見出し画像

2020 J2リーグ第20節 ツエーゲン金沢 VS アビスパ福岡レビュー「失敗を糧にせよ」

先の5連戦は2勝3分 勝ち点9と負けなかった金沢。しかし勝ちきれないという課題も。引き分けた3試合はいずれも先制されている。追い付けないよりはマシだが19節までで先制された試合は13もあり、勝率約23%(3勝3分7敗)。1点は獲れるが試合をひっくり返すまでには至っていない。ルカオの帰還が待たれるところだが、個人に頼るチームではないのは誰もがわかっている。今しなければいけない事で勝つしかない。

福岡は4連勝中で連勝前は17位だったが、金沢戦の前には8位に浮上。それだけ中位と下位には差が無い近年のJ2。降格が無い・今までに無い日程とは言え成績が悪くていい訳が無い。長谷部監督は千葉・水戸・福岡と3クラブ目を指揮するが、選手としても神戸で10番を背負ったほどの名プレーヤー。水戸の2年間で監督としての評価も上げた。

福岡は第9節がコロナウイルスの影響で順延となり5連戦と5連戦の間に組みこまれた為、11連戦となって金沢戦が7戦目。もちろん中2日でターンオーバーな訳だが、前節から1週間空いたホーム戦の金沢は福岡をどう待ち受けたのか。

スタメン

金沢の前節からの変更は2点。高安・ホドルフォが抜けて藤村・窪田がIN。現状で組めるベストメンバーといって良いだろう。”戦えない”二人となぜ休んでいるのか不明な一人を除いてだが・・・。

福岡は前節から6人を入れ替えた。しかも今季1000分以上出ている主力をベンチに並べる。2軍という訳ではないが、出来ればこのメンバーで先制逃げ切りしたいし、もしダメでも後半から主力を投入する事で勝つ見込みは十分ある。しかも出場時間が少ない選手の貴重な経験の場となる、という抜け目の無い長谷部監督の布陣。次のホーム群馬戦に向けて帯同させず休ませた選手もいる事だろう。

アビスパがそれを出来るのは何故か。単純にターンオーバー出来るくらい選手層が厚いからだけではない。金沢が「金沢のサッカーしかしないから」である。それが良いか悪いかはさておき、対戦相手としては準備しやすい。

前半開始

ヤナ将は「ロングボールを出させないように」と試合前コメントで語っていた。ロングボールは言わずもがな、後ろの選手から前線の選手に向かって出てくるボールなのだが、金沢はロングボールが出ると東家くんの185センチの身長が脅威というより、カウンターに繋げにくいし、後方からのビルドアップが苦手だという根本的な問題を抱えている為にそうせざるを得ないところがあった。

しかし福岡は東家くんがロングボールを収めてというシーンがそんなに多いわけではなかった。序盤はミドルサードでのボールの獲り合いとなり、どっち付かずの展開。給水タイムでほぼ互角のボール支配率。さすがは支配率21位と20位の対決。

福岡の攻撃は2種類

それでも福岡は7分11秒や12分5秒のようなセランテスさんのゴールキックから少ない手数でシュートまで持っていくシーンが見受けられたが決定的なチャンスとまではいかず。

また12分34秒の三國くんから右サイドに出したロングボールのように、ただセカンドボールを拾うだけではなく、ショートパスで狭い密集を突破して中央で待っている左サイドの選手にボールを渡そうとする意図が感じられる。

それがビッグチャンスとなったのが17分26秒からのサロモンソンさんからのパスシーン。

この輪湖くんのシュートは白井くんが止めたが、決定的な場面。特にマンツーマンを意図的に外されたような動きでもなかった為に、連携ミスが命取りになりそうだったシーンだった。

金沢も応戦、しかし・・・

金沢は左サイドは渡邊・島津に加藤くんが絡んで崩しにかかり、右サイドは長谷川・窪田で隙間を見つけてクロスを上げようと試みる(30分44秒)。さらに窪田きゅんがMF-DF間でボールを受け、中央にボールを供給しようとするシーンも見られたが(22分12秒)やはり福岡のパス交換と比べると意識の相違が見られ、今後に期待したいところ。

