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京極夏彦入門

京極夏彦入門の最適解が決まった。
講談社文庫の『地獄の楽しみ方』だ。


水木しげる大先生が好きなら迷わず『姑獲鳥の夏』から入ったらよろしい。
時代劇に抵抗がなければ『巷説百物語』という手もある。
SFっぽいほうが好みなら『ルー=ガルー ― 忌避すべき狼』を推そう。
(こちらは珍しく少女たちが主人公なので、とっつきやすさもあるかもしれない)
コワイ話が好きなら『厭な小説』や『死ねばいいのに』で手っ取り早くゾッとするのも悪くない。
原本より読みやすいかも…と『遠野物語remix』を選ぶのもありだろう。
石黒 亜矢子さんの絵が素晴らしい『とうふこぞう』の絵本や、児童書もあるにはある。


が、それらは結局、もともと本を読むことに抵抗がない、寧ろ好きな人たちやその予備軍向けのものだ。

そうではなく、そもそもあんまり本を読む習慣のない方、これからはちょっと読んでもいいかなとおもっている方に自信をもってお勧めできる1冊が、この『地獄の楽しみ方』なのだ。

内容は、10代後半の若者たちに向けた「ことば」に関する講演をまとめたもので読みやすい。
本自体もだいぶ薄い。

上から、本書(約5mm)、平均、厚め

でも、内容はまるで薄くない。
ことばの力とその欠陥、それを踏まえてSNSが炎上する理由と、語彙を増やし、本を読むことが、どう世の中という地獄を楽しませてくれるのか…
なにかと危ういことばを使う際、ことばに触れる際の注意すべき点や心構えなど、文章を書いて公開するときに知っておくとためになることも端的にまとめられている。
「執筆は嫌い」「(読んでみて)嫌になったらやめたらいい」など身も蓋もないことも割と言ってるけど、だからこそ説得力があるというかそれでいいんだなとおもえるのではないだろうか。

だからこれは京極夏彦という作家がどういう考えの人なのかという入門であると同時に、読書を楽しむ際の入門でもある。

表紙の猫だかサルだかもなんとなくかわいい…
ちょっと干菓子みたいな不思議な質感もおもしろいじゃないか…

今年もまだ始まったばかり。
新しくなにか読んでみようかしらという方、まずここから始めてみるといいかもしれませんよ。

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