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インドの山奥での金融サービス

たまには仕事の雑感を普通のnoteに書こうかな。

尊敬するマイクロファイナンス実務家女性2人と一緒に車で6時間かけてインドはラジャスタン州の山奥に行ってきた。そこに、出稼ぎ労働者だけを対象にマイクロファイナンスを提供している会社があって、そこの仕事を見に行ってきた。

山が多い地域では耕作できる土地も広くないし、収穫も年に1度だけなので、男の人達は出稼ぎにいく。この村から300km離れたアフメダバド(僕はこの街からきた)だけでも20万人がラジャスタンからやってきているという。

この会社はその出稼ぎ労働者とその家族向けに預金、貸付、送金のサービスを提供している。今日は男衆も多めに村に帰ってきて、月に一度のミーティングをする日。お金を借りている人は返済をしつつ、皆で決まったお金を貯金箱に入れる。貯金箱は本人たちの手元にあって、鍵はマイクロファイナンス機関側の職員が持っている。

インドなら誰でも銀行口座を開けるのにな、と思ったけど、ATMの場所が遠すぎるので、銀行口座を持ちつつもこの貯金箱にお金を貯めている。携帯の電波もこの村に着く30分以上前から切れている。

 

生活は思っているよりずっと大変だった。普通の平野部にいるマイクロファイナンスの顧客たちに比べ物にならないほど。

出稼ぎに出る男たちの多くは中卒で、工事現場で働くことが多い。若ければ10代半ばから出稼ぎが始まる。稼ぎはスキルがなかったら日当450円、あっても800円程度。毎日仕事があるわけでなく、雇用主の都合ですぐに仕事が無くなる。一ヶ月に働けるのは20日程度。雇用主がお金を払わない、労働者を騙す、機材を壊してしまった人を数ヶ月タダ働きさせる、といったトラブルにもよく見舞われる。法廷闘争するにもお金がない。どんな国でも、一番立場の弱い人達ほどブラック企業にひどい目に遭わされる。

帰って来るのは3ヶ月に一度。頻繁に帰ってこないのは、バスが片道600円くらいかかるからだ。往復1200円は4日分の稼ぎに近いし、機会費用も考えるともっと高くつく。

お母さんは家で子どもを育てながら家畜の世話と山あいの地域の狭い土地で農業をしている。収入は収穫1キロあたり30円と、とても低い。交通の便が悪いなかやってくる仲介業者らに、廉価で作物を売っている。

親が血の滲むような努力をして、子どもたちは学校に通う。本当に勉強ができる子どもたちは大学に行くことができる。そうでない場合、女の子たちは早ければ10代半ばで結婚する。集会場には10代と思しき女性が何人かいた。

大学卒業者は村のスターのような存在で、このマイクロファイナンス機関の職員はそういった大学卒業生たちがなっていることが多い。電波も通じないので、生まれ育った人が圧倒的に高いパフォーマンスを出す。

融資を受けた場合の金利は24%。インドの中小マイクロファイナンス機関の調達金利は16%、平均貸出金利は25%とかなので、この土地での営業費用(人口密度が低いからお金がかあかる)を考えると安い方だけど、それでもこの生活状況でこの金利は厳しい。

こういう土地の人たちもお金を貯めるし、借りる。貧しい人であるほど、蓄えに対してキャッシュの出入が大きいので、稼得力がある人よりはるかに懸命にお金を管理しないといけない。

所得の低いひとにほど金融サービスは必要で、それを低い価格で提供する必要がある。うちはいま平均金利が20%くらいなのだけど、目標にしているのは14%。これは国によっては預金金利より低いくらいの水準感。人口密度が低くて、電波も届かない地域でそういうサービスを提供するのは大変なのだけど、それこそが僕たちが目指すことなんだろう。


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