見出し画像

姉御

まだ渋谷の駅近くにある、それはそれは古い雑居ビルで働いていたことがある。仕事が終わって、狭いエレベーターホールの5階でエレベーターを待っていたら、隣の非常階段から重そうで投げやりな靴音とともに、普段聞いたことが無いほどの荒い息が、複数で登って来た。


何かの事件かと思ってちょっと身を固めていたら、かなりの重量級の金髪の若いメンズが二人、手すりにしがみついて体を引き上げるように、階段を上がって来たのだった。見た目はかなりのチンピラ風。


ここで一人とガチッと目が合ったところ、手すりにつかまってハアハアしながら、
「10階まで(ハア)、階段は(ハア)、きついぜ(ハア)」
と言うので、私は固まったまま大きくうなづいて
「がんばって」
と返したらエレベーターがやってきた。


「ねえさん、それ登り?登り?」
「下りです。では頑張ってね」


と私が一人でエレベーターに乗ろうとしたその時、なぜか二人がドタドタ駆け寄って来て、エレベーターに乗った私に向かって
「いってらっしゃいませ!!」
と深々と頭を下げたのだった。


閉まるドアの隙間に二人の金髪のつむじを見ながら、面白い人達だなと思ったところまではいいが、エレベーターに乗っていた人達の視線が痛かった。


アネゴじゃないからー!!


いきなり面白い人と会うタイプです。

ではでは、サロンでお会いしましょうね!

https://www.iki-aoyama.com/

(2014年9月30日の記事)

言語化能力でなにかしら換金できたらと考えて投稿を公開しています。投げ銭のようにサポートいただけたら嬉しいです。