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社会人の学びとは vol.2 #31

以前の投稿で、社会人の学びとして、"transferable skills=転換可能なスキル"というものをご紹介しました。

今回は、もう一歩踏み込んで社会人の学びについて考えてみたいと思います。

1.学生の学びと社会人の学びの違い

学生時代の学びは、暗記中心で、ひたすら知識を詰め込んでいくという感じだと思います。

若い人は吸収力があるので、スポンジのようにどんどん知識を取り込んでいけます。どちらかというとインプット中心だと思いますが、面倒くさがりの僕は暗記という作業がとても退屈に感じて、苦労しました笑。

社会人の学びは「経験」がベースとなります。「振り返り(reflection)」と、それによる「気づき(awareness)」が中心となり、分析的になっていきます。

2.学びの比率

少し古いデータですが、アメリカ労働統計局の1993年~1994年のレポート(1998)によると、社会人は、仕事の内容の70%をOJT(on-the-job training)で学んでいるそうです。

オンタリオ大学のタフ教授によると人が一生で学ぶ機会は、通常次の3つに大きく分けられるとのこと。

仕事などを含む日常生活からの学び
上司、同僚、親や友達からの学び(インフォーマル)
学校やセミナーなどの教育機関からの学び(フォーマル)

これらの比率は概ね上から、70%:20%:10%となっており、この比率が人の一生の学びの機会と考えることができるようです。

この比率の意味するところを社会人の学びとして考えてみたいと思います。

社会人は仕事の内容の70%をOJTで学んでいるというデータとこの比率を踏まえると、仕事の内容に関するOJT以外からの学びは、概ね「インフォーマル」から20%、「フォーマル」から10%と考えて良さそうです。

OJTからの学びは、日々仕事をしていれば必然的に得られる学びなので、人と差をつけるなら、残りの30%の学びが重要となります。

この70%:20%:10%の比率は飽くまで可能性の話で、本人が積極的に「インフォーマル」や「フォーマル」からの学びの機会を作っていかないと、十分な学びは得られないと思います。

仕事に熟練することは素晴らしいことですが、社会の技術やシステムは日々変化しています。P.F.ドラッカーが言うように、現在の最新技術もいずれは必ず陳腐化します。なので、残りの30%の学びの機会を如何に得ていくかがやはり大切です。

上司や同僚、友人などからのアドバイス、ネガティブなフィードバックを無視することは、フォーマルな20%の学ぶ機会を逃してしまっていることになります。

また、社外セミナーに参加したり、MBAや各種資格を得ていくために学校に通うなどもインフォーマルな10%の学びの機会としてはとても貴重です。

70%:20%:10%のモデルは、社会人の学ぶ機会としての全体像を再認識させてくれると思います。

3.「metanoia」=精神と心の転換

ピーター・センゲによるとビジネスの世界では、

個人レベルでの学び
チームによる学び
部署ごとによる学び
組織による学び
組織同士による学び

がないと新しい創造やイノベーションは起こらないそうです。

センゲはこれらの学びを一言で「metanoia」=「精神と心の転換」 と言っています。

知識のインプットだけでは十分ではなく、精神と心の転換、幼い頃の学びから得た喜びのような感覚、つまり、「metanoia」がなければ「学び」とは言えないということのようです。

metanoiaな「学び」は「気づき(awareness)」と「振り返り(reflection)」から来ると言われています。

4.学びのピラミッド

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例えば、英語を勉強しても、英語圏の文化は少ししか知ることができません。

インプットされた情報に対して、「Why(なぜ)」と問いかけることで、つながりのないデータや情報が、意味のある知識(③)に変わります。

英語でいえば、アイコンタクトやニュアンス、文化などが知識となって英語がコミュニケーションのツールになっていきます。

たとえ知識があっても、それを実践で使わなければ、それ以上の学びはありません。実際に使うことで経験を積み、もっと深いレベルで共通点や相違点、知らなかったことなどがフィードバックされて、新しい知識が得られていきます。

第4段階の理論(④)とは、英語を話すためだけの知識というよりももっと広い範囲で使えるような知識が実践により得られることを表しています。これが以前お話した「transferable skill(転換可能なスキル)」です。

いろいろな学びを実践に活かしていくと、必ず失敗することがあります。どんな理論でもうまくいく場合といかない場合とがあるのです。

うまくいかなかったときに「なぜ?」と振り返ることで新しい方法論や知識を学ぶことができます。

振り返った内容をさらに実践に活かすことができるのが「智恵」です。

5.マンフォードのラーニングモデル

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ピラミッドでは、③④⑤と上下関係で示されていますが、実際のところは、Learning Cycleによって常に円でお互いに関係し合っています。

過去の経験やデータ、情報から共通点、相違点、今までの経験や前提から推量、分析をしながら、どういう意味か、何があったかと振り返る(Reflect)ことで、新たな気づき(awareness)が生まれます。

ここでは、理由や原因がわかるようなものの見方(theory)が出来上がります。過去を振り返るだけでは今や将来に活かせないので、次に新しく気づいた見方を実践で当てはめて(plan)、試してみる(action)ということが必要です。

そして、また次の振り返りが始まり、学びのサイクルは智恵となるスパイラルとして繰り返し繰り返し円を描くいていきます。言わば、学びのPDCAですが、これが「気づき(awareness)」と「振り返り(reflection)」の学びとなります。

6.まとめ

長々と書いてきましたが、一言で言えば、社会人ではアウトプット中心の「学び」が重要だということです。その上で、自分でその機会を作っていくということが大切になります。

実践し、振り返り、気づき、理論を組み立て、transferable skill(転換可能なスキル)および知恵を得ていきます。

ある状況でしか使えない知識では社会で通用しません。社会人としての「学び」の目標は、transferable skillを得て、それを知恵にまで高めることだと心得たいと思います。


出展:40歳からのMBA留学:オーストラリアでビジネスを学ぶ-Chapter43 4つ目の履修科目にコーチングを取る-

出典・引用:40歳からのMBA留学:オーストラリアでビジネスを学ぶ(http://ojisan-dreams.blogspot.jp/2014/10/blog-post.html)

引用索引
Kajewski, K & Madsen, V (2013), DeakinPrime-Demystifying 70:20:10 White Paper, D University, Accessed.

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