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2020 Jリーグ第23節 松本山雅FC VS ツエーゲン金沢 レビュー 因縁

4試合で15失点。白井裕人が金沢に加入してから2年間に山雅に入れられたゴールの数である。その間、金沢は山雅から得点をあげられなかった。勝ちっぱなしのままJ1に行ってしまった山雅が、1年で同じカテゴリーに戻ってきた事は、山雅サポにとっては残念なトピックだっただろうが、僕にとっても残念だった。J1でまた遭遇したかったからだ。

ずっと因縁の相手として悔しい思いをしてきた金沢。山雅はいつだって上から目線で、実際金沢に勝ってきた。布さんに監督が替わった2020年、やっと0-0のドロー。しかし全く追い付いたわけでは無い。いつも先を歩いていた山雅がつまづいているだけなのだ。

実際、監督がまた替わった。J1というカテゴリーを経験してきたからこその紆余曲折、布更迭なのだろう。柴田新監督が就任して2試合目だろうが山雅は山雅。前節・愛媛戦を休んでこの試合に向けてモチベーションを高めてきた白井裕人は古巣の状況をどう思い、ピッチに立ったのだろうか。

スタメン

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金沢は廣井→作田の変更のみ。今回も山根永遠くんが入っていてホッとしました。単なる数合わせでは無かった様子。

対する山雅は6枚変更。めんどくさいので割愛しますが確認したい方はこちらをご覧ください。

試合開始

前回対戦のレビューはこちら↓↓↓

開始4分でジャエルさんにアクシデントが発生。阪野くんと交代となってしまいました。なかなか日本で結果を出せないジャエルさん。翌日にはイズマさんの契約解除も発表され、リーグ後半戦のFWのやりくり問題が発生してしまいました。10月2日から30日に設定された2020年の特例、第三登録期間に動きがあるのでしょうか。

慣れるのに時間がかかる金沢

金沢は4-4-2。それに対して山雅は3-1-4-2でミスマッチを作ってきます。山雅は左サイドからの攻撃が主だったのですが、序盤の金沢は山雅の出だしの様子を伺うように引き気味に振る舞います。

前回対戦と同じようにポジションなど気にせず動くセルジさん。そのため、阪野くんには金沢左サイドにきたら作田くん、右サイドでは石尾くんがついていました。

ですが、中美くんが上下動をするために石尾くんがついたり、久保田くんが山雅左サイドに移動する際に、頼盛くんがついていったりしているうちに、守る人数が足りているのに山雅にフリーになる選手を作られてしまいます。

11分05秒は右サイドの前くんがゴールに向かうシーンです。

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山本龍くんのクロスは逸れてピンチにはなりませんでしたが、序盤は山雅がスペースを巧みに使いボールを前に運んでいました。

12分44秒でも頼盛くんが久保田くんのマークに行っている為、空いてしまった前くんに渡邊くんがプレスに行き、その後ろに阪野くんが入り込みます。

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ここでついて行った作田くんが置き去りにされシュート、角度が無かったので白井くんがブロックしてノーゴール。

金沢にもCKでチャンスはありましたが、やや山雅が優勢に試合を運び給水タイムを迎えます。

ここから金沢が徐々に攻勢に。29分54秒、本塚くんのサイドチェンジで長谷川くんにボールが。窪田きゅんが相手WBの裏のスペースへIN。そして窪田→藤村→杉浦→窪田でゴール前へ進入。

惜しくもオフサイドになりましたが、27分にもこれを試みようとして呼吸が合わなかった様子でした。金沢が山雅対策として右サイド深くを攻略しようとしているのが感じられたシーンです。

守備に関しても久保田くんに頼盛くんがついていった序盤とは違い、阪野・セルジ・久保田・中美に対して石尾・作田・藤村・本塚とボールと逆サイドのSHが対応し数的有利を生み、空くスペースを作らせないようにしていたので前線からのプレスを発動。前半の終わりは金沢がペースを握り終了しました。

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後半開始

山雅は久保田→鈴木。金沢の変更は無く後半スタート。先ほど久保田くんがいたところに前くんが入り、鈴木くんは右WBに入ります。

その鈴木くんからのグラウンダーのクロスが入り、よもやの場面をいきなり作り出す山雅でしたが、阪野くんのヒールでのシュートをサラッと処理する白井くん。山雅と金沢の意地が交錯します。

山雅の攻撃に迫力が無かった理由

山雅は左サイドからビルドアップして右へ展開する、前半の金沢のような攻撃を仕掛けてきました。前くんのユーティリティーさには脱帽します。あと、セルジさんの自由さも。ただ、自由すぎて阪野くんとの連携は取れていなさそう。阪野くんはやはり髭があったほうが阪野くんですね。

下の図はJ STATsの阪野・セルジ・中美のヒートマップです

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セルジーニョさんは右にも多く出没して前くんや鈴木雄斗くんの攻撃のアシストをしていましたが、結果的にPA内でパスを受けられていたのは、ほぼ阪野くんだけでした。ちなみに前・鈴木のヒートマップはこちらです。

