本当に日本の市場需要は成熟しきっているのか

昨今、「日本の市場需要は成熟しきっていて、市場規模は今後縮小していく一方」「じきに日本はアジアの新興国に追い抜かれる」と言われることが多いです。実際わたしも最近まで同じようなことを思っていました。しかし、本当は日本の市場規模はむしろ伸びていくのではないか?という思いを抱き始めたので、今回はそれについて話していきます。

実際の日本の経済成長率

日経新聞によると、日本における2019年の実質成長率は0.5%だそう。この数字を見て日本の成長率はかなり鈍化していると思う人がほとんどであろう。

確かに、0.5%という数字はあまりにも低い。先進国の他諸国と比較しても著しく低い数字である。これだけ見れば、日本の市場規模は成熟しきっていると言われるのも当然であるが、それでも私が冒頭で日本の市場規模はむしろ伸びていくと考えた所以を以下に詳述していく。

前年の成長率と2020年以降の予測成長率を見た結果

日経新聞の一年前の記事には、2019年の前年比の実質成長率は0.3%と書いてある。2019年の0.5%よりも低い結果であった。つまり、微小ながらも成長率は伸びていることになる。そして2020年以降の予測を含めた将来の推移が以下のグラフに描かれている(内閣府:国民経済計算年報)。

実質GDP推移 内閣府経済社会総合研究所

上記のグラフを見てみると、2019年から2025年まで成長率が逓増していることが分かる。これは恐らく、東京五輪に起因するインフラ整備による内需拡大と外国人誘致による外需拡大が十分見込めるからであろう。

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一方、2025年の翌年の成長率は一気に落ち込んでいる。これは、東京五輪のバブルがはじけるとの見込みがあるからであろう。だが、これは経済的にみると至って普通なことで、1964年の東京五輪の時も活況した東京五輪のバブルがはじけて一時は景気低迷するが、その後すぐに景気は回復した。上図の成長率予測でも、2025年の落ち込みから一年で元の状態まで回帰している。

市場需要が今後伸びていく要因

では、なぜ上記のように東京五輪のバブル崩壊後も日本の経済は成長する予測が立てられるのか。事例を挙げながら考察していきたい。

先ほどの予測成長率の通り、日本経済の成長率は逓増するという見込みがあるが、逓増といっても本当に微々たるもので、経済成長が鈍化していることは否めない。少子高齢化の進行具合が著しく、日本企業への投資も滞っているので、はっきり言って日本の内需は相当なことがない限り上がることはない。では、なぜ日本の市場需要が伸びる見込みがあるのか。それは内需が低迷している以上に外需の見込みが高いからである。

外需が高いとは具体的にどういうことなのか。日本に住んで生活していて当り前だと思っていることが、外国の人にとっては、とてつもなく魅力に映る場合が多々ある。そこに商機を見出している企業が増えているので、いくつか事例を取り上げたい。

Ramen Hero

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典型的な例がRamen Heroであろう。日経産業新聞によると、Ramen Heroの創業者である長谷川浩之氏は幼いころからラーメンが好きで、東京大学在学中は週7でラーメンを食べ、総計1000店以上のラーメン店を渡り歩いたそうである。

そんな長谷川氏はアメリカ滞在中に現地のラーメンを食べて、その品質にショックを受けたと言う。アメリカでも日本と同クオリティのラーメン屋はあるが、単価が日本と比べて非常に高いため、なかなか手を出せない人が多いそうである。さらに、アメリカは日本に比べて土地が広いため、日本のように、家から10分程で行けるような気軽で美味しいラーメン屋に行ける環境ではないことも要因だという。

そこで、長谷川氏はアメリカの人にも気軽にいつでも美味しいラーメンを食べて欲しいとの思いから、家で簡単に調理できる冷凍ラーメンを海外に輸送する事業を始めて、これがアメリカ国内で爆発的な人気を博した。

日本では当たり前に享受している「ラーメン」は、近年日本のラーメン屋が相次いで倒産している現状もあり、日本でのラーメン市場は飽和していると嘆かれていた。しかし、視点を変えてみると、とんでもない需要を秘めていた。これはラーメンに限ったことではない。

「大塚製薬」

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例えば日本ではお馴染みの「ポカリスエット」。ポカリスエットの事業を担っている大塚製薬は、先日ポカリスエットをメキシコで売する方針を固めた。メキシコでは近年、日本同様に健康志向が高まりつつあり、特にスポーツ飲料の需要が盛んである。そこに大塚製薬が参入したのだ。大塚製薬の今後の方針として、まずメキシコ国内でポカリスエットのブランド構築を測ることに注力するという。

また、外食産業は特に外需が盛んで最近海外進出したばかりの外食チェーン店だけでも既に数多くの成功例を挙げている。             一風堂、コメダ、赤から、名古屋コーチン、松屋、矢場とん、丸亀製麺、 CoCo壱番屋などがその例である。

以上に述べた外食産業はもちろん、日本の製造技術(スズキ自動車のインド進出etc)や文化(京都の舞妓体験etc)など、日本は外需の宝庫であったのだ。それを多くの人に気付かせてくれた長谷川氏を始めとしたスタートアップは、日本の企業に外需の可能性を大いに示してくれた。

「市場需要」は内需と外需を合わせた全体の需要なので、今後は内需低迷を悲観視するのではなく、未来ある外需に目を向けることで、日本の市場がさらに伸びていくことを願う!








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