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堤防での海釣りは原則禁止です

この春から『放課後ていぼう日誌』というアニメが始まるそうですね。原作は漫画で、私は読んだことがないので具体的な内容については全く把握していませんが、女子高生達が堤防で海釣りを楽しむという部活動を描いた作品らしいです。

この作品はあくまでフィクションなので当然ながら何の問題もありません。しかし現実世界においては、堤防や防波堤、港の内外というのは原則として関係者以外立入禁止であり、釣りを楽しむことは認められていません。そりゃーそうですよね、本来、釣り用の施設ではないのですから。

海釣りが正式に認められている場所は限られる

海釣りが正式に認められている場所は、実はかなり少なく、親水公園や釣り桟橋、サーフ (砂浜) などに限られます。磯場に関しては、我が家の近所にはないので実状が分かりませんが、足場の悪い危険な場所であるため、立入禁止の看板がある場所が多いのではないかと想像します。

具体例をご紹介しましょう。例えば私の住む富山県には富山新港という巨大な港湾施設がありますが、その中で釣りが認められている場所はというと…、

富山新港_k

・出典: 富山新港で魚釣りができる場所 (富山県富山新港管理局)

たったこれだけなんです。開口部にある富山新港西堤と富山新港東堤は好ポイントであり、かつての人気ポイントでしたが、今では堤防の入り口がしっかりとした柵で閉鎖され、完全立入禁止になってしまいました:

東堤立ち入り禁止 1月19日フェンス設置富山新港 ─ 中スポ釣りナビ (2019年02月06日)

もう少し広い範囲ではどうかというと、

高岡新湊

サーフ (砂浜) と万葉埠頭緑地公園が増えたぐらいで、正式に海釣りが認められている場所って、とても少ないのです。地域差もあるでしょうが、全国的に割とそういう傾向の場所が多いと思いますよ。(※ 上記の地図は不完全なものであり、間違っている部分がある可能性があります。例えば海老江のサーフの突堤はどうやら立入禁止ではないようです。)

地域差に関しては、例えば同じ富山湾でも東部であれば急深のゴロタ浜 (砂ではなく小石で形成された浜) が多く、それが好ポイントになっているため、高岡周辺に比べれば圧倒的に好条件と言えるでしょう。

しかし、高岡周辺は立入禁止の場所ばかり、というのは名目上のことで、実状としては、それ以外の岸壁や漁港の内外、河口エリアで釣りを楽しむ人も多く、閉鎖用の柵を越えたりしない限りは取り締まりを受けたりすることも滅多にありません。

釣りポイントマップには本来立入禁止の場所が多数掲載されている

地元の新聞社等が発行している空撮による釣りポイントマップには、本来立入禁止ではあるが釣りが黙認されている場所が数多く紹介されています:

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ですが、あくまで黙認されているだけであり、ほとんどの場合、堤防の入り口や壁面に「立入禁止」と表示されているはずです。

そして、ある日突然取り締まりが強化されたり (富山県内では近年、その結果として相当数の人達が軽犯罪法違反 (立入禁止場所への侵入) で取り締まりを喰らったようです)、閉鎖用の柵が設置されて入れなくなったりする可能性が常にあります。

実際、昨年閉鎖された富山新港東堤は、上記の写真にもある通り、どのポイントマップにも必ず載ってるポイントでしたから。

富山県内では、他にも多くの好ポイントが潰されてしまいました。全国的に、そういう流れがあるようです。そして残念ながらこの流れが止まることはなく、今後も釣り場が失われていくことでしょう。

親水権への配慮

日本には「親水権」という権利があり、行政側にはこれに配慮する義務があるようです。だから、過剰な規制をすべきではないという声もあります。

私個人としても、海釣りが正式に認められている場所がかなり少ないという現状は、親水権が充分に確保されているとは言えないと思います。

しかし現実的に言って、行政は若干数の親水公園や釣り桟橋を設けることでお茶を濁す、ぐらいのことしかやらないでしょう。

高岡・富山新港周辺の場合、現状では釣り桟橋は全く存在しません。海王丸パークには落下防止柵付きの突堤があり、いかにも釣り桟橋っぽい雰囲気なのですが、古く状態が悪いためか立入禁止になっています。

幸いなことに、将来的には万葉埠頭と海王丸パークに釣り桟橋を2基ずつ新造する計画があります。赤い二重丸が釣り桟橋の建設予定地です:

釣り桟橋_万葉埠頭

・出典: 伏木富山港 (伏木地区) 港湾計画図

釣り桟橋_海王丸パーク

・出典: 伏木富山港 (新湊地区) 港湾計画図

ありがたいことですね。万葉埠頭の建設予定地ではあまり好釣果が望めないような気もしますが、海王丸パークの北岸なら絶好のポイントであり、好釣果が期待できるはずです。

ただし、そういう計画があるだけで、現段階では工事も始まっていません。加えて、この手の釣り桟橋は通例として日中しか開放されず、最も有望な時間帯である朝夕のまずめ時 (薄明るい時間帯) は運営時間外ということもあって、あくまでファミリー釣り場であり、本格的に釣りを楽しむには不向き、という印象があります。

加えて、そういった釣り桟橋が出来ると、それに併せて周辺への立入規制が強化されてしまう可能性があるかも知れません。

行政が立入規制を強化する理由

行政は何故規制強化をしたがっているでしょうか?

