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ぼくの旅路 #7


* 番外編  *

【エゴを見つめる・ネイティブアメリカンの教え】

当時のわたし:26歳・大学卒業後、放浪の日々



[エゴイズム:社会や他人のことを考えず、自分の利益や快楽だけを追求する考え方。また、他人の迷惑を考えずわがまま勝手に振る舞うやり方。利己主義]



 本で知り、憧れていた、ネイティブ・アメリカンの存在。彼らと日本で会えるチャンスがあるということを、大学生活も終わりの頃に知りました。世界中の先住民が富士山の麓に集まり、夏至の日に、世界平和の祈りをすると言うのです。2004年のことでした。その知らせに、ぼくは「彼らに実際に会えるんだ!」という気持ちが高ぶりました。それは、就職活動という暗雲立ち込める、ぼくの最後の大学生活の一年の中で、こころの大きな支えでありました。これからの生き方に対して抱えている疑問の答えを、彼らから学べるのではないか、という思いがあったのかもしれません。

 その頃のぼくは、東京で大学生活を送っており、周りの大学の友人たちは就職活動に精を出し、内定が決まったと安堵の顔を並べていました。その反面、ぼくは、まだまだ、この先も旅を続けたいと、就職活動は全くせずに、大学内では長髪を楯にしたヒッピーかぶれの浮いた存在でありました。ネクタイを結ぶのはダサイと、長く伸ばした髪を結んだのです。

 この『旅をしたい』という思いは、他者に取って、実に漠然とした意思表示であり、そのため、親や周りの人びとに、散々、心配の言葉をかけられました。そんな言葉をかけられる度に、自分の内からやっと生まれてきた新しい芽が、問答無用に抜き取られていくような気持ちでした。「君の選択は、間違っている。あとで後悔するよ。人生の先輩の言うことは聞いておきなさい」。そんな響きが、いつも大人たちからの心配の後ろに、潜んでいた様に聞こえたのです。

 『旅をしたい』という決断は、就職活動のように、確かな内定をもらえるものではありません。自分も、ぼくを心配してくれる周りの人たちも、「さぁ、君の進路は決まった。これでひとまず、安心だ」、というわけにはいかなかったのです。それは、自分の決断と周りの人たちの反応との間に、「本当に、自分の進む道は、これでいいのか」と、自問するスペースをつくり出していきます。自問のスパイラルにはまってしまうと、辛さはその力を増していくばかりで、そのことに耐え切れずに、「やっぱり、あきらめようか」、と呟く声が幾度となく聞こえてきました。

 今回の旅が、「大学卒業後の進路=旅」というものであったから、ここまで自分にとっても、周囲の人たちにとっても、辛いものであったのでしょう。いままでの様な、春休みや夏休みの期間限定・数ヶ月の旅というものとは、意味が違ったのです。そのような、期間限定の旅には、「一夏の大冒険を終えて帰ってきたら、また大学生という社会的立場がちゃんと用意されている」という安心感があり、親も「今のうちに、どんどんと新しい世界を経験してきなさい。それは、将来、社会に出てからもためになることだ」と、快く送り出してくれていたのです。しかし、「大学卒業後も、今度は、期間未定の旅に出たい」となると、いままでとは、話がまったく異なります。「今のうちにと言っておいたのに、今のうちの、今は、いつまで続くんだ。いい加減にしなさい!」と、言われるばかりであったのです。それに対して、当時のぼくには、言い返す言葉がありませんでした。正確には、内にある気持ちに対して言葉という形を与え、他者に伝える強さがなかったのです。

* * *

( 大学時代の辛かった心境を、つらつらと語るばかりで、ネイティブ・アメリカンのお話しから、ずいぶんと逸れてきてしまいましたね。気持ちが重たくなり過ぎる前に、そろそろ、あの夏のお話しに戻りたいと思います。

 と、その前に、最後に、この当時の葛藤を、ここに綴ることの目的を、お話しさせてください。

 大学生の頃から、自分の将来についての自問がはじまり、自問を重ねるごとに、苦しさ(特に、就職活動をしないとこころに決めた時からの、社会からの疎外感)が増す時を経て、やっと、『旅』という我が道を見つけ、ここまで歩き続けて来ました。そして、いまの自分は実に幸せであり、後悔は全くありません。そのことを、次の世代の若者たちに伝えたい。そして同じように悩む、もしくは、悩むこと・考えることをやめてしまった若者たちの力になれることが、多少なりともあれば、というのがこの連載の思いの発端であります。そして、ここが自分にとっても、いちばんアウトプットしたい重要な部分であります。その葛藤した気持ちを、ここで、吐き出させてください。気持ちを文章にして、形に出すこと。願わくば、それを他者に聞いてもらうこと。このプロセスは、大きな癒しです。)

さぁ、次回からは、あの夏のお話しに戻りましょう。

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