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学ぶ姿勢と謙虚さを胸に刻む #ルーキー・スマート vol.3

ルーキー・スマート|ROOKIE SMART
著者:リズ・ワイズマン|Liz Wiseman
和訳:池村 千秋
発行:有限会社 海と月

この記事は前回の続きとなります。

【前回のあらすじ】
○ バックパッカー思考は重荷を背負わずすぐに動き出せる
○ べき論がなく根本的な疑問を持つので新たな可能性を見出す
○ 自分に正直に行動し、失敗してもすぐに立ち直る

今日はルーキー・スマート2つ目のモード“狩猟採集民モード”についてお話ししていこうと思います。

狩猟採集民と聞くとみなさんどんなイメージを持つでしょうか。私は「常に鋭い目で獲物を狙う仕事人」というイメージを持っていました。

しかし、ルーキーにおける狩猟採集民モードの特徴として本書で描かれているのは「注意深く周囲を見渡す能力を持った人」とされています。

専門知識を集め、素早く行動する|狩猟採集民モード

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多くの狩猟採集民にとって、食料となる食材を確保するために森林の伐採や植物の採集、野生動物の狩猟などの技術は生きるために必須です。また、自給できなくなった場合は周囲との助け合いも必要でしょう。

ビジネスの現場においても、生き残るためや出世、起業のためには材料となる情報や物資、資金を集める技術が必須となります。時には長期的にみた場合、それが生死を分けることもあるでしょう。

情報の不足=死に直結しない幸せな現代だからこそ気づけない人も多いのですが、私たちの社会は狩猟採集民が築いている社会と仕組みは変わりません。

特に右も左もわからないルーキーは、物心ついた時点で自然界に放り込まれる子供と同じです。生きるためには専門家の知識を分けてもらわねばなりません。だからこそ、ルーキーは注意深く周囲を見渡し、常に能動的に情報を集めようとします。

狩猟採集民の思考パターン

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先ほどお話ししたように、狩猟採集民は常に情報と知識を必要としているので、神経を張り詰めて周囲の環境に注意を払います。

反対に、自分の経験と知識を過信し、新しい情報に目を向けようとせず他人にアドバイスばかりしたがるベテランオジサンオバサンのことを「現地旅行ガイド」と喩えています。

バックパッカーモードで新たな世界へ来たルーキーは、右も左もわからない、セオリーのない道を切り開きます。当然新しい土地にやってきたルーキーには現地旅行ガイドはできません。

もしルーキーでありながら現地旅行ガイドのように振る舞っている人がいたら要注意です。その人のいうことはあまり信用なりません。

少し抽象的な話が続いたので、具体的な話をします。

狩猟採集民3つの特徴

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狩猟採集民の行動パターンには3つの特徴があります。日頃からこれを意識していれば、現地旅行ガイドにならずに常に新たな情報に触れることができます。

▼その①とりまく世界を精査する▼

情報を素早く知恵に転換するためには、まずデータの収集から始めなくてはなりません。しかし、自分には知識が十分にあると過信している人は、新たなデータを得ようとしないものです。

「過去をすべて消去する」というバックパッカーモードにも共通して言えることですが、自分の経験や能力を過信している人は過去から現在までの自分に固執している可能性が高いです。

しかし時代は変わっていて、今までのやり方は通用しなくなっているかもしれないですよね。昔のようなみなし残業をいいことにゴリゴリに残業させて始発から終電まで拘束するブラック企業は、今や働き方改革でどんどん淘汰されています。(しぶとく残っているところもあるようですが)

タイムリーな話でいうと、コロナの影響で今まで「リモートワークなんて無理だろう」と言っていた企業が緊急事態宣言によってリモートワークに切り替わり、「やってみたら意外とイケるやん」という状況になっている会社も多いでしょう。

今までのように気軽に人に会ったり外出したりできなくなったこの状況でも、まだ現地旅行ガイドよろしく既存のルートばかり巡っているようなことをしていたら、いつの間にか道がなくなっていて観光地も更地になっていたなんてことになります。

まずは「いま」「どの専門家から」「どんな最新情報を」聞き出すべきなのかを考え、集めた情報を世界と照らし合わせて精査することが大切です。

▼その②専門家を探す▼

さっきの章で専門家って言っちゃいましたが、正しい情報収集をするためには専門家を探すことが重要です。

あのスティーブ・ジョブズも、最初は専門家を探しました。生まれながらITの天才だったわけではありません。

ジョブズは12歳の頃、大手PCメーカー「ヒューレット・パッカード(HP)」のビル・ヒューレットに電話して、周波数カウンターの部品をくれと言いました。その結果、実際にHPの組み立てラインで働かせてもらえるようになったのだとか。

