詩:炊飯母系宇宙

ふゆのだいどころ
炊かれていくお米

一合

今は凍るような水の中で
ふつふつと夢を見ている

一同

かつて世界は
巨大なホヤホヤの実におさまり
人はその殻の
内側に住んでいて
地表はそのふるいふるい殻が
崩れて盛り上がった場所で
空は今よりも堅く厚く
その先を見通すなど誰にもできず

真理を告げる樹からは
ホヤホヤの実がパラパラと
生まれ出でては落ち続ける

冷たい水がつぶやくように
熱湯へと上昇するあいだにも
かつての魂は
はるか霊山へと登っていて
山頂は雪に覆われ白く
そこが稲の精が住むべき場所だった

そして魂は時を経て山を下り
山麓の野で
金色に波打つ稲穂にそっと宿る

それを最初に口にした女は
子を身籠り
だから全ての人は稲の息子であり
娘である

そんな夢を見ていた

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