張込25大学

 愛も新聞配達をしながら苦労の末に大学進学を果たす。しかし、そこはパラダイスではなかった。巨大レジャーランド、受験戦争から解放され、目標を見失なった親のすねかじりの学生がゴロゴロ。麻雀にパチンコ、コンパ。愛の居場所はここにもない。
 そんな時、極左の天才学生闘士の演説を偶然聞く。その男は一般学生に向かい、
「皆んな、こんな社会でいいのか」
 その男は夕陽を背にして演説している。話し始めるまで40秒、間をとる。演説は大袈裟な身振り手振りを交える。それはまるでヒットラーの演説テクニック。
 その男はひつじのような学生とはまったく違った。生命エネルギーに溢れて、その言葉は真理を述べて確信的である。この資本主義社会を革命し理想郷が明日にでも建設出来る勢いである。
 愛はその男の演説の虜になり極左活動にのめり込み、加藤毅を極左活動に誘った。

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