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新規就農した早大生の話 ~竹を使った持続可能なサイクルで地域の社会課題を解決したい~

「持続可能なサイクルで地域の社会課題を解決したい」

この想いで、放置竹林問題の解決や農業に熱く活動するサークルがある。
その名もBAM部(ばんぶ)。ポップな名前のサークルだが、創設者の大井晃亮(おおい・こうりょう)さんは、大学院生中に新規就農し、今年9月にはBAM部の活動をサポートする株式会社タブラ・ラサも設立。

大学院生である大井さんが、農業や地域課題に熱くなる理由は何なのか。
うかがってきた。

河村青依 (TABETAI編集部)

【BAM部とは?】
放置竹林問題や空き家、耕作放棄地などの様々な課題を持続的なサイクルで解決することを目指す、早稲田を中心としたさまざまな大学メンバーで構成されるサークル。
BAM部のホームページはこちら

【放置竹林問題とは?】
高齢化や担い手不足などにより管理されなくなってしまった竹林が、その繁殖力の高さから周辺の農地や住宅の敷地に侵入してしまったり、道路や建物に竹が倒れてきてしまうなどの社会課題。

写真提供:BAM部 大井晃亮(おおい・こうりょう)さん

大井晃亮(おおい・こうりょう)さん
早稲田大学大学院 修士2年
地方と東京との格差を感じたことから2017年に地方の現状について学ぶ「UNITE」というサークルを立ち上げる。その後、実際に自らが行動することで「地方の社会課題を持続可能なサイクルで解決したい」という想いを強く持ち、2020年にBAM部を設立。放置竹林問題解決に向けて活動を開始したが、現在では農業や地域の賑わい創出など幅広い活動を実施している。
※プロフィールは2021年現在の情報です。

自分らしさの実現、
それが地域の課題解決だった。

写真提供:BAM部 大井晃亮さん提供  放置竹林を伐採する様子

BAM部創設前に、「UNITE」という早稲田の地域課題の勉強会を行うサークルを創設した大井さん。しかし、勉強会だけではインプットはできても自ら行動を起こせないことにもどかしさを感じていたと言う。そんな時、放置竹林問題なら竹を使って自分たちで行動を起こせるかもしれないと考え、BAM部を創設するに至ったそうだ。ここまで地域の課題を解決するということに信念を持つ理由は何なのだろう。

「地元の高崎が好きで大学まで高崎から通学していたのですが、その中で、地方と都市の格差を目の当たりにする場面は多くあって。自分は身近に、耕作放棄地や、空き家問題を感じる場面は多くても、大学の友人にとっては身近ではなく、渋谷の新しくできた商業施設の話をしている。そのギャップに驚いてしまって。自分が気付ける環境にいるのだから、地方の課題について取り組むことが自分らしさにつながるのだと思いました」

自分では当たり前のことが、実は他の人にとっては当たり前でなくて魅力的なものがあるとよく聞くが、大井さんにとって地方の課題を解決することが自分らしさの発揮に繋がっていたのだ。

大井さんは今も高崎で暮らしながら本庄で農業をしている。週末に群馬県内をドライブするのが趣味だそうだ。好きな場所で自分らしい仕事をする、人生の選択肢は広いのだと感じさせられた。

一過性で終わらせないために、
就農だ!と起業を決意

写真提供:BAM部 大井晃亮さん  BAM部の皆さんが農作業をする様子

大井さんはサークル創設だけにとどまらず、新規就農をして今年9月には株式会社タブラ・ラサも設立。本庄という土地と農業に本腰を入れた。その理由はBAM部のビジョンである持続可能に地域の課題を解決するという思いとつながっていた。

「大学生として行うボランティアって、どうしても就職活動や卒業で途絶えてしまうなど持続的でないと思っていて。東京からたまに来る大学生という立場だと、地域の人もいつかいなくなってしまうのではないかと不安だろうし信用を得られづらいと思う。自分がボランティアをするなら、きちんとお金を回して、そこに住んで持続的に活動をしようと思いました。ただ、ビジネスにしようとすると、お金を持っている農家さんと、そこまで持っていない農家さんがいて、竹林伐採を依頼されたときにお金を持っている方を優先してしまうと思う。それは自分のしたい持続可能なサイクルで地域課題を解決することと、根本がずれてしまうから、ビジネスとボランティア団体とのバランスをとることが大切だと思いますね。また学生団体よりも株式会社の方が取り組む活動内容に幅も広がる。その気持ちで就農と会社創設を決意しました」

土地に根を下ろす、お金を回して組織としてボランティアを続ける土台を作る、この二つの実現のために新規就農・会社創設をしたのだ。

食べる、その先に放置竹林の課題

写真提供:BAM部 大井晃亮さん  竹炭を農地に入れる様子

伐採した竹を竹炭にしてそれを土に混ぜて農業をする大井さん。実は竹炭は混ぜると土壌改良効果があるそうだ。

「BAM部では竹炭を栽培に使用した農産物やその加工品を直売所で販売しています。ナスのゼリーを作ったり、かぼちゃのプリンを作ったりとても楽しいですね。食べ物という身近なものの先に竹炭で作られた背景があってその裏に放置竹林問題がある、この流れで地方の課題に興味をお客さんが自然に抱いてもらえるようになると嬉しいです。食べ物へのお客さんが選ぶ理由って美味しいことと、値段のほかにストーリーがあると思う。放置竹林問題を知らないひとへどのように食のストーリーを届けるか、アプローチの手段を考えていくのかがこれからの課題だと思います」

写真提供:BAM部 大井晃亮さん  竹炭を混ぜた土で育てたかぼちゃプリン

大井さんにとって自分の農産物を食べてもらうことはいわば、放置竹林問題への興味をもってもらう広報活動なのだ。手間暇かけて作った食べ物に対し、能動的に食のストーリーを探る消費者の意識があれば、値段、質のほかにストーリーという価値が付くのではないかと考えさせられた。

最後に新規就農へアドバイス!!

「就農って土地と機材と……って始めるのが大変と思われがちですが、一番大事なのはその土地の農家さんと仲良くなることだと思います。農産物の育て方をインターネットで調べたところで、その土地の方法は分からない。長く育てている農家さんからアドバイスをもらうと、この地域は風が強く、葉が実にあたって傷がつきやすいから、ナスの周りの葉をとり、枝を固定するといいなど、その土地に合った方法を聞けるのでいいと思います」



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