自転車と
今は、朝起きて「よし!頑張るぞ!」と思える。
出勤時、自転車に乗り季節を感じながら移動する事が、楽しさのひとつに戻った。
起きて、朝日を浴びながら出勤するのってこんなに楽しかったんだな。
季節を感じながら、お気にりカラーで匠海だけの電動自転車に乗って、出勤する事の楽しさを思い出した。
前までの匠海は、自転車に乗るのが苦痛で、出勤する事が怖かった。
お気に入りだった自転車を、駐輪場の端っこに置きっぱなしだった。
何時間も探して、悩んで見つけた大切な自転車が、蜘蛛の巣まみれになっていても放置していた。
しかし、初めはそんな事無かったのだ。
新卒。仕事が始まるから、買った電動自転車。お気に入りの匠海カラーの水色っぽい色。
田舎にある自転車屋のおじいちゃんに付き合って貰って、どの自転車にするか数時間‥話し込んでいた。そして、初めて匠海の身長に合って足がつき、好きな色の自転車を見つけた。本当に本当に嬉しかったのだ。お下がりではなく、【匠海の自転車】を持ったのは初めてだった。匠海は身長も脚も短く、姉と兄からお下がりで貰った自転車は一度も足が付かず、よく怪我をしていた。
買った時は本当に嬉しく、出勤の相方の自転車に「よろしくね!」と言っていた。
季節を感じながら出勤する事が、とっても楽しかった。楽しかったのだ。
帰る時はいつもクタクタだったが、それでも楽しかったのだ。嬉しかった。
いつの間にか、自転車の前で泣くようになっていた。
お気に入りのはずなのに、自転車に乗れなくなっていた。
朝から、頑張れなくなった。出勤が嫌になっていた。泣いていた。
何時間も前に自転車に乗って出勤しようとしても、自転車が止まる。
自転車が止まり、匠海は泣いている。仕事に行く事が、とてもとても苦痛だった。
もうその頃には、匠海は限界だったみたいだ。
匠海が働いていた職場は、俗に言う【ブラック職場】だった。
ドクターストップがかかっても、自転車に乗って出勤していた。
出勤の何時間も前に乗って、進まない自転車を何とかして前に進めようとしていた。
出勤しようとしていた。それでも、お気に入りの自転車は進まなかった。
その3年後、新卒で入った会社を辞めた。辞表を出して1年後に辞めれた。
お気に入りカラーで、低身長でも足が付く匠海だけの自転車は、乗らなくなった。乗れなかった。
仕事を辞めて1年後。1年間療養していた。基本家から出なかった。出られなかった。
「もっと変わりたりたい、成長したい」と思い、何も見ず、応募したパチンコ屋の清掃のお仕事。
無事受かった。しかし、匠海は大馬鹿なので、バスや電車が無い場所だと分かっていなかったのだ。大変!!この女、とても馬鹿である。
出勤に自動車の選択もあるが、匠海はゴリゴリゴールドペーパー免許!イエーイ!
大変危険である、自動車という選択は無くなった。
自転車にするしかなかった。自転車で片道30分。往復1時間。やるしかない。
駐輪場の端っこに、ひっそり置かれているお気に入りの色の自転車で、出勤すること決めた。
清掃の初出勤前、自転車を綺麗に掃除をし、タイヤを確認し空気を入れた。
自分でいうのもちょっと変だが、めっっっちゃ綺麗になった。
期待と不安が半分この初出勤。
まだまだ、梅雨が始まったばかり。雨の中カッパを着て出勤した。
綺麗に掃除したのに‥もう汚れていた。少し気持ちは下がった状態で乗った。
しかし自転車は止まる事なく、遅刻することもなく‥無事、余裕の20分前についた。
匠海のパチンコ初出勤が幕を開けた。
そして、パチンコ屋で働き始めて、そろそろ3ヶ月になる。
清掃の方達はとっても優しく、パワーがある。負けてられない!
まあ、薬の副作用で少し眠いが、起きてご飯を食べて‥自転車で出勤している。
朝日を浴び、季節を感じながら出勤する事が、とても楽しい。
今の時期は、日焼け止めを塗っていても肌が焼けてしまう。
肌が焼けることも、季節を楽しめていて楽しいと感じる。
1年前までそんな事思わなかったのに。寧ろ乗ることが、進む事がとても怖かった。進めなかった。気がついたら道端で泣いていた。
もう二度と乗らないと思っていた。乗れないと思っていた。
1年長いようで、一瞬で。何も進めていないと思っていた。
変わった所といえば‥欲張りになった事。
配信以外でもちょっとは、前に進めてるのかな。そう思いたい。
因みに自転車は定期的にメンテナンスをし、自転車が駐輪所の端っこに置かれっぱなしになることは無くなった。毎週乗っている。匠海の相方だ。