そして失点シーンへと繋がる。ここは推測でしかないが「ロングボールがきたら跳ね返す(セカンドボールを獲る)」ような指示があったと思われる(31分24秒)。ゲームを振り返る限り、金沢がロングボールを弾かなかった時は相手(福岡)が対処(競り勝ってセカンド回収)している。

このシーンは石尾くんが、冷静に回りを見れば敵は存在せず、足元にボールを収めて対処すれば良かったのだが、弾いたボールが福岡の北島くんに渡りサロモンソンさんへ。そのサロモンソンさんのクロスを石尾くんがクリアしコーナーキックとなる。しかし31分26秒で相手にボールが渡ったところでサロモンソンさんに追いつこうとしていない島津くんが目に入る(下の図)。

ここのネガトラ時のルールを整備しない限りクリアの仕方をミスし、コーナーキックを与えてしまったから得点に繋がったと言っても、あまり次に繋がらないと思う。頼盛くんはディフェンスが足りていると思いポジトラ時に備えていたのかもしれない。

石尾くんは分かりやすいクリアをしたし、下手に前にボールを出してしまうと相手に拾われた可能性だってある。

そしてコーナーキック(CK)はサロモンソンさんのキックの質とグローリさんのジャンプのタイミングは素晴らしかったが、ここは白井くんの動きに注目したい。(下の映像は1失点目のシーンから)

18:27秒の金沢から見て右からのCKもそうなのだが、まず近くにいる敵(ストーン)に気を取られすぎている。ストーンが邪魔をしてこようがどうだろうが自分から触る必要は無いのだ。単純に近くにいる敵にボールが来た場合は、しっかり準備をしていれば、手を伸ばしてキーパーが先にボールに触れる確率の方がはるかに上である。

さらには無意識なのかも知れないが、そのストーンに触れているが為、不必要に前に出てしまい、後ろに下がってから踏ん張った後(プレジャンプ)でジャンプしているので、後ろ斜め方向に飛んでいる。

横方向や斜め前方向にジャンプをしても失点を防げたかはわからないが、後ろに飛んでいては防げるボールも防げない。この事はジョアン・ミレッ氏の著書にも書かれている。

とにかく、失点から得られるものは多い。それを次に生かさないとまた先制される事を繰り返す。

金沢0-1福岡

しかし、同点弾はまさかの1分後に訪れた。

恐るべしストライカー陸次樹

下の映像は陸次樹くんのゴールシーンから

加藤陸次樹くんの三國くんを置き去りにするトラップ、そこからなんと、セランテスさんを見る事なくシュートを打っている。

スローVTRを見るとパスを受ける前に、一瞬だけゴール方向を見ているのが何とか確認できる。ほんのチラッとだ。という事はその一瞬で三國くんの位置とセランテスさんの位置、ボールをどこに動かしてシュートを打てばいいのかイメージ出来ているという事なのだ。

恐るべし陸次樹くん。

しかし周りのサポートがしっかりあった事も忘れてはいけない。

本塚・島津の好アシストもあり同点に追いついた金沢。

金沢1-1福岡

さらにこの後も、金沢のジャック・スパロウこと杉浦恭平くんの裏への飛び出しや、窪田・長谷川のクロス藤村くんのミドルシュートなど福岡に比べ多くの攻撃を繰り出した金沢。このままの勢いで後半に逆転だ!という感じで前半が終了した。

後半開始

福岡は北島→増山、東家→ファンマという交代で主力がIN。金沢の交代は無し。

福岡はファンマがトップの位置には留まらず、両サイドやかなり下の位置まで降りてポストプレーやボールキープ力を駆使して石津・木戸・増山にボール供給を試みるが、金沢は福岡に決定的な仕事をさせない。

金沢の攻撃は、島津の攻撃への貢献が目立つようになるが、後半開始直後のグラウンダークロスや52分56秒の杉浦恭平くんを狙ったクロスなど惜しい場面はあるものの主導権までは握れない。その一方で窪田きゅんの疲労が濃く、ボールを持っても前半の迫力は無かった。

