデューサーと対立しながら作品のために公私を忘れる職人肌。映画企画というプロセスの仔細は知らないが、プロデューサーや姿無きお偉いさんたちに対しても一定の影響力を有している、と。どうだろうか。

これ、古い。現在ではもう、まったく違う。

現在の方程式を紐解けば、こうだ。

・プロデューサー:人間関係のプロフェッショナル/対企業対応が立ち位置
・監督は、仕組みのプロフェッショナル/企画開発の幹部として仔細に対応

どうだろうか。

『 号外:太一監督自分語り編 』

ここ「アーティスト業界情報局」ではなるべく、自分を語らないようにしている。それは、意識高い購読者の視野を固定して“単焦点”にさせないため。また、比較する習慣を奪って“単一指向性”にさせないためだ。

まぁ、偽善だが。珍しく今日は一瞬だけ、自分語りをしてみる。まぁダサいが、必要だからだ。

幼少期から身体が弱かったわたしは15歳ではじめて、映画業界からギャラを得た。学校にも通えず友人もなく、いじめられっ子になる資格も得られなかった毎日に、映画好きな父親の影響から、自主映画を創っていた。やがて担任の目に留まり、教頭へ、教頭から区長へ、区長から朝日新聞そして、マイナーな映画とフジテレビから依頼を受け、スタッフ参加し始めたわけだ。日本のインディペンデント映画業界、メジャー映画業界、民放バラエティーからドラマ業界、NHKからJAXAまでの公共、もっともキャリアを賭したメジャーCM業界、現在はロサンゼルスを拠点に、ハリウッドとロンドンを主に、フランスとメキシコ、ブラジルの映画人たちと連携しながら、既存の劇場映画、ストリーミング型短編映画、VR.、AR.、ホログラムの技術をつかい、多くの企業のスポンサードを受けながら、既存の映像業界では実現不可能だったハイエンドな映像製作を続けている。そこから本日まで一度のアルバイト経験も就職経験は無く、映画人として35年目の夏を生きている。
以上、生意気な発言をする準備としての前置きを完了する。

『 業界人は、業界に詳しくない 』

映画人の多くは、まってく、映画界に詳しくない。

国際的なマーケットのことは元より、自分が生息している業界のことすら、理解していない。毎日変化を続けている状況のUpdateなど、望むべくもない。映画人は映画作品の専門家であり、映画業界のド素人だ。

現在、映画界を動かしているのは映画製作会社ではなく、プロデューサーや監督、大スターでもなく、出資企業ですらないために、広告やマーケティングでも、ない。

映画界を動かしているのは、“空気”だ。

漠然としすぎているように感じるかもしれないがこれは事実で、比喩でもなんでもない。世間の「温度」「臭い」「風向き」が、すべてを支配している。勉強家の仲間たちは、「観客が牽引する時代、重要だね。」と気付く。

ただ、残念ながら、「観客」すら、映画界にはそれほど重要な存在ではなくなり始めているのだ。ここ、大切なのでもう一度言う。いや面倒なので言わないが、読み返すといい。


『 映画が観客に頼らない時代、目前 』

「お客さんあっての、わたしたち。」
言葉としては美しいし、個人的には大好きだ。完全に古いのだが。
美容、健康、医療、飲食、教育、宗教、政治、どの業界においても、“客”にたれる時代は、終わり始めている。

商品、サービス、ソリューション、何を提供しても、その対価を得る時代は終わろうとしている。哲学や自己啓発ではない、すでに起きている事実だ。

「体験を売る時代」というメッセージ、誰もが耳目にしていることだろう。
この文脈を正しく理解したなら、2つの単語で説明がつく。
「フリーミアム」と「プロセス エコノミー」だ。

簡潔に端折るが、「フリーミアム」とは、“基本無料”という事業モデルだ。
珍しくなど無い。日常的に使っているスマホのアプリ、ブラウザサービスの多くは“基本無料”だろう。開発に数十億円、維持管理に毎月数億円かかっていいても、使用料はかからない。そこに集まる人々から、“他で稼ぐ”わけだ。

その“他で稼ぐ”を具現化するのが、「プロセス エコノミー」だ。
商品、サービス、ソリューションを無料で提供する代わりに、
それを“提供するまでの課程を事業化する”ということだ。

『 あなたの事業、無料にできるか 』

たとえば、
今年の初詣で貴方はいくら、投じただろうか。
100円、1,000円いろいろだろうが10,000円は入れすぎだ。冗談はさておきそれ、正しいだろうか?“賽銭箱”に投じる金額は少ないが、“初詣”という企画イベントでは出店で食べ、お茶をし、会食しながらお年玉を提供したかもしれない。貴方は初詣というイベント企画に日常よりも多くの出費をしたわけだ。その“初詣の賽銭箱”こそをこれまでの商品、サービス、ソリューションと位置づけ、そこのことは重要視せず、出店をはじめとするその周辺で出費させ、賽銭箱で集められない規模の収益を得よう、という事業構造だ。

