Change.orgの児童虐待対策キャンペーンについて

慎泰俊です。駒崎弘樹さんが発起人になって始まったキャンペーンに僕も共同発起人になっているのだけど(すでにLIP理事長は退任しているので個人としてだけど)、その内容が途中から改変されていたことについて。

僕がそのことを知ったのは3日くらい前に発起人の駒崎さん/フローレンスからメールを貰ってから。それまでは知らなかった。

内容が大きくても小さくても、これは署名運動のプロセスの妥当性を根幹から壊してしまうことで、あってはならないことだと思う。共同発起人として名前を載せて頂いているので、都度状況確認を怠り、こういうことになった責任の一旦は僕にもある。本当に申し訳ありませんでした。気安く名前だけ出して実質的に何も責任を取らないのは、文字通りとても無責任なことだと思っています。

ちょっとこのタイミングなので、僕がこのキャンペーンにどう関わったのか、何を考えているのかをメモしておきたいです。

僕が共同発起人になった経緯
僕はこのキャンペーンが始まったタイミングで共同発起人として名前を載せて頂くとともに、自分がキャンペーンについて思うことを伝えていた。全件共有についてはすでに意見が色々とされているのでコメントはしないけど、それ以外にも僕が児童相談所の運営や国の方針について考えることもあった。僕だけでなく、他の詳しい人たちも同じように様々な意見を持っていたと思う。

ただ、この手の最終文章が皆にとって100%合意するできるものになることはないし(これは政策提言するといつも直面すること)、どれが絶対の正解と言い難いことも多いので、僕としてはこれだけはと思った「学校(保育園や幼稚園も)と児相の綿密な情報共有」だけを強くお願いした。実際問題として、問題の初期発見は学校・保育園・幼稚園でされることが圧倒的に多い(警察より多いかもしれない。というのも警察にいくのはDVケース、補導ケースなどだから、前者はよほどでないと起きないし、後者は小さい子どもはされないし)。

問題に気付いていた先生が誰にも相談できないこと・放置してしまっていることが理由で子どもの命が救われないことはとても多いと思っている。だから、これだけは強くお願いした。なお、地域が強ければ地域での問題初期発見が最も精度が高いのだけど、そもそも日本の大部分の地域はそうなっていない問題がある。僕が知っている強い地域は、釜ヶ崎と平塚(多分僕が知らないだけで他にもいっぱいある)。

なお、今回の事件そのものについては、まずはもう少し時間をかけて事件の検証がきちんとされた後に対策を考えるべきという意見もあった。しかし、子ども虐待が起きる構造はすでにある程度知られているので、当該提言が子ども虐待防止に関するものである限り、その指摘の妥当性は限定的だと思っている。

個人的に解決できていない心のわだかまり
もう一つ、これは伝えることはできなかったけど、どうしてもまだ自分の中で解決ができていないことは、亡くなった子どもの写真を掲載する必要があるのかどうかということ。これに関しては、今この時点でも個人的な考えが行ったり来たりしていて、今に至っている。

僕は彼女の写真と残した手紙を読むと、ただただ悲しくて膝が折れてしまい、「いますぐに動き出そう」と考えることができない。「ルポ児童相談所」を書いたお陰で、この期間にテレビの依頼とか取材依頼とかが沢山来たのだけど、ほぼ全てやんわりと断るか、メールに「本を読んでください」とだけ書いて済ませていた。共同発起人になるのもGoogle Formに名前を入れたら済んだ。一件だけ、とてもお世話になった人経由で来たものだけ取材に応じた。それが朝日新聞の記事になった。

仮に自分の子どもが社会不正によって殺されてしまったとしても、少なくとも49日、場合によっては一周忌が終わるまでは、僕はぼんやりとしていると思う。そして、世間が忘れ始めて、社会運動として完全にタイミングを逸したときに、間抜けそうに何かを始めるんだろう。

どちらが正しいというわけではない。ヨーロッパの難民問題でも、海岸に打ち上げられた幼児の写真が各国政府の政策変更のきっかけになった。だから、このタイミングでアクションを打つのには合理性があると思う。共同発起人になったり、消極的にでも取材に応じたりしたのは、そういういい意味での機会主義的なアクションを全否定できないからだ。

ただ、一方でそんなことをせずとも社会は変えていけるのじゃないか、政治や行政は本来的に「周りが声をあげているから」ではなく「正しいことだから」という理屈で動くべきだし、そういう政治家や官僚も結構いるのだから何とかできるのではないか。という思いもある。ただ、そういう動きが往々にして結果にすぐにつながらないのも事実だ。

このことは、全ての社会変革に多かれ少なかれあることで、今もなんとなく考え続けている。

キャンペーンのローンチ後の動き 
キャンペーンローンチ後に水面下で何人かの共同発起人の人たちがこのキャンペーンを無駄にせずちゃんと着地させるために手を尽くしていた。僕は嵐のような勢いで進んでいた案件で慌ただしく、完全に受け身だった(本当にごめんなさい)。ただ、こういう努力が一部の人たちでされていたことは伝えておきたい。

 

いずれにせよ、結果として、署名してくださった皆さんには心からお詫びする次第です。共同発起人としてきちんと動きを観察して必要なアクションを取れなかったのは僕の責任です。

ですが、児童相談所を中心とした地域の子ども虐待抑止は本当に必要な分野だし、駒崎さんが始めたこの動きは決して無駄なことでは無かったと思っています。これからもどうぞ宜しくお願いします。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?