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防ぐために・反射しないため、一年後/香山哲

2021年5月2日 日曜日
昨日友達と8時間ぐらいしゃべった。自分にとって雑談って、人生でやっていきたいことランキングのうち、かなり上位かもしれない。認めざるを得ない。
「Thirty Flights of Loving」という短いゲームを遊んで、とてもよかった。Quakeか何かの古いエンジンで開発されていて、一人で作ってるみたいだ。そういう感じで過ごしていくことも、かなりで人生でやっていきたいことかも。

2021年5月3日 月曜日
先週チャンスを逃したので、午前中に起きてすぐに役所に行った。ホームページには14時までと書いてあったけど、入口に「オンラインでどうぞ」と張り紙がしてあった。別の人もそれを見てたから、最近移行したのかな。張り紙を写真で撮って(家で詳細を訳すため)、お昼ご飯にシャヴァルマを買って帰る。店番は見たことあるおじさん一人だった。テイクアウトですら、この1年間で2回ぐらいしか買ってない気がする。
「こんなんでも、引き続き自分はまともに生きていくんだろうか」と日々疑問を感じているので、たくさんの人が普通にやっていってるのを見ると、何とも言えない気分になる。

2021年5月4日 火曜日
朝起きて漫画作業。日本の大型連休に合わせて早めに原稿を出す、ということが難しかったので、無理せずに1週間うしろにズラしましょうと井上さん(担当編集者)に提案してもらっていた。
昼過ぎから英語の集まり(オンラインで一週間勉強したことなどをお互い話したりする。だいたい雑談)。僕はこの1週間合計で20分ぐらいしか取り組んでないけど、この集まりがないとゼロになってると思う。

2021年5月6日 木曜日
漫画やったあと、毎週させてもらってる犬の散歩。そのあと飼い主さんとお茶をしましょうということになって雑談した。もう21時近くなっても明るいので、あっという間に夜になってしまった。雑談の魔力。

2021年5月8日 土曜日
一瞬だけど雪が降った。だけど明日は27℃とかまで上がるらしい。
boardgamearena(オンラインボードゲームサイト)で遊ぶ会で、「Splendor」と「Illustori」というゲームをやった。雑談もゲームも、メンバーでだいぶ楽しさの方向が変わる。

2021年5月12日 水曜日
パンデミックも1年以上経過した。参加した『コロナ禍日記』の辻本さんから「『コロナ禍日記』、その後」を…という連絡をもらった。
この1年ずっと強く感じたことは、パンデミックが世界同時に起こった共通のことでありながら、各地域で全然違うことが起こっている、ということだった。
Querdenken(感染防止策への反対運動)やImpfneid(ワクチンあこがれ?)などの言葉もドイツ内でのことだし、ロックダウンの数値的基準や、その根拠となるデータの作り方も国によって異なる。「個人の会合は2世帯から最大合計5人まで」とかのルールも、数週間で変更されたりする。ロンドンやニューヨークの人と話すと、ますますそう思う。
「インターネットの普及」とか「新自由主義の台頭」とか「アメリカや中国の覇権」みたいなことも同じように、グローバルでありながらローカルなんだろうなと感じる。

↓一年前の日記はこちら↓

防ぐために・反射しないために/香山哲

香山哲(かやま・てつ)
1982年生まれ。漫画家。2005年、神戸大学大学院医学系研究科を中退。漫画以外にもエッセイやコンピューターゲームなどを制作。2013年より断続的にベルリンに滞在、2018年からパートナーと二人でドイツのベルリン・ミッテ区に在住。2019年にドイツ語学校を卒業し、毎日家で漫画を描く。趣味は絵や文を書くこと。著書『心のクウェート』『ベルリンうわの空』など。


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