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通関営業所(通関センター)の仕事

こんにちは。通関士Tです。今日は通関業者の通関営業所(通関センター)の概要について書きます。

「通関の仕事に興味があるけど、どんな仕事なのか」、「荷主(輸出入者)の立場で通関業者に依頼しているが、通関業者の中はどのような役割分担になっているのか」ということに関心がある方は、ぜひお読みください。

概要

通関営業所では、次のような流れで通関業務を行っています。私の所属する輸入通関の部署の例です。輸出通関の場合、流れは似ていますが「関税額を計算する必要が無い」等の違いがあります。

通関工程

【用語説明】
対査(たいさ):B/L、インボイス、パッキングリストの記載事項(品名、個数、重量、ケースマーク等)の対応が取れて一致していることを確認すること。

NACCS(Nippon Automated Cargo and Port Consolidated System):入出港する船舶・航空機及び輸出入される貨物について、税関その他の関係行政機関に対する手続及び関連する民間業務をオンラインで処理するシステム。通関業者から税関への各種申告はNACCSによって行います。

通関営業所とは

通関営業所とは、通関業者が通関業務を行う事業所のことです。通関業者が新たに営業所を設けようとするときは、通関業法に基づき財務大臣の許可を受ける必要があります(通関業法第八条)。

なお、認定通関業者の場合は、許可ではなく届出という手続きで比較的簡易な手続きで営業所の新設をすることができます(通関業法第九条)。

法律上は「営業所」という名称ですが、実際の名称は通関業者が自由に付けることができます。「〇〇営業所」、「〇〇支店」、「〇〇通関センター」等の名称が使用されます。

通関業務とは

通関業務とは、通関業法においては他人の依頼によって行う次のような業務のことを言います。
 
 ・輸出申告
 ・輸入(納税)申告
 ・特例申告
 ・修正申告(輸入・納税申告における納税額が過少であったときに行う)
 ・更正の請求(輸入・納税申告における納税額が過大であったときに、税関長に納税額の更正(還付)を求めること)

上記の業務を他人の依頼を受けて行う場合、財務大臣から通関業の許可を受けなければなりません。

通関業務の流れ

通関業務のおおまかな流れは次のとおりです。

顧客(輸入者):通関依頼

CS担当者:輸入申告書類作成の依頼

通関従業者:輸入申告書類の作成

通関士:輸入申告申告書類の審査と申告

税関:審査、検査を行い輸入を許可する

通関営業所内での役割分担

CS担当者、通関従業者、通関士という三者が役割分担をして業務を行います。それぞれの役割について説明します。

CS担当者:カスタマー・サービス(Customer Service)担当者。顧客への情報提供や、顧客からの問い合わせ対応を行う者。会社によっては、通関営業所にはCS担当者がおらず、営業箇所に所属していることもあります。

顧客から受け取ったインボイス等の通関書類を、通関従業者へ渡して輸入申告書類の作成を依頼します。

実際の通関業務を行うのは通関従業者と通関士ですが、CS担当者が通関のことを何も知らなくてよいという訳ではありません。顧客からの問い合わせ対応を行うのも、通関に関する質問を顧客へ問いかけるのもCS担当者の役割です。基礎的な通関の知識を有していなければ、適切な問い合わせ対応ができません。
顧客からの基本的な質問に対しては自ら回答し、高度な判断が必要なときには通関従業者や通関士の助言を受けて回答します。


通関従業者:通関業者において通関業務を行うことができる者。税関と通関業会が合同で実施する通関従業者研修を受けて修了した後に、通関業者が税関長に対して届出(登録)を行った者。

通関がスムーズに進むかどうかのカギを握っているのは通関従業者と言っても過言ではありません。

税番(HSコード)の決定、課税価格や関税額の計算、他法令の該非確認を行う、など行わなければならないことはとても多いです。

一口に通関従業者と言っても、入社したばかりの方もいれば、経験20年以上のベテランの方もいて、知識やスキルにはかなりの差があります。通関書類を受け取ってから、税関へ申告できるような申告書類を完成されるまでに掛ける時間は、スキルによって大幅な差があります。

