張込24小田原愛の過去

 バラックのような家。東北の雪深い冬。
小田原愛の父親は日雇い。冬になると仕事がない。毎日一升酒を飲んで不平不満。
 父親は、
「どうせ俺なんか何をしてもダメなのさ、学歴もコネもない、日本は金持ちの社会、搾取されるだけだ」
 母親は、
「嫌だ嫌だ、こんな惨めな暮らし、毎日毎日酒ばかり呑んでダメな話」
「うるさい」
やがて父親は酔い潰れいびきをかいて寝てしまう。
「愛、お前は頭がいい、父ちゃんのような人生は惨め過ぎる、学問を身につけろ」
 愛は、
「母ちゃん、何故うちは貧乏なんだ?」

「父ちゃんだけのせいではない、日本は資本主義社会、貧乏人はコネもない、血筋もない、医者にもなれない、愛は頭がいいからたくさん勉強して母ちゃんを幸せにしておくれ、母ちゃん、一生懸命働いて愛を大学にやるから」
 母親は意外にも読書好きだった。
「母ちゃん、私、必ず母ちゃんを幸せにする」

「こんばんは、警察です、愛ちゃん、オヤジいるか?」
「駐在さん、うちのが何かしたのか?」

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