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只見線のあるまちにて2010春vol.5

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今年(2010年)の桜はだいぶ咲くのが遅くなってしまって、今このGWにもかかわらず咲いているという、ちょっとばかりおかしな風景に戸惑いを隠せないのです。遠くに見える博士山の山頂にはあと少しばかりで融けるであろう雪が残っています。遠くから汽笛の音が聞こえてきます。ほどなくして只見線が目の前を通り過ぎていきます。こんなところで写真を撮る人なんて誰もいなくて、自分一人が桜と只見線の二つを独占できるというこのうれしさというのか独占愛というのかわかりませんが、なにか感じるものがあるのです。今日はこの辺りを散策してみることにしたのです。

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三脚を残したまま只見線の橋梁の下まで行ってみます。上を眺めてみるとGWらしさをこれぞといわんばかりの青空が広がっています。とはいっても雲一つないというわけではなく、大きな雲がいくつもゆったりと流れていく、そんな景色にずっと眺めずにはいられないのです。

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橋梁の下からさっき只見線を撮影した三脚を置いてきたほうを眺めてみます。橋梁のスカイブルーと宮川沿いの桜並木がどことなく調和してるというのか、音で言うと和音を奏でているといった感じでいつまでも眺めていたくなってしまいます。橋梁をぐるっと眺めていると銘板というのでしょうか自己紹介板が取り付けられています。宮川橋梁といった名前や、いつ作られたのかなどのほか、なんとかペイントと言った原材料を提供したであろう会社の名前まで書いてあります。僕はしばらくその銘板と空のコントラストを眺めずにはいられなかったのです。

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そんな僕がいることなど気にもしないように、犬と散歩している人が近くを通り過ぎていきます。なんだってこんな道もろくにないような場所を散歩させているのだろうかと不思議に思いながら、僕は通り過ぎて行ったおじさんと犬の写真を一枚カメラにおさめてみるのです。

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もうすぐ田植えをおこなうであろう田んぼはトラクタで耕されているようで、あとは水をはって苗を植えるのを待つばかりです。遠くに見える山-自分の中では三角の山と呼んでいて気に入っているのですが-は雪が解けて「もう田植えの時期だよ」と農家の人をせかしているようです。あんまりせかさなくても大丈夫なのにと思ってしまうのですが、今年は桜の開花が例年よりも二週間近くも遅いようで、せかしたくなる気持ちもどことなくわかります。自分もせかされているような気がして自転車をこぎだすのです。

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とは言ってもここは撮影重点地域で、いつも通り踏切を撮影してから通り過ぎていきます。只見線に踏切なんて必要ないんじゃないかと思うところもあって、でもきちんと左右確認はしなくちゃいけないよなと思いながら、来るはずのない只見線の線路を眺めてみるのです。

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いつだったっか-たぶん磐越西線の一ノ渡橋梁だと思うのですが-写真を撮っていたところ話しかけてきた人がいて、そのとき持っていたiPhoneで自分のSNSサイトの写真を見せたところ、この標識って今では珍しいんですよねと言われたことがあります。自分はいつも見慣れていてなんとも思わないのですが、そんなに珍しいものならば記念に写真を撮っておこということになり、それ以来そばを通り過ぎる際には一枚撮ることにしています。取鉄とやらに盗まれないでくれよと祈りながら写真を撮るのです。

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先ほどの踏切から50メートルもしないうちに自転車をこぐ自分の足は止まってしまいます。なぜなら天神様の桜がきれいなのと、鳥居から見える三角の山に心惹かれてしまうからです。ここ後庵の天神様は毎年地元の人たちが花見をしている所で、あまり人が多いとばつが悪く通り過ぎにくいところがあって、花見客がいなければ只見線をバックに撮れるのになあとため息をついいてしまうところなのです。

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そんな後悔ともなんとも言えない気持ちでいると、後庵の踏切がカンカンカンとなり始めます。あれ?今の時間に只見線なんか通るんだっけかと不思議に思いながら、遠くを眺めてみると「風っこ号」が走っていたのです。そういえばすっかり忘れていたのですが、GWといえば「風っこ号」だったのですが、今年は桜が咲いていたので忘れていたのです。天神様の桜は散り始めています。そんな桜をフレームにいれながら「風っこ号」が走り去るのをカメラ越しに追いかけたのです。

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そんな一日の終わり、なんだって今日は絵画モードを使っているんだっけ?と自分でも不思議に思いながら只見線を見送ることにします。まだ日は沈まないようですが、この後の只見線のころには沈んでしまうのです。それはそれで赤く焼けた空を撮れるかもしれないのですが、あまり遅くまでいると家に帰るまでに真っ暗になってしまい、自転車で帰るのがおっくうになってしまいます。只見線のテールランプを見送り、今日はここまでにして帰ることにしたのです。

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