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発刊順:69 ヒッコリー・ロードの殺人

発刊順:69(1955年) ヒッコリー・ロードの殺人/高橋豊訳

ロンドンのヒッコリー・ロードの学生寮で、不思議な盗難がひんぴんと起こった。盗まれたものは、あとで返しにきたダイヤの指輪を除いて、夜会靴の片方やコンパクト、電球などいずれも他愛もないものばかり。秘書レモンに頼まれ、学生寮におもむいたポアロは、即刻警察を呼ぶべきだと主張する。その直後、今度は寮生の一人が怪死するという事件が起こり学生寮は混乱につつまれた。
一見何の関連もなさそうな2つの事件。しかしその2つには、世にも大胆な犯罪絵巻が隠されていたのだ!マザー・グースを口ずさむポアロにはどんな推理が?

ハヤカワ・ミステリ文庫の裏表紙より


このお話は、私の大好きなミス・レモンとポアロのやり取りから始まる。
完全無欠で決してミスを犯すはずのないミス・レモンが、簡単な手紙のタイプになんと3つも間違いがあり、しかも彼女がその誤字に気づかなかったのだ・・・青天の霹靂!

ミス・レモンは手紙を目にしてそれを見つめた。ポアロは生涯初めて、彼女が顔を赤らめたのを見た。
「まぁ、どうしてこんなまちがいをしたのかしら・・・あっ、そうか。これはきっと姉のせいですわ」
「あんたの姉さん?」
ポアロは二度びっくりした。ミス・レモンに姉があろうとは思ってもみなかったからだ。

身内の存在すらも感じさせない、まるで精密な機械であるかのようなミス・レモン。
そして、彼女は余暇すらもある新しい書類整理システムの研究に熱中して、それが完成の暁には特許を取り、彼女の名前にちなんだ名称をつけることにしていた。
 
さらに続きますが・・・こういうくだりが私はほんと好き。
 
ミス・レモンの姉はというと、

「他人のかんしゃくや気まぐれなどに、あまり頓着しないたちなんです。どんな相手にも屈しない代わりに、くだらないことにはいっさいかかわらないのです。」
ポアロはうなずいた。ミス・レモンの姉はそうした面でも彼女によく似ていた―彼女の姉の方は、結婚とシンガポールの風土によって多少やわらげられてはいるが、やはり気の強い性格の女性らしい。

ミス・レモンの姉のハバード夫人は、学生たちの寮の寮母をしており、最近学生寮の中で盗難事件が相次いでいて、そのことで頭を悩ませているのだ。
ポアロは、ミス・レモンにこれ以上タイプミスをさせないため、そして自らの退屈をまぎらわすためにヒッコリー・ロードにある下宿に赴くのだ。
 
導入部分はとても面白かったのだが、本編が始まるとたくさんの学生たちが出てきて、名前とキャラクターがなかなか一致せず物語に入り込めないパターンのやつ!だ。(私はね)
 
盗まれた品物は、一貫性がなくしかもそれほど高価なものではない。それではなぜ盗まれたのだろうか。
調べていくうちに、盗難事件の犯人がわかり事件は解決したかに思われた矢先、さらに事件が発生する。
しかも、それは自殺を装った殺人なのだ。
 
盗難事件の真相から、別の事件が浮かび上がり、さらにその背後にある犯罪。ポアロが事件に関わらなければ解決しなかったであろう。


HM1-37 昭和57年11月 第11刷版
2023年4月29日読了


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