冷静に考えたらやばいですよね。僕らが小学6年生の頃にソニーに電話して「音楽プレーヤー作りたいから部品ちょうだい」って創立者の盛田 昭夫さんに直接言ってるようなもんですよ。こいつはやばい。

流石にそこまでぶっ飛んだ領域でなくても、どの会社どの業界にもその道に精通している本物の専門家はいます。その人を見つけて素直にアドバイスを求める姿勢が、新たな情報を得るヒントとなるのは間違いないでしょう。

なんでも自分でできると過信せず、まずは自分よりも専門領域に精通している人に助けを求めましょう。

ちなみに、ルーキーが他人に助けを求める確率は、ベテランの4倍と言われています。

▼その③大勢の人の協力を得る▼

どうしても解決できないことが起きたら、素直に大勢の助けを求めましょう。自分一人で解決できないからこそ、悩んでいるのです。

とても当たり前な話ですが、自分の力を過信している現地旅行ガイドにはその発想がありません。「すべて自分の責任で」「すべて自分の力で」「すべて自分の手柄」と考えてしまいます。

この傾向はリーダーの立場にある人に多く見られます。

皆さんの職場にも「チームの成績が振るわないのに解決策が上から降りてこない」「メンバー同士ではもっとこうしたらいいのにという意見が上がってるのに、リーダーは全然聞いてくれない」ということはありませんか?

この場合は、リーダーこそが狩猟採集民の思考を身につけるべきです。

必ずしもリーダーが全ての能力に長けているわけではありません。メンバーの中にも突出した力やアイデアを持つ人はたくさんいます。そのメンバーの力を借りて、協力しながらプロジェクトを前に進めるのがリーダーの真の仕事ではないでしょうか。

狩猟採集民になるための具体策

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常に周囲を見渡し、他人の協力を得て素早く情報を自分の知恵に転換しようとする狩猟採集民になるための具体策は、一言でまとめてしまうと「謙虚さを持つこと」だと思います。

「自分には知識と経験がある」といったマインドは奢り昂りであり、幻想であると肝に命じることです。

本書でも、狩猟採集民になるための具体策が以下のように書かれています。

① ルーキーだった頃の自分を思い出す

初めてその仕事についた時の気持ちを思い出しましょう。右も左もわからないあなたは、そのとき何を感じたか。いろんな教えて欲しいと思ったはず。その気持ちに対してどう行動し、仕事に対してどうアプローチしていたかを思い出してください。

② 専門家のアドバイスを求め、専門家のネットワークを築く

たとえ自分の専門分野に対する課題に取り組む場合でも、まず少なくとも5人の専門家のアドバイスを求めましょう。自分の知恵だけですぐに問題解決に走ってはいけません。

自分ではどうにもならないからこそ、問題であり課題なのです。それを乗り越えるためには新たな知識や物の見方が必要です。

5人の専門家に話を聞けば、それぞれ違った知識や見解が得られるので、その集まった情報を精査して最終決定を下すのがあなたです。

③ 部下にメンタリングしてもらう

自分の考えが凝り固まってしまっていると感じるなら、経験も知識も少ないルーキーに意見を聞いてみるのもいいでしょう。

ルーキーならではの視点で、突拍子もない意見が出るかもしれませんが、それはあなたの頭の中からは決して出てこない素晴らしいヒントになるかもしれません。

「部下にメンタリングしてもらうなんて情けない!」と感じてしまった人は、その時点で現地旅行ガイドです。今すぐそのガイドを捨てて、謙虚に振る舞いましょう。

学ぶ姿勢と謙虚さを胸に刻む

社会人経験を積み重ねていると、人はどうしてもお決まりのルールに従って行動してしまう生き物です。

これは行動心理学の観点から見ても当然の傾向で、人は“習慣化”することで脳の思考回数を減らすことで楽をしようとします。(脳の前頭前野の疲労を抑えようとする)

だからこそ経験に縛られて、今までのやり方を踏襲しようとします。そして、経験が長い人間が正しいという風潮も相まって、現地旅行ガイドが仕上がってしまいます。

この世に未来まで見通す賢者のような人はいません。

世界は変わり続けているということ、自分にはまだ学ぶべきことがたくさんあるという姿勢と謙虚さを胸に刻んでルーキー・スマートを発揮してみてください。

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