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これは特に後半、阪野くんは主に作田くんに任せ、セルジさんを石尾・藤村でマークしていた事が大きかったです。攻撃のコンダクターの自由を奪われた山雅は攻撃に勢いがつきません。

シュート2本の陸次樹、一流への通り道

しかし金沢も陸次樹くんが抑えられていました。シュートは僅か2本。前半36分にゴールポストをかすめそうなグラウンダーのミドルと、後半3分の圍くんが前目にポジショニングしているのを見てふんわり放ったシュート。こちらもPAでは打たせてもらえていません。

陸次樹くんには必ず2人は山雅ディフェンスがついていました。1人の時もありましたが、島津・窪田をみながら陸次樹くんを見るといったような守備でかなり警戒されていました。

しかし、それだけ脅威となる存在な訳ですから、囲まれながらもゴールを決めたり、自分に敵を引き付け味方を生かす事を覚えて欲しいです。しかし、その意識の植え付けも行っている様子のヤナ将。

その片鱗となる攻撃が54分10秒のシーン。セルジ→中美のパスを藤村くんがカットしてカウンターに。

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常田くんが窪田きゅんの方を一瞬見て陸次樹くんを見失いかけます。長谷川くんからのパスが陸次樹くんに通り、常田くんは陸次樹くんに立ちはだかりますが窪田きゅんはフリーに。タイミングが合わず窪田きゅんにはパスを出せませんでしたが、自らが囮となって味方を生かす良いシーンでした。

窪田もまた進化を

そしてこちらは窪田きゅんの攻撃データ

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持ち味のクロスが一つも成功していませんでした。その中でも悔やまれるシーンがこちら。58分17秒からの山本龍くんを1対1で剥がしてゴールライン際に入っていきます。

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ゴール前の杉浦くんにクロスを上げますが、GK圍くんにキャッチされてしまいます。しかし陸次樹くんの前にはスペースが。こういうチャンスを見逃さなければアシストは2桁も夢ではないかもしれません。更なる進化が求められますね。

パスミスが命取り

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そして、こんな感じで交代がありまして(端折った(-_-;))ゴールシーンへとつながる訳なんですが、山雅は橋内くんから森下くんに交代した時に大野くんが中央のCBの位置へ、森下くんは右のCBにポジションを替えていました。その森下くんのヒートマップです。

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CBとは思えないほど前に移動しているのがわかります。右サイドの攻撃に厚みを持たせたかったのだと思います。しかし、この森下くんのパスミスを高安くんが見逃さず、高安→ルカオ→長谷川のクロス→森下くんがクリアしてCKになります。両軍とも体力の消耗は激しく、ここで余計なCKを与えた事はダメージが大きかったと思います。

疲れた時こそ頭脳プレー

ショートコーナーで藤村→本塚→藤村とボールを戻し、本塚くんが縦に走りパスを受け、利き足の左でファーサイドの作田くんへ。ゴール前にはニアから山根・石尾・金子・ルカオの順で並んでいました。とにかくゴール前へ折り返そうとする作ちゃん。山雅GK圍くんが逆にふられ位置取りが前に出すぎてしまい弾いたボールがルカオさんの前へ。あとは強引なまでのヘッド!ヘッド!

力技ではありましたが、その前にはしっかりとボランチの二人による頭脳プレーがありました。ショートパスで意表を突いた事、本塚くんが効き足で逆サイドに相手を振った事。ようやく喉から手が出るほど欲しかった1点をもぎ取った金沢。

ここから試合終了まで10分以上あった時間を、守りに割く事なく隙あらばカウンターで追加点を獲ろうとした事を評価したいと思います。かなり山雅の選手のメンタルに影響した事でしょう。終盤で足が止まる事があっても交代した前線の4人でフィニッシュまで持って行ってくれれば助かります。しかも89分のルカオさんのトリッキーなヒールパスなんてされようもんなら相手はぐったり。

こうしてようやく金沢は、山雅から念願の勝利をつかむ事が出来たのです。

試合終了

ハイライト

交代がはまった、というより時間帯が良かったというべきでしょうか。前節は10分ほどしか与えられなかったルカオ・山根ペアでしたが、今節は20分弱の出場。得点をした後でもカウンターで攻め続けました。

MVPはやはりセルジさんに仕事をさせなかった藤村くんでしょうか。タックル・ボール奪取などで貢献しDAZNベスト11に選出されましたが、パスの成功率も84.7%でアタッキングサードのパスに至っては100%の成功率でした。攻守共に次元の高さを見せつけました。

課題はまだあるものの、山雅からアルウィンで勝利するという悲願を達成した金沢。最後に白井くんの言葉で終わりにしたいと思います。

僕が金沢に来てから散々コテンパンにやられてきたので、点を取ったのも今日の試合が初めてなので素直にうれしいです。球際のところも強く行けていましたし、自分たちのやりたいサッカーが100%できたかというとそうではないと思いますけど、最後の最後のところで体を張ったりシュートで終わったり、気持ちの面で勝てました

気持ちの面で負けた、そんな試合も少なくない。しかしこの山雅という相手を気持ちで凌駕した経験は大きい。まだ山雅への借りは沢山残っている。そして磐田にも。しかしその前に、まだ倒すべき相手はいる。待ってろ磐田。


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