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瑞穂の家

10月にTAB設計監理の新築住宅が完成しました。こちらの住宅についていろいろ書きたいと思います。

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SLBH1の規格住宅化

この住宅は個人の注文住宅ではありますが、お客様の要望をかなえるとともに、TABメンバー河合が以前に設計施工し、各方面から高い評価を得た『SLBH1』の設計思想をマイルドに受け継ぎ、ある種の規格住宅化を目指した設計になっています。

『SLBH1』の設計コンセプトは上のリンクをご参照ください。

この素敵なコンセプトを簡単かつ乱暴に解釈しますと、

家をつくるうえで過剰な部分を省こう・規格材や流通材をうまく使って余計な作業減らそう・ライフスタイルで変化する部分はDIYで住んでる人がつくっていこう・そういうデザインと設計したらあんまコストかからないね!

みたいな感じです。結果いわゆる木造の在来工法を今一度見つめなおしたようなシンプルな納まりや寸法感が生まれたように感じました。

このあたりの文脈をうまく文章化してます記事が10+1websiteさんのほうにありますのでこちらもご参照ください。

ちなみに『SLBH1』は今年のJIA新人賞の1次審査を通過し、10/31に公開審査が行われます。

寸法・納まりを見つめなおす

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普通に木造住宅を設計すると、何も考えずに天井高さ2.4ⅿみたいな空気感が設計サイド・お客様サイドからも自然と流れてきます。しかしこの『瑞穂の家』では写真にあるようにH2200の規格サイズの外付サッシによって土台と2階の梁の距離が決まり、それに伴って天井高も決定されています。実際の寸法としては床から梁下までが2230㎜、2階の床仕上げ兼天井までが2410㎜になっています。梁があらわしなこともあり、そこまで天井が低い印象はありません。ちなみに2階はH2000の規格サイズのサッシで天井高が決まってます。1階より20㎝低いです。高さ以外にも、平面計画は基本的に2730㎜□のグリッドを8つ並べたシンプルな構成になっており、設計作業の簡略化や構造材の効率化につながっています。

天井は高ければ高い方がいいとか、リビングは広ければ広い方がいいみたいな根拠のない考えは切り捨て、実害ないレベルでこんなもんでいいかなっていう感覚を大事にしてます。まあコストの問題ですが…。

ここからはちょっとわかりづらい納まりの話になりますが、この『瑞穂の家』にはいわゆる額縁とか枠みたいな木製パーツがほとんどない状態で出来ています。普通のデザイン心理からすると、大壁のように構造材を隠すか真壁のように柱を表に出すかという選択になるのですが、室内の壁材の910の幅をそのまま生かすために壁の切れ目だけ柱が半分あらわしになるというあんまり見かけない納まりを採用してます。同業の方からは「これでいいの?」と言われますが、潔くて自分は気に入ってます。

DIYをうながすデザイン・しつらえ

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2階部分は最低限の間仕切りと建具を除き、がらんどうな空間になっています。あらわしになった梁のサイズは一定の高さにそろえられ、壁の仕上げ材も910ピッチで突付の線がある状態になってます。これらは見た目や施工性で決定されてはいますが、同時にDIYするうえでの、いわゆる補助線があるような状態をうまくデザインに昇華していこうという試みになってます。

まあこれをデザインととらえるかは賛否両論あると思いますが...。

今回のお施主さんはMAKEのTシャツを普段着ちゃうくらいDIYに造詣が深い方でしたので、この補助線をうまく活用して棚付けたり、家具置いたり間仕切り作ってくれてるみたいです。そしてライフスタイルの変化に伴ってまたこの補助線を基に空間を編集していってもらえると思います。

グランドレベルに外部と連結する余白をつくる

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『瑞穂の家』の大きな特徴として1階に玄関とは別のエントランスのあるshop/workスペース(9帖程度の広さ)があります。上の写真の建物右側にあるアルミドアがその入り口になってます。

住居部分と上手く区分けされたこのような小さな余白スペースがあることで、リモートワーク・副業・職住近接・小商いといったキーワードに紐づけられる様々なライフスタイルに対応した建築になっています。

ある意味『稼ぐ』機能を住宅にもたせることで、あたらしい不動産価値が生まれるんじゃないかなと思ってます。そういった建築が周辺の風景にもたらすプラスの影響もありそうですし。自分の実家も自営業でお店が住居にくっついてたので、職住近接のメリットみたいなものはすごくわかります。あと小さなお店が身近にいっぱいあると、きっと住んでて楽しいんじゃないでしょうかね。そんな建売とか街区とか公営住宅とかそのうち出来たりするんじゃないかなーなんて思います。

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ちなみに『瑞穂の家』のshop/workスペースには女性向けの小さなサロンがOPENする予定です。

ということで、今後ローコストでシンプルで不動産価値もあまり下がらなさそうな素敵な住宅をご計画の皆様で、この記事見てこんなのもありかなーなんて思った方はぜひTABのほうにご連絡いただけたらと思います!



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