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マーケターにたどり着いたわけ

私は、自分から何かに興味を持つことがほとんどない。

色覚は正常だが、世界はモノクロに映っている。

きれいな花を愛でることもなければ、歴史を調べたくなることもないし、澄んだ空気や田園風景にあこがれることもない。
話題になったゲームもやろうとも思わないし、映画も漫画も何が面白いのかさっぱりわからない。

みんなが生きる活力、もしくは稼ぐ活力にしているものに対して、何も食指が動かない。
ただただ、目の前の生活費のために働いているだけだ。

学生時代をさかのぼると

高校までは、自分のある程度思い通りに進めた。
大学は、自分が行きたかったところは関東の某K大学のSFCだったが、とても学費が払えないと却下になった。受かってたのに。

なので、とりあえず家の近場の国立大学を志望校にした。電車でも通えるし、専門課程に入ると、家から近いキャンパスになるので、自転車で行けるのである。

姉が交通事故を経て浪人していたこともあって、自分は現役で受かるしかなかった。だから、受かる学部にした。

別に理系が好きなわけでもないし、その学部で学びたいことがあったわけでもない。ただ、家庭の事情的に、そこが最善の策だった。

私立の合格も持っていたので、最後は根を詰めずにおさらい程度で受験したが、受かってしまった。

そこから、モノクロの大学生活が始まった。

それなりに楽しい瞬間はあったけど、結局は「仲間」「友達」とお互いに言えるような、連絡とりあったり遊びに行けるような人とは出会えなかった。

自分は、ここにいる周りの人の人生の道の外にいるんだなぁと。
だから、なんとか自分が踏ん張って、自分が背伸びして演じ切るしかないと心に決めた。

就職と、挫折

はじめて入社したのは、上場企業の商社だった。
「体育会系」であることはわかっていたけれど、顧客が本当に欲しいものをヒアリングした時に、自社製品しかお勧めできないのがどうしてもいやで、商社やコンサルしか、眼中になかった。

ここで、営業の部署に配属されていたらまた違う人生だったかもしれない。
でも、同期で一人だけ、事業開発ポジションに配属となった。

良くも悪くも、現場を踏んできた海千山千の人たちと、ちょっといろんな噂のある癖の強い人たちに、へなちょこな僕が対応できるわけもなく、あっという間に不眠症になってしまい。

あ、そういえば思い出した。
まだ入社する前、親睦飲み会で先輩たちと飲んでいた際、ある同期から嫌いだって面と向かって言われたっけ。
あんまりつるんでいる奴でもなかったんだけど、あれは何だったんだろうか。僕は、やっぱり存在するだけで誰かをいやな気分にさせてしまうんだろうか。

時を戻そう。

当時、会社の寮にいたのだが、あっという間に朝起きられなくなり、共同浴場の掃除が始まるお昼前くらいに急いでシャワーを浴び、会社に行っていた。

すぐに部署も変わり、まともな仕事もできないまま過ごし、そのまま会社を辞めることに。

就職のために東京に出ていたが、地元へとんぼ返り。
なんとか背伸びして頑張ろうという思いは、儚くももろく崩れ去り、失意のまま実家で過ごすのだった。

その後は、就職しては体調悪くなってやめ、を繰り返して今がある。
特に何かに興味があるわけではないんで、いろんな業種、職種を経験している。

商社(繊維・鉄鋼)、健康食品、照明、ITコンサル、美容室、Web広告代理店、不動産
アルバイトでは、ヤマト・佐川・郵便(委託)で集配・個配。

いろんな業界を見てきたし、いろんな人と話して仕事はしてきた自負はあるが、まあこんな職歴でほとんど見向きもされない、俗にいう「汚れてしまった職歴」だ。

汚れてしまったら、もう洗うこともできない。ただ、その汚れと一生付き合いながら、生活していくしかない。

そこに、キラキラしたものは何もない。「成長!」「学び!」「気づき!」なんて、まだ身ぎれいだから言えるのだ。
よほどの実力者でもない限り、いくら経験があっても、いくら資格があっても、身ぎれいな人が優先される。

仕事がないのよ、こうなると

そもそも、転職エージェントと話しても、この経歴を見てやっぱりちょっと引く人が多い。(顔には出さないけど)

そして、なんかそれっぽい求人を出してくれるのだが、個人でやっているような人はほとんど紹介してこない。
それは、企業と直接顔が利いて、内々でだめだと確信が持てるからだ。

逆に、大手や中小のエージェント会社は、こっちからの希望とは何の関係もないものも含めて、いっぱい出してくる。
要は、普通にあてに行けないから、数うちゃ当たるかも、ってことだ。

なので、だんだんエージェントに頼む比率は下がっている。
正直、自分より圧倒的に人生経験もなけりゃ、挫折経験もないやつに、一体何がわかるんだと思うし、実際分からないだろうから無駄だ。

