海辺

詩:海辺、散歩、冬はさみしい

空の縁は怪しげな赤色に揺らめいて
それが消え行く赤なのか
これから燃え上がる赤なのかわからない
砂浜の上を幾重にも折り重なるように押し寄せる波は穏やかで
終末の縁を歩いているって感じ

枯れた雑草の草むら。かさかさ音を当てる
卑屈なほどにしなびて曲がった葉の先、赤みを感じるのは何故だろう。
まだいきたいという悲鳴の色だろうか
しなやかさを失った揺れ方、かさかさ、かさかさ

空は光を失いはじめ
岸辺に覆いかぶさるように生える裸の木々の枝は微細で
その一つ一つを視認する事は難しく
見つめているうちに冬空に溶けるのではないかとも思ってしまいますが
時折、こちらの足音に気づいた海鳥の群れが
慌てて海の中に飛び込んだりしたりして

こっちだって驚いたのは一緒である

「どうせ私の歩く先には誰もいない」そうつぶやきながら

打ち寄せる波の音と
踏みしめる枯れ草と砂の感触だけなのだと
それは覚悟した事だと自分に言い聞かせながら歩いても
気づけばコートのポケットに入れた左手が
誰かの連絡を待つように携帯電話を握り締めていることに気づいてしまって

もう。





この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?