また、作成した申告書類に不備や誤りがあれば通関士から差し戻しされます。差し戻しされる頻度も、通関従業者のスキルによって差があります。


通関士:財務省が実施する通関士試験に合格した者で、かつ通関業者が税関長に対して通関士の登録を行った者。

通関従業者との違いは、輸入申告書や輸出申告書を審査することができるのは通関士のみである、という点です。通関業者が輸入申告や輸出申告を行う際には、必ず通関士が申告書の審査を行わなければなりません。

通関士は、とても大きな責任を負います。税関長から許可を得た通関業者の代表として、適切な申告を行わなければなりません。

仕事内容は、一言でいえば「粗探し」です。通関従業者が作成した申告書類に誤りや不備がないかを審査して、問題があれば差し戻します。
通関士は通関従業者よりも深い洞察力で細かい点まで審査をしなければなりません。ベテランの通関士は、通関関連の法律の知識はもしろん、貿易実務に関する幅広い知識も有しています。

そのため、形式上は不備がない書類でも、「この業種の会社がこのような製品を輸入するのはおかしくないか」とか、「この種類の製品でこの価格は低すぎるから、インボイスの金額に誤りがあったり、評価加算すべき金額があるのではないか」という疑問をもって、申告を保留することがあります。

差し戻された通関従業者が、「どうしてそんな細かいことを気にするんだろう・・・」という疑問を抱きつつCS担当者を通じて顧客に確認を取ると、通関士の指摘どおりで誤りが発覚した、ということが珍しくありません。

輸入者も、CS担当者も、通関従業者も気づかなかったことを通関士が気付いて、誤った申告をする前に訂正をする。これが通関士の役割が最大限に発揮されるときです。

通関士=通関従業者=CS担当者??

これまでに説明した通り、通関営業所にはCS担当者、通関従業者、通関士という三通りの役割の人がいます。それら三者は別々の人間であることが当然と思いきや、必ずしもそうではありません。

通関業者の規模や個別の通関営業所の規模によっては、一人の人間が二つ以上の役割を担うこともあります。

・CS担当者と通関従業者を兼務
・通関従業者と通関士を兼務
・CS担当者と通関従業者と通関士を兼務

上記のすべてがあり得ます。場合によっては、一人で顧客対応、申告書類作成、申告業務を行うこともあるのです。
一人の人間がこれらすべてを行っても、法的に問題はありません。顧客(輸入者)からすると、一人の担当者がすべて手配してくれる方が安心かもしれません。

ただ、適正な申告を行うという点から考えると、あまり好ましくないでしょう。CS担当者→通関従業者→通関士という三者の目を通すことで、通関書類の不備などに気付いて、誤った申告を防止するというチェック機能が働かないためです。

少なくとも、通関従業者(申告書類作成者)と通関士(申告する者)は原則分けるべきでしょう。通関業者の過失により誤った申告をしてしまうと、顧客(輸入者)に大きな迷惑が掛かりかねません。

通関業者として非常に重要な通関品質を高めるために、通関士が第三者として冷静な目で審査してから申告業務を行う必要があります。

※ただ、小規模な通関営業所で通関従業者と通関士の両方を置くことができないというケースも珍しくないのが現実です。その場合は、一人でも二重チェックを行う等の方法が行われていることでしょう。

まとめ

通関業者の通関営業所では、顧客対応をするCS担当者、通関書類の作成をする通関従業者、申告書類の審査を行う通関士という主に三つの役割の担当者がいます。

それぞれの担当者が役割分担をして、迅速かつ適切な通関業務を行っています。

なにかご不明な点や気になった点があれば、お気軽にお問い合わせください。



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