ひとつには富山新港東堤の閉鎖を報じた先述の「中スポ釣りナビ」のニュース記事内でも明記されている通り、SOLAS条約という国際条約を順守する必要から、という理由があるようです。

これは日本語では「海上人命安全条約」と呼ばれ、船舶の安全確保を目的とする国際条約です。そしてこの条約では、国際港の保安のため、周辺の岸壁や堤防の立ち入り規制が求められているようです。そして、必ず規制すべき場所についての条件が定められている他、必要に応じて任意での追加規制をすべき、という旨も書かれているようです (※ 詳しく調べたわけではありませんので、間違っている可能性もあります)。

しかしながら、あの堤防は船舶が利用する岸壁からは遠く、立入規制を行っても船舶の保安には寄与しないですし、SOLAS条約で立入規制が必須とされる条件には該当していないのではないでしょうか。

規制強化を進める上でのもうひとつの理由は、時折釣り人の死亡事故が起きるためです。富山新港東堤でも、死亡事故があったことが閉鎖用の柵の新設のきかっけになったようです。この点に関しても先述の「中スポ釣りナビ」のニュース記事内で言及されていましたね。

そして私としては、恐らくはこちらが主な理由であり、SOLAS条約は「名目上の理由付け」として利用されたに過ぎないと考えています。SOLAS条約絡みでは、そのような「便乗規制」が全国的に多発している、とも聞きますから。

行政としては当然ながら死亡事故は起こって欲しくないため、落下防止柵が存在しない一般的な堤防での釣りは一切認めたくない、というのが本音でしょう。ですので、常に規制を強化するための理由付けを探しています。そして、1件でも死亡事故が起きれば、その場所が遠くない将来に閉鎖される可能性が高いです。

そもそも海辺に100%安全な場所など存在しないのであり、1件でも死亡事故が起きた場所では、いずれ必ず再び死亡事故が起きる、と考えるべきでしょう。ですので、行政としては当然ながら規制を強化し、完全立入禁止にするのです。

さらに、長い目で見れば、他の場所でも、いずれ必ず死亡事故が起きることでしょう。

従って、全国的に、今後も取り締まりの強化や閉鎖用の柵の設置といった動きが続いていくと思います。そうやって、好釣り場が徐々に、そして確実に失われていくことでしょう。

ですが、稀に発生する死亡事故を防ぐ必要があるとはいえ、数多くの好釣り場を閉鎖し、多くの人達の楽しみを奪うということが、果たして正しい行政のあり方なのでしょうか? 個人的には、大いに疑問に思います。

その場所を閉鎖しても、別の場所で死亡事故が起きるだけだと思います。だから、人命を守ることにはほぼ繋がらないと思うのです。もちろん、特別に危ない場所だった場合にはまた別の話でしょうけども。

今はまだ、釣りが黙認されている堤防も多い

私としては、足場が良く水深もある堤防はやはり好釣り場ですし、先述の通り、今はまだ実質的に黙認されている場所も多いため、「堤防での釣りは一切すべきではない」とは思いません。しかし、以下の点には充分に留意すべきだと思います:

・閉鎖用の柵を越えて堤防に入らない。
・天気予報を事前にしっかりと確認し、無理な釣行は避ける。
・足場が良い場所であっても防滑シューズ、ライフジャケットといった安全装備を欠かさない。
・万一の落水時に緊急連絡できるよう、携帯電話は防水タイプが望ましい。
・キャスト (仕掛けや疑似餌を投げる) の際の安全確認を欠かさない。

2点について補足します。

まず防水携帯に関して。近年実際にあった事故として、神通川河口でライフジャケット着用で釣り中に落水して沖に流され、最初は通じてた携帯がやがて通じなくなり、捜索の結果発見されず、行方不明に終わった、というケースがあります。想像に過ぎませんが、携帯が防水型ではなかったのかも。GPS機能を備えた防水携帯だったら、結果が違っていたかも知れません。

私は防水型でGPS機能付きのガラケーを愛用しています。これなら濡れていても比較的使い易いので、安心感があります。それに加えてiPadを持ち歩いています。

また、今では PLB (個人用遭難信号自動発信器) という機器もあります。お値段はそれなりに高いですが、命を守るためには有効な機器ですし、私も所有しています。

命を救うためのデバイス 個人で使える遭難信号自動発信器「PLB」とは - ITmedia PC USER

2点目、キャスト時の安全確認に関して。富山県内で、釣り人がエギ (イカ釣り用の疑似餌) を投げようとした際に女の子の目に直撃し、失明させてしまったという痛ましい事故が起こったことがあります。ちょっとした油断が、このような事故に繋がります。

くれぐれも安全対策に留意しながら釣りを楽しんでくださいね。

ただし、繰り返しますが、堤防は原則として関係者以外立入禁止であり、お目こぼしで黙認されているに過ぎない、という点を忘れないでください。ある日突然取り締まりを受ける可能性は常にありますし、ある日突然閉鎖用の柵が設置されて入れなくなる可能性だって常にあります。年々、風当たりが強くなっていっていますからね。

【2020-07-08 追記】最近ではコロナ禍の自粛期間中に釣り人のマナーの悪さが問題視され、自粛期間終了後も閉鎖されたままになってしまった釣り場がある、という話を聞いたような気がします。

堤防を管理釣り場として開放する、という動きも

ちなみに、まだまだ数は少ないと思われますが、堤防をNPO団体が管理する形で管理釣り場として開放する、という動きもあります。こういう動きが広がると嬉しいですね。

NPO法人 ハッピーフィッシング

そのためには、「堂々と海釣りを楽しめる場所が少ない」という問題をなるべく多くの人達に知ってもらうことが出発点だと思います。

筆者はマイボートオーナーなのです

ちなみに、私個人としては、よく通っていた大好きなポイントに入れなくなったこともあり、もう、陸っぱり (おかっぱり) で海釣りを本格的に楽しむことは諦めました。今ではボート免許を取得してマイボートを購入し、船釣りをメインに楽しんでいます。

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