旅行業マップ

2020年から旅行業で儲けたい人が失敗しないためのミチシルベ。

from:元旦の渋谷事務所より

先日のこのツイートに関していくつか反響をもらいましたので、noteでまとめてお答えします。

旅行業やホテル旅館業の人間から見ると当たり前の構図ですが、やはりカオス(ムダが多い)です。

厳密には、この流通の中に「サイトコントローラー」という業態も噛んでおり、もっと複雑です。


例えば次の場合、A社とB社の内部には、互いを競合だと認識している部署とパートナーだと認識している部署が混在します。やはりカオス(ムダが多い)です。

A社はユーザーに直販をしている
A社の卸し先にB社がある
卸先B社も直販をしている

旅行業界は、右手で握手して左手殴り合ってる、みたいな状況が日常なのです。

今回は、旅行業界の構造のことと、そんな旅行業界で失敗しないためのポジション取りについて、お答えする形で書いていきます。


旅行会社はなにで儲けているのか

旅行会社の業態は代理業なので、儲け方は次の2つしかありません。

①販売手数料:流通額のまま販売しその●%をもらう。
 ex)10,000円で販売し10%を宿からもらう=儲け1,000円
②マークアップ:流通額に料金を乗せて販売する。
 ex)10,000円で仕入れ11,000円で販売する=儲け1,000円

つまり、①の場合は仕入先(ホテル旅館など)の収益性が悪くなり、②の場合はユーザーの消費額が高くなります。

この2つの儲け方と料率を各プレイヤーごとに大凡で表すとこうなります。

旅行業界マップ手数料

本来はもっと複雑ですがここでは簡略的に。

旅行代理店は、一度の流通において手数料とマークアップのどちらもかまして販売してきました。しかし最近は、価格でOTAに勝てないケースが増えたので、マークアップを乗せないこともあります。

ユーザーの視点で考えると、現地ランドオペレータが仕入れた在庫をメタランドオペレータが仕入れ、それを旅行会社が仕入れて更にマークアップした空室を予約してしまった場合が、最も気の毒なケースです。そしてユーザーにはその過程が見えません。


話が逸れましたが、要はこの中でより儲かるポジション取りを考えるとするなら、中間プライヤー達のどことどこをアグリゲートするのか。またはどの様にして独自の仕入ルート・仕入レートを作るか。この2つしかないということになります。


旅行業で儲けるための正攻法

旅行業は「低単価かつ薄利な中間業」なので、「生産性高くマスに売る」が最も儲かる方法です。

不動産仲介の様に、1度の契約でまあまあな収益を得ることができるのであれば、何度も相談に乗って内覧にも行ってetc でOKですが、旅行の場合は販管費が膨らみすぎるとクリティカルに営業利益率を押し下げることになります。

よって旅行業で儲けるために必要な仕組みは、「なるべく人の手を介さず一度に複数商材を購入してもらう」なのです。

実は意外と、複数の商材を購入してもらうができているプレイヤーはいません。


旅行商材(売り方)別の市場規模と、内WEB予約市場規模を見てみます。

観光業マップ

※ここでは収益性以外を抽象的な表現に変換しております。

今年の春から、日系航空キャリアが新IIT運賃(ダイナミックレート)での供給を開始しますが、それも踏まえて「ツアー」をオンラインで販売する市場は、まだまだ成熟仕切っていません。

マーケットのポテンシャル的にも、「なるべく人の手を介さず一度に複数商材を購入してもらう」と言う観点からも、特に海外ツアー市場に余地があると考えています。


オプショナル市場

仮にツアーとして売れなくても、海外旅行におけるオプショナル市場はとてもよく伸びています。参考までに。



2020年儲かる旅行会社はこのKPIが良い

旅行業として儲けるために重要な指標は3つです。

①CPA(顧客獲得単価)が低い
②人時生産性が高い
③LTVの高い顧客数が多い

先日ある有名な企業様(旅行業ではない)にご相談いただき、「品質の高い旅行を提案する事で利益率を高める」が成立するかどうかの話をしました。

僕の見解も「成立する」なのですが、品質の高い旅行とは何なのか?は大事な論点です。これは持論ですが、旅行ユーザーが感じる根本的な基本価値は「コスパが良い(価値/価格)」か「融通を利かせられる」に集約されると思っています。

①〜③を満たしている旅行会社には、「旅行予算が豊富な固定客が多い」という共通点があるのですが、その客層が最も価値を感じてくれるのは、融通を利いてくれることだったりします。だから良くも悪くも属人的なんですね。


旅行業はレガシーな業界ですし、ディスラプトできる要素はいくつもありますが、確実に失敗する切り口があります。

それは、「プロダクトアウト」思考です。

引き合いに出すのは恐縮ですが、好みの写真を選ばせておすすめの旅をレコメンドする「intrip」さんも、後払いで旅行にいける「TRAVEL Now」さんも、おそらく想定した程の反響は出なかったと思います。

「自分の好みに合った旅行を知りたい」とか「旅行に行けない理由第1位=お金がない」などの統計や調査結果は確かにありますが、そこだけを解決しても基本価値が低ければ利用されません。


旅行は感性的な商材であり、感性的な消費行動なので、サービスを設計する際もすごくワクワクします。こんなサービスあったら面白いよね!とひらめきやすいです。

しかしそれでは失敗するケースもたくさん見てきました。理由は、旅行が余暇市場であり奢侈品であるからです。ワクワクしたからと言って買えない時は買えないのです。その旅行いいな!と思っても、より安く買える方法があれば、そちらを選択します。

旅行に行きたい多くのユーザーは、捻出して絞り出したこの予算を、可能な限り効率よく(コスパ良く)消費したいと言う心理がどうしても働くからです。


どのポジションを取るのか
コスパ・融通性の高いサービスであるか

2020年は東京オリンピックなど大きな外部要因もありますが、僕自身の事業も地に足付けて、この辺を固めたいと考えています。




リクエストと一緒にお待ちしております。