福岡は58分に石津→遠野の交代でファンマさんが1トップで遠野くんがトップ下のような4-2-3-1に変更。

このあたりから引いて守る福岡、ポジショナルな攻撃で相手を崩せない金沢という色が顕著になる。

さらに66分24秒からのシーンを見てもらえばわかるのだが、金沢なら急いでカウンターにしてしまいそうな場面でもボールをゆっくり繋いで、相手の深い位置までボールを運ぶ福岡。そうすれば、金沢にボールを奪われてもクリアをロングボールで出す。自陣に押し込まれている金沢・福岡の選手を飛び越してFWにボールを出してカウンターを狙いたいから。しかし、福岡の両CBが身長的に有利。セカンドボールを拾える確率も上がる。

金沢は61分19秒の輪湖くんのパスミスを拾った島津頼盛くんのミドルシュート、72分30秒の渡邊くんのドリブルからPAに侵入してのポスト直撃のシュートなど、いい場面は見せた。この渡邊くんで終わった攻撃のシーンはポジティブトランジション~攻撃、福岡からするとネガティブトランジション~守備の局面となるわけだが、福岡の守備のスライドが遅れていた為に生まれたチャンスだった。このような攻撃を焦る事なく続けていれば、また結果は違ったのかもしれない。

しかし福岡が焦る事は無かった。その渡邊くんが得たCKからの、セランテスさんのロングフィードのセカンドボールをしっかりとモノにしている福岡。

前くんから縦パスが遠野くんへ、ワンタッチパスでPAに入って行った木戸くんがボールを受けるが足元に収まらず、マークしていた金沢SB長谷川くんが咄嗟に前にいた廣井くんへパス。廣井くんがクリアしようとしたボールがファンマさんに当たる。その返ってきたボールをまた長谷川くんが頭でクリアしようとしてボールはゴールへ。

何はともあれ、後でスローで見てもボールがラインから出ているので得点が認められるのは仕方ないが、副審がボールと平行の位置まで移動していないのに、その判断の驚くべき速さと、その前のファンマさんに当たったボールがハンドではないのかという事が全く触れられていないのが残念。

しかし長谷川くんがボールを廣井くんに咄嗟に出してしまったという事が、ヤナ将のいう「落ち着いてプレーしなさい」という事なのだろう。VARも無いし認められたものは仕方ない。

金沢1-2福岡

金沢は金子くんが窪田きゅんと替わって69分にINしていたが、この失点後の残り15分でベンチが出した答えは86分の杉浦→杉浦交代のみ。あ、恭平→力斗ね(笑)

19節終了時で金沢は75-90分の時間帯で、得点出来た事が僅かに2回しかない。それだけ策も駒も持っていない。苦しい時間に動けと言ってもどれだけ動けるものだろうか。相手より動く。それが策なのだろうか

福岡は結局、木戸→上島の交代で5バックへとチェンジ。90分51秒の金沢CH本塚くんの斜めのアーリークロスがFW加藤陸次樹くんにあと少しで合いそうな場面も見られたが、真ん中を閉めてきた相手を崩せない金沢がホームで痛い勝ち点0となった。

試合終了

試合データおよび各スタッツ↓

試合ハイライト↓(最初から)

失敗から学べばいい。それが出来れば必ず次につながる。しかし、2枚しか交代カードを切らないのは「諦めた」と思われても仕方ないのではないだろうか。結果、負けたのだ。

ホドルフォをFWの位置に入れた磐田戦の事を考えると、あの時よりよっぽど何か策を講じれば勝つ可能性があった。しかし、指揮官は何もしなかった。この試合での答えは負けだ。しかし指揮官はもっと先を見ているのかもしれない。

ただ、結果は積み重なっていく。還暦を過ぎても金沢にこだわる指揮官は未来をどう描いているのか。振り返る時間はあまり無い。しかし、そのままでは上には行けない。

ツエーゲン金沢応援集団「RED TAG」運営費用としてありがたく使わせていただきます