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市民はお客様ではなく、共創パートナー ★ 自治体の方々と、これからの地域事業者の支援を考えたい(4)

株式会社ただいまの佐藤と申します。これまで10年以上、地域の事業者さんの支援を手がけてきました。支援にあたっては、日本各地の自治体や、地域の金融機関さんや支援機関の方々とご一緒させていただく機会が多く、千葉、長野、京都、広島、福岡、長崎などで主に活動しています。

これまで3回の「自治体の方々と、これからの地域事業者の支援を考えたい」コンテンツへ、地域の事業者さんから興味深いリアクションがありました。そこで予定を変更して、ある市長の書籍をご紹介しながら、地域事業者さんの支援について考えてみたいと思います。

タイトルは 『市民と行政がタッグを組む! 生駒市発! 「自治体3.0」のまちづくり』 です。

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自治体の支援ってこんなかんじ、でいいのでしょうか

地域の活性化において、行政の役割は何か。その検討場面では「自治体が主導しないと、民間は動きが鈍い」や「自治体が人材育成をしなければならない」といったことが、しばしば話題になります。確かにその通りと言える部分もあるのですが、今は新型コロナの影響で、関係者それぞれの働き方、生き方、暮らし方自体の急激な変化に加え、生活の新しいニーズを、しかもタイムリーに満たすという視点で、今までにない動きをスピーディに考えなければなりません。そんな中で、どこまで「自治体主導」で進めることができるのか、については再検討が必要だと感じています。

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本書では「自治体3.0」と銘打ち、他の自治体との競争における差別化・優位性の確保から、主体的な価値の創出を通じた住民満足度・定住意向の上昇を狙うための、自治体の意識・取り組みの改変を打ち出しています。

活動を応援し、ここぞという出番で全力で支える。 パートナーだから

本書は冒頭、「市民はお客様」ではないといえば、市役所は叱られるでしょうか、と、ちょっと刺激的な問題提起からはじまっています。何もかもを自治体主導で進めるということではなく、市民は「共創パートナー」であり、市民の主体的な活動を自治体が応援し、自治体にしかできないサポートが必要な時は全力で支え、ともに汗をかいて、まちづくりを進めるということが地域の活性化につながるのではないか、ということです。

これは、私も、福岡県糸島市の支援をご一緒して体感しています。今や地域ブランドとなった「糸島」ですが、その過程において、市役所のご担当者が何か打ち上げて音頭をとり、そこへ市内の事業者を誘導するといったようなことは、私が知る限りありませんでした。そうではなく、市内の事業者の想いや取り組みたいことを膝付き合わせて丁寧に聞き取り、話し合い、何が一番良いサポートなのかを一緒に考え、歩幅を合わせて一つ一つ実行されていました。

そこには、パッケージされた支援プランに乗っかるのではなく、自治体と地域事業者がともにいちから糸島オリジナルで作り上げ、取り組み、見直し、またチャレンジするサイクルがあり、関わる方々の熱量がこもっていました。その取り組みが、今の足腰が強い糸島ブランドの構築の一助になったと、他地域の支援と比較して振り返って思います。

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同じ目線で、同じペースで走り続ける。 パートナーだから

市民は「お客様」ではなく、「共創パートナー」である。ならば、取り組みにあたってはもちろん「共有すべき目標」が必要です。その目標は、自治体から地域の事業者へ「与える」ものではなく、それぞれの立場が納得できるまで、腹を割って話し合い「見つける」ものであるはずです。

それには、質量ともに密なコミュニケーション(本書ではワークショップの取り組みが紹介されています)が必要ですし、弊社もそうした機会に積極的に参画してきました。時間も手間も確かにかかります。サクッと一度で意見がまとまるということもほぼありません。でもその過程をなあなあで済ませてしまうと、得られる成果は、お互いにとって満足いくものにはなり得ないだろうと思っています。

そして、目標が誰にとっても明確で納得できるものになれば、そこから始まる地域での活動は、ボランティアベースで行うものと、ビジネス的な手法を取り入れて収益構造を確立しながら取り組むものとに分けて検討し、規模は小さくても長く続けられるよう、取り組みを支えていく必要があると思います。活動が育つにつれて、その運営に関わってくださる人材も増え、いずれそうした方々がこれからのまちづくりを支える存在になってくださるからです。

まずは自治体の方が「事業者の想いや考え、取り組み」に、耳を傾けるところからスタートすることをおすすめしたいです。その姿勢の差は、結果に如実に現れます。そして「あの人なら話を聞いてもらえる。形にしてもらえる」と思ってもらえれば、しめたものです。そこから、さらなるまちづくりにつながる取り組みの循環が生まれるかもしれません。

高校時代より親交がある小紫市長が執筆した本書は、かなり具体的な取り組みが赤裸々に紹介されています。このやり方に辿りつくまでには、相当な試行錯誤と彼なりの苦悩があったことだろうと思うのですが、その貴重なノウハウを抱え込まずにこうしてオープンにするあたり、彼らしいな、と思いながら読みました。「自治体職員の副業解禁」のことなど、これまでの自治体の取り組みから少し角度を変えた取り組みのヒント満載です。

今回も長文にお付き合いいただき、ありがとうございました。次回は、以前の予告通り、弊社が特に支援事例が多い「食」関係の地域を支えるビジネスを検討するために必要な技術について、考えてみたいと思います。

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