エージェントに、毎回イチから経歴を説明するのかったるいから、エージェント共通システムみたいなのないかなぁ。
あとは、転職支援サイトも。いちいちそれぞれのサイトでフォーマットが違うし、入力作業がめんどくさすぎる。

閑話休題。

で、マーケター。

ある程度、お金を稼ごうと思ったら、世の中にある程度必要とされていて、かつ募集も多い仕事。
資格が特に必要がなく、専門性がある(ように見える)仕事。

そして、最悪自分でもちょっとは稼げそうな仕事。

そういうものを探して、マーケターにたどり着いた。

マーケターという仕事を馬鹿にしている、と思われるかもしれないし、マーケターと名乗る資格はないと思っている人もいるかもしれないが。

正直、マーケターという仕事は好きではない。

ほとんどの仕事が、無知な消費者を欺くようなことだし、8割がた嘘に近いことを並べて、仕事を取ってくるようなもの。

例えば、中小広告代理店(大手でも一部はそうだと思うが)だと、結構な割合で「健康食品系」「美容系」「クリニック系」「投資系」あたりはやったことあるんじゃないだろうか。

一応法律はあるから、「効く」とかは書けないんだけど、実際はそれに準じるような言葉で客を呼び込む。
「つるっと」「ふんわり」「しゃきっと」「ぐんぐん」「みなぎる」みたいな。連想ゲームかよ。

一時期、初回のみ無料とか500円とかで、じつは定期契約でした、っていうのも流行ったが、あんなの広告代理店が完全に片棒担いでる。
いまでも、同じようなもの多いよ、まだ。

YouTube 広告でも、ダイエット系とかの広告バンバン流しているけど、こんな動画作っててクリエイターは悲しくないのかなと思うし、これでお金もらってて広告代理店はモラルないのかと思う。

以前いた広告代理店を辞めたのは、それがあったからだ。
細かいこというと身バレするが、要は効きもしないサプリを大量の広告費をもらって出し続けて何とも思わない人たちに疲れたからだ。

まあ、そのサプリ作って売ってた会社の社長はパクられたけど。
多分、ああいう人は不死鳥のようによみがえって同じことを繰り返すんだろうと思う。

わざわざ、間に入って、自制を聞かせることもできる「代理店」が、結局詐欺まがいのことに手を貸してしまう構造。
世の中のマーケターが、ずっと見て見ぬふりをしている。

ほとんどのマーケターが、こういう案件やったことあるはずだ。

マーケターの光と影

有名なマーケター、結構いるんですよ。
でも、そのほとんどの人は、その人がすごいんじゃなくて、その人に権限を与えた会社がすごい。

で、その人の講演をいくら聞いても、自分たちにそんな権限ないし、お金もないから、同じことなんてできっこないわけで。
再現性が低い話が、ずっと崇められてきたのがこの業界。

そもそも、ほとんどのマーケターができる範囲のことは、全て何かしらのプラットフォーム上に乗っている。
Google、Yahoo!、Facebook、Twitter、Instagram、ラジオ、テレビ・・・

プラットフォーム上でできることは、そんなに多くはない。
もちろん、知識を持つことでできる調整は増えるが、そんなもんだ。

さらに、世の中は機械学習でできる限り自動化になっていっている。
世の中のほとんどのマーケターは、そんなに予算も持っていないから、予算が多いところに討ち死にする。

まれに、違った角度からうまくいく例もあるが、それもまた「再現性がない」のである。

そんな中で、なんとか最低限、やろうと思っていることを実現に向かわせるのがマーケターの仕事だ。

何も知らない人は(社長とか、上司とか、クライアントとか)マーケターの仕事、とりわけ「広告」や「ウェブ」が万能だと思っている節がある。

その商品やサービスが、どこにもないオンリーワンのもので、かつターゲットが明確であれば、確実に成果を出せる自信はある。

ただ、似通ったような製品やサービスが既に存在し、違いといえば「営業のきめ細やかなサービスです!」「レスポンスの早さです!」みたいな誰でもいえるようなものしかない場合は、なかなか難しい。

USP(Unique Selling Proposition)は、マーケターには創れない。でも、それがないと何かしらのプロモーションをするのは難しい。

その結果、お金だけがかかって、かつ何とも言えない表現で、そういった商品やサービスに興味がある人を無理やり誘導してくることになる。
別に詐欺ではないが、ある意味「錯覚」を起こさせている部分もあるので、個人的にはグレーだと思う。

そんなこんなで、マーケターのほとんどは、こんな子供だましみたいなことをやっているわけで。
(当然、全員がそうだとは言ってませんので、悪しからず。)

でも、やってほしいって人が多いから、成り立っている業界。
だから、僕みたいな汚れたやつでも、なんとか食いつないで行ける。

同じように悩んでたり、経歴が汚れちゃった人、マーケ業界においで。
勉強しないといけないことも多いけど、最低限くいっぱぐれはない気がする。

とりあえず、しばらくの間はね。

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