お湯なし生活

僕は基本的に職住接近で仕事をしている。仕事が夜遅くなってもすぐに帰って眠るだけだし、朝寝坊してもすぐにオフィスにいけるからだ。

会社が北参道に引っ越した後、いろいろな部屋の審査に落ちながらも(非日本人∧起業家は基本的に落ちる)、ようやく会社の近くに部屋が見つかったので、そこでミニマリズム生活をしている。

入居以来の一番の懸案事項はガスだった。なかなか理解してもらえないのだけれど、誰かがやってきてガス栓を開けるという手続きの面倒さが僕にはどうしてもつらくて、ずっとガスを通していなかった。他は全部オンラインで完結するのでありがたい。

結果的に、お湯なし生活を続けてきた。シャワーは極力近くにあるジムで運動した後に入るか、銭湯に行っていた。そもそもあまり日本にもいないので、そういう生活でも気にはならず、どうしても入らないといけないときは、ちょっと運動をして身体を温めて、気合で水シャワーを浴びていた。料理はしない。

「ガスを通すだけじゃん」という批判は甘んじて受け入れる。

それに、弊社のお客さんの大半は、暖かい地域に住んでいるということもあるけれども、水浴びで生活をしている。時々はこういう不便を味わうほうが良いと思っていた。

 

しかし、問題はこの1ヶ月半だった。海外渡航が難しくなり、ずっと日本にいるようになった。また、この状況で僕がジムや銭湯でCovid-19に感染したら色々な人に多大な迷惑をかけるので、ジムや銭湯にも行けなくなった。

結果として、僕はこの水シャワーに毎日直面しないといけなくなった。

朝起きると、寝間着のパーカーを着たまま20分ほどヨガをする(そう、最近ナイキのアプリでヨガを始めた)。そうすると汗がにじむくらいに身体が温まるので、身体が冷めないうちに一気呵成に水シャワーを浴びてオフィスに行く。仕事が終わったあとも、運動するなりして水シャワーを浴びる。さすがに寒さに参ってきたので、先日ついにドライヤーを買って、文明の利器に感動していた。

もちろん、「ガスを通すだけじゃん」という批判は甘んじて受け入れる。

 

とはいえ、先日この事でお世話になっている人に迷惑をかけた。彼とはずっとランニング→銭湯→食事、というのを定期的にしているのだけれど、先日は銭湯が閉店日だったので、会社集合→僕の家で着替える→ランニング→食事という流れになった。

僕がランニング後に水シャワーをオファーしたところ、丁重に断られた。

自分の常識の無さに恥じ入りつつ、ガスを通そうと決めた。その後も3週間くらい決心がつかないまま、先週末についに一念発起してガスの申込みを済ませた。Trelloにずっと残っていた「ガス会社に連絡する」というタスクが、ついに落ちた。ガス会社の人が来週早々には来る。

くどいが、「ガスを通すだけじゃん」という批判は甘んじて受け入れる。

 

最近は弊社も皆リモートワークになっているが、僕は会社まで徒歩10秒なので、今も通勤している。仕事をある程度片付けてランニングをして、今日も覚悟を決めて水シャワーを浴びていた。

浴びながら、「今度ガスが通ったときにいきなり茶色い水が出たら嫌だから、お湯の方の水も流しておくか」という軽い気持ちで、お湯の蛇口もひねった。原理的にはいずれにせよ冷たい水だけが出るはずだ。

茶色い水は出てこなかった。ただ、心なしかシャワーから出てくる水が温かくなった気がした。

30秒後、たしかにお湯が出てきた。

・・・?

正直言って混乱した。ガス会社の人が来る前にガスが通ったのだろうか。そんなことはあり得ない。

ふと湯沸かし器を見てみると、読みやすいゴシック体でこう書いてあった。


電 気 式 給 湯 器


いま、今年一番の徒労感を味わっている。



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