米国の奨学金と学生ローンを伝える対照的な記事から考える

良質な記事を配信する東洋経済オンラインは、大好きなメディアのひとつで配信記事を毎日チェックしています。

昨日(10/26)、米国の奨学金事情に関するある記事が配信されました。

米国の大学は、学費は高額だが給付型奨学金のお陰で、有名大学の8割近くの学生は実質学費負担なく卒業できているという内容です。

たしかに、米国は先進国で最も給付型奨学金をはじめとする経済支援が充実していると言われています。

しかし一方では、今年の2月に日経新聞オンラインが以下の記事を報じています。

これによると、学費の高騰により、米国では一人平均3万ドル(約314万円)の返済を抱えて社会問題になっているというものです。

実は、米国の学生ローンはオバマ政権時代から社会問題になっていました。

一部のエリートは別として、そうではないそれ以外の人は学生ローンの負担に喘いでいるという指摘です。

今回の2つの記事は、米国の高等教育の実情をレポートしながら、正反対の見方です。ともに事実なのでしょうが、前者が有名大のエリート学生に限った話であり、後者は米国全体としての話です。

米国ではひとりの学生が複数の経済支援を受けられることが多いので、学費が高額でも実質ほぼゼロということがあるでしょう。その点は、複数の給付型奨学金との併給を不可とすることが多い日本との大きな違いです。

また、親の経済力と子どもの学力に相関関係があることは各種統計が示しており、東大生の親の半数以上が年収950万円以上というのはよく知られた話です。

ちなみに、国税庁調査による2019年の給与所得者の平均年収は436万円なので、東大生の多くの親との収入格差が大きいことは明らかです。

本来、教育に期待される効果というのは”格差を無くす”ためであるはずが、格差の拡大、固定に繋がっているように思えることがあります。

我々庶民にとっては、前者よりも後者の日経新聞オンラインの記事のほうが自分事として感じられるのではないでしょうか。

実は、近々、米国の学費と学生ローンについて書こうと思っていたところでした。そこに、今回の東洋経済オンラインの記事が配信されました。

日本学生支援機構によると、2017年度貸与終了者のひとり当たりの平均借入額は、無利子奨学金(241万円)有利子奨学金(343万円)となっています。

日本学生支援機構の貸与型奨学金は実質的に学生ローンなので、金額だけなら日本も同様の状況に見えるかもしれません。

しかし、米国の学生ローンと日本学生支援機構の貸与型奨学金とは、その仕組みが大きく異なります。

結論を言うと、米国のほうが深刻な状況ではないかと思います。だからと言って、日本の奨学金制度を擁護するつもりはありません。

重要なことは、我々大人世代が、次世代を担う若者に希望を持った選択肢を与えられるかどうかに尽きると思います。

メディアの方々には、日本の高等教育のあるべき姿や奨学金について、イデオロギーを排した冷静な議論を起こす役割を果たしてほしいと願います。

今度は、米国の学費や学生ローンについて書こうと思います。




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