鑑賞もリラクゼーションも治療も学びも救済も指導も、すべてが“基本無料”に向かっている。貴方の業界は、貴方は、それに備えているだろうか。
気をつけなければならないのは、業界を牽引している存在のこと。

「空気」という、世間の「温度」「臭い」「風向き」を読み間違えないことだ。業界のプロは、業界に詳しくない。その理由をご存じだろうか。

経験を積めば、共感力は下がる。

『 なぜ、こんな記事を書いているのか 』

貴方は業界のプロフェッショナルだ。プロフェッショナルだからこそ、貴方は共感力を失っており、その業界、その業界を相手にしている客に、詳しくなくなっている。そんな自覚は日々、強めねばならないようだ。

ここは事業サロンではないので、回収しておこう。

・プロデューサー:人間関係のプロフェッショナル
・監督は、仕組みのプロフェッショナル

これが現在の、デファクトスタンダードな映画人の姿。そう、進化してきた結果だ。わたしは監督としてここで出逢う仲間たちに、“仕組み”を説明している。何のためだか、ご理解頂けただろうか。

このプロセスは、わたしの映画だ。

あぁ、ところで。
まだ日本に入っていないニュースをお知らせしておこう。

■ 最新国際News:「スター・ウォーズ/最後のジェダイ」監督のライアン ジョンソンが、自身の制作会社に新レーベルを立ち上げ、新人監督の低予算映画を製作支援へ

ライアン ジョンソン監督は、自身が設立した制作会社「T-Street」の活動を拡大する。ジョンソン監督は、映画「Baby Driver」や「Ted」を製作したインディペンデントの映画スタジオMRC Filmsと提携し、新進気鋭の映画監督による低予算映画を年に3-4本制作する、新レーベルを立ち上げると発表した。T-Streetは、才能豊かな新人監督と映画制作者が小規模な映画を世に出すことを支援する目的で、このレーベルを設計し、その新興を管理監督する。ジョンソン監督とプロデューサーのラム バーグマンは共同声明の中で、「私たちはMRC Filmsのような、映画制作者のビジョンを理解して保護してくれるパートナーに支えられてきました。映画業界の荒波を越えるためには、とても重要なのです。今回の発表はわたしたちにとって、新たな傑作映画を生み出すことと同様の喜びです 」とした。この活動は、旧来のハリウッドをぶち壊して掃きだめから人々を引き上げるという、権力を得た映画人の在るべき姿です。ジョンソン監督は言う。「“LOOPER”などのインディペンデント映画でチャンスを得たわたしがメジャー作品の“スターウォーズ”を引き受けたことで、失望した人たちもいたことでしょう。メジャー作品を手がけたことでわたしは、影響力を持てたんです。それが、今回のような活動の資金源になるんです」ジョンソン監督とプロデューサーのバーグマンは、NETFLIXとの契約から次回作以降の複数作品でも、1億ドル(110億円)の収入を得ることが決定している。 - APRIL 29, 2021 THE Hollywood REPORTER -

『 編集後記:』

インディペンデントの成功者がメジャーを掴み、得た影響力と資金で、新鋭のインディペンデント作品を支援する。いい話ではないか。これから映画界を目指す若者たちには、こういったニュースだけを届けたいものだ。

映画人にとっては、メジャー国際映画祭での受賞。ブランド企業にとっては国際的なヒット映画への協賛が、“力”を生む鍵となる。メジャーな国際映画祭での受賞や国際マーケットでの大ヒットから得られるのはお金だけではなくまさに、“魔法の杖”だ。

昨日までの地味な職人系映画人が突如、国際映画祭での受賞で“魔法の杖”を手に入れる。メジャーを掴んだ映画人は、魔法を使えるようになるわけだ。方法は簡単。報道カメラの前で視線を合わせて指させば、その指された相手は瞬時に、“ブランド”へと変貌する。使用可能回数は、無制限だ。

この“魔法”は、演者、企業、商品、場所、人、文化、ありとあらゆる存在に対して機能する。その点で、スポーツ選手や芸能人などの“個人力”とは異なる。魔法の使い道は、実に広い。

メジャーを掴んだ映画人は、強大な存在になれるわけだ。自国のため、業界のためそして、これから業界を目指す世界中の才能のために是非、魔法使いとして活動して頂きたい。魔法はおよそ3年で半減し、9年間で無効になる。

残念ながら、なにを勘違いしたやらメジャーの地位を自身の手柄だと勘違いし、魔法を使わないまま、枯れていく巨匠がいる。惜しい。業界の未来にも全く貢献のない、無駄な存在だ。尊敬など、できようはずもない。

魔法もヒーローも存在しない、どこまでも地味な手作業で人間だけが活動している映画製作の現場へ帰るとしよう。では、また明日。

■ 太一(映画家):アーティスト業界情報局 × 日本未発表の国際映画業界情報 あるいは、 監督がスタジオから発する生存の記