田川ふれ愛義塾

ひょんなことがきっかけで、筑豊にある「田川ふれ愛義塾」にいってきた。日本のNPOとしては初めて更生保護施設の認可を得たところ。更生保護施設は犯罪や非行をしてしまった少年たちがまたやり直していくための場所。といっても、雰囲気は自立援助ホームなどと似ている。いる少年たちが過去に何らかの悪さをしたかどうかという点で自立援助ホームとは異なるのだけど、いろいろと複雑な状況にある少年たちにとっては、警察に捕まるような悪さをするかどうかは紙一重の差しかないように個人的には感じている。褒められた話ではないけど、僕も警察に捕まったことがあるし。

更生保護施設という名前とは裏腹に、ここにやってきた少年たちがやり直せるようになる確率はとても低いらしい。話では3割ぐらいが二度と少年院や刑務所のお世話になならずに過ごせるそうだ。だけど、この田川ふれ愛義塾ではとても立ち直れる率が高い。

それが実現できているのも、創業者の工藤良さんがいるからだ。元々は暴走族の総長をしていた彼が、少年たちと全力で接してきたからこそ、こんなことが実現できているのだろう。この田川ふれ愛義塾にやってくるのは、全国でも特に難しいとされている少年たち。その子たちが、工藤さんと接し、彼を尊敬するようになり、生活を立て直していく。実際に、来て間もない青年と、やってきてから1年位経った青年とでは顔立ちが全然異なっている。

話を聞いているうちに、いくつかのことが分かってきた。

第一に、少年たちを信じて尊重すること。職業で少年にかかわる人の多くがこれを出来ていない。どこかに上から目線があったら、それを少年たちは敏感に察知するし、関係性をつくっていくことができない。彼ら・彼女らは絶対になんとかなるということを信じている。

そして、当事者である彼・彼女らを尊重する姿勢は、この塾の運営のされ方にも現れている。普通の更生保護施設だと職員と少年の関係は一方向性のものだと思うのだけど、ここでは、長く過ごしいい感じになってきた青年たちが、生活集団の長となり、皆の面倒を見て助けていく。本当に優れた青年には「本部長」という名前までついていく(名前の付け方のセンスもいい。これがチームリーダーとかだと多分違うんだと思う)。そして、場合によってはここを卒業した人たちがそのまま職員になっていく。

第二に、諦めないこと。特に最近はスマホの普及もあって、立ち直ってきたと思った少年がいきなり元に戻っていくことが少なくないそうだ(これはよくある話で、少年院を出てきて落ち着いてきた少年に、昔の悪友が連絡をして、また同じところに引きずり込むというものだ)。そんな難しい状態にあっても、工藤さんたちはそう簡単には諦めないのだという。例えば、バイトを1日で辞めてきた少年には「あと1日だけやってみろ」と伝える。それを少しずつ伸ばしていき、うまくいけば拍手で称える。

これは僕も本当にそうだと思うのだけど、人間が一生懸命に人に接していると、その熱意は絶対に相手に伝わっているし、相手の心に少しずつ変化をもたらしている。だけど、そういう変化は数字にもできないし、突発的な出来事で元の木阿弥になったかのような印象も得られるのだけど、そうではない。ちゃんと声は届いていて、重要なことは、こちらが相手を信じて諦めずに見守れるかどうかなのだと思っている。


日本には100近くの更生保護施設があるのだけど、数は十分とはいえないし、工藤さんのところのように少年たちと真っ向から向き合って働いている人たちがいる場所も多くはなさそうだ。こういった場所がもっと増えていく必要があるし、そのお手伝いをしたいと思った。


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