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いつか、してみたい旅がある

いつも意外に思われるけれど、「一度は行きたいあの場所」って、実は僕にはあまりない。

もちろん、「行きたいな」と思う場所はたくさんある。

けれど、「一生に一度は行きたい」と強く思えるほどの場所って、ほとんどない。

たとえば、キューバには行きたいと思うけれど、どうしても行きたいかと問えば、そこまででもない。

ジョージアもいつか行ければいいなと思っているけれど、行けなくても別に構わない。

とにかく、僕は物欲がないのと同じように、場所欲(という言葉はあるのだろうか?)もないのだ。

たぶん、多くの旅好きの人は、「一度は行きたいあの場所」を持っているのだろう。

ウユニ塩湖の絶景を見てみたいとか、アフリカのサハラ砂漠を歩いてみたいとか。

そうした「一度は行きたいあの場所」が、日々を生きるエネルギーとなり、いつか実現すべき「夢」へとなっていく。

でも僕には、そこまで強く思える「場所」がない。

では、いつもどうやって旅先を決めているかというと、それは「インスピレーション」だ。

たとえば、去年訪れたニュージーランド。

そういえば今年はラグビーのワールドカップがあるなあ、とあるとき気づいて、だったらラグビー繋がりでニュージーランドへ行ってみようか、と決めたのだ。

単純な理由で向かったニュージーランドだけど、いくつもの大自然に出会えて、思い出深い旅になった。

4年前に訪れたマルタも、やはり「インスピレーション」だった。

あるときヨーロッパの地図を見ていたら、地中海の真ん中にマルタという島国があるのに気づき、どんな国なのだろう?と気になった。

ただそれだけの理由で訪れたマルタは、まさにこの世の楽園と言っていい、天国みたいな島国だった。

いつもそんなふうに、いわば適当に、旅先を決めているのだ。

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そんな僕にも、いつかしてみたい、と思っている旅がある。

それは、ものすごく漠然とした言い方になるけれど……、自分自身で心から納得できるだけの、「一生モノの良い旅」だ。

これだけ素晴らしい旅をしたんだから、もう旅は卒業してもいい、と思えるくらいの「良い旅」。

もう2度とこんな旅には出会えないと思うほどの、一生に一度だけしかない「良い旅」。

それは別に、世界一周をするとか、長期旅行をするとか、必ずしもそういうことではない。

「一生モノの良い旅ができた」と、心の底から思えたら、それでいい。

僕は今まで、いろんな「旅」をしてきたし、「良い旅」もしてきたと思うけれど、100%納得できるだけの「良い旅」にはまだ出会えていない気がする。

でも、もしかしたら、それは「幻の旅」なのかもしれない、とも思う。

人はどんなに「良い旅」をしても、「もっと良い旅を」と願い、新たな旅に出てしまうものだから。

それはまるで蜃気楼のように、追いかけても追いかけても辿り着けないものなのかもしれない。

いつか僕は、心から納得できるだけの「良い旅」をすることができるのだろうか?

わからない。

でも、わからないからこそ、旅に出る。

明日出発するこの旅が、自分にとっての「一生モノの良い旅」になるかもしれない、と夢見ながら……。

きっと、幻かもしれないその「旅」こそが、僕の「一度は行きたいあの場所」なのだ。

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一度は行きたいあの場所

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