トップ画像

農業体験ができる農家民泊「戸隠 ここのえ」代表者 水谷 翔さん

農業に従事しながら農家民泊とオーガニックカフェを営み、さらに大学院では、遺伝学・分子生物学を学び、土壌微生物の菌叢解析に取り組んでいる水谷翔さんにお話を伺ってきました。

水谷翔さんプロフィール
出身地:三重県
居住地:長野県
経歴:大学卒業後、社員研修・コンサルティング系の企業に就職し、法人営業・企画を担当。その後、音(周波数)の仕事に携わる。
2016年7月に長野市地域おこし協力隊(戸隠地区)へ着任。標高が高い戸隠の環境・気候を生かし、高原花豆とエディブルフラワーを中心に栽培。
2018年9月に農家民泊・オーガニックカフェ「戸隠 ここのえ」をオープン。
現在、信州大学大学院総合理工学研究科に在籍し、土壌微生物の世界を探求。
ながの食品加工マイスター(同大学院「ながのブランド郷土食」認定資格)。土作りアドバイザー(土壌医検定認定資格)。
座右の銘:積小為大

「地球上の未開地を探索し、感動体験をシェアし合いたい」

Q1.水谷さんはどのような夢やビジョンをお持ちでしょうか?

水谷翔さん(以下、水谷 敬称略) 地球上の未開地を探索して感動体験を重ねたいです。ラテンアメリカやアフリカ、ロシア、北欧のような、生態系が豊かで特異的な地域がすごく好きなんです。

自然は人知を超えたパワーを持っていますよね。五感が刺激され、そこで得られたものを事業に取り入れたいと常々思っています。大事にしたいのは、感性とかインスピレーション。

昔、読書に没頭していた時期にシュリーマンやアムンゼンといった冒険家、フンボルトやウォレスのような植物学者と探検家の顔を持つ人物の生き方や情熱に心躍りました。古代遺跡の発掘調査にも憧れます。

それと、感動体験をシェアし合える志高い友人を、人種・国籍を超えて世界中でつくりたいです。これは昔から思っていますね。分野は違えども、波長が合う友人は人生を豊かにしてくれる存在です。

「彼はあんなにチャレンジしているから、自分も頑張ろう!」「今度会う時までに、ぶっ飛んだ土産話をつくっておこう!」、仕事をしていてよく考えます。ともに熱く語り合ったり、本気で何かをアクションする姿に刺激を受け合ったり、そういうことが人生を潤してくれますよね。

今は、やりたいこと、行きたいところが多すぎて不老長寿の薬が欲しいくらいです(笑)。でも時間は平等なので、質を高める必要があります。毎日を楽しくエネルギッシュに過ごすためには、健康な身体づくりがベースだと思っています。思考を司る脳も細胞ですし。

そのために、安心安全で栄養価の高い食材を自分達も摂取したく、農業に力を入れています。農業は、人間の歴史の中でも重要なトピックです。今では地球上のどこでも当たり前ですが、それを今一度、真剣に考え、捉えなおし、自分達の手で取り組むことが大切だと思っています。

「農と食を全身で体感できるリゾート施設を造りたい」

Q2.未開地の探索ですか、壮大ですね!それでは、その夢を実現するためにどんな目標を立てていますか?

水谷 未開地に行くだけではなくて、そこで得られたものを事業に取り入れたいので、そのためにも、農と食を全身で体感し、五感に響く施設を構想しています。今は民泊という切り口ですが、もっと大きなリゾートのような長期宿泊型施設にチャレンジしたい想いがあります。

多様性に富んだ生態系をベースとした土地に施設を造ることで、来ていただいた方々に感動や明日への活力を提供できると思っています。審美眼を養える要素も加えられたら最高ですね。

私の中では、人の感動と生態系は繋がっています。特に土壌内の多様性に注目すると面白く、根本を考えていくと、土から始まります。土の中の微生物の多様性が植物の多様性を生んで、その植物の多様性の恩恵を受けて人間が健康であったり、美味しいものを食べて感動が湧き起こってきますから。

それと以前、戸隠神社の役員の方から、「人は誰しも問題を抱えていますが、その問題一つ一つを解決しようとするよりも、もっと大きな新たなものを産み出すエネルギーでトライした方が、うまくいきますよ。」というお話を聞きました。古事記を読み解いていくとそう書いてあるようで、戸隠らしくて良いなと感じたのです。

そんな大きなエネルギーを生み出すには、自然の力を借りるのが一番ですよね。そのために土壌をよく観察することが大切だと思っています。


Q3.その目標に対して、現在はどのような活動指針を持って、どのような基本活動をしていますか?

水谷 たくさんありますね。土壌の重要性を認識し、今は大学院で微生物学・遺伝学の専門性が非常に高い先生からのご指導のもと、土壌をベースに生物多様性を学んでいます(次世代シーケンサーを使用した土壌微生物の菌叢解析等)。

次に、大学院で学んでいることを実践する形で、農業に従事しています。堆肥作り・育苗など、自分達の手で行います。自家採取し、種を次の世代につないでいます。

植物の古典遺伝学と言えば、メンデルの法則が有名ですが、これは農業をやっていると度々体感できます。非常にエキサイティングですよ。「あ!表現型が本当に次の代にも遺伝した」って。環境応答する遺伝子や共発現のメカニズムを知り、「この現象は一体どうしてだろうか?」と考えるのは、知的刺激に満ちています。アカデミックと現場の橋渡しのスタンスです。

農業では、よく「地力」が注目されます。その基盤は、実は土壌内の生物多様性ではないかと最近よく感じます。人間の手を加え、高度な自然環境を産み出し、維持できる方法が土壌ベースでわかれば、非常に面白いことだと思っています。土壌はまさにミクロコスモスというべき、生命現象の宝庫。宇宙空間の縮図のような印象があります。

また、敷地をふくめ、空間づくりに力を入れ、農家民泊やオーガニックカフェという形で自然を感じられる場所を提供しています。

食の面では、自然食とフレンチをベースとした料理講座に月1回東京まで通って、フレンチシェフの元で嫁さんと共に研鑽を積んでいます。

自らの健康に留意し、人とのつながりとご縁を大切にしています。情報発信に力を入れることで、ベクトルが似ていて、波長の合う方々との出会いも生まれています。

「言葉をこえた感動空間の創造を目指して

Q4.そもそも、このような夢やビジョンを持ったきっかけは何ですか?またそこには、どのような発見や出会いがありましたか?

水谷 農と食と言っているのは、家族が大病したことが理由にありますね。祖父も祖母も父も、家族がみんな健康被害で短命だったんです。

そういったことがあって農と食に意識を持つようになりました。思う存分、農業に従事でき、身体に良いものを食べたい気持ちと、昔から連綿と伝わる文化や工芸品に興味があり、戸隠に移住しました。

戸隠に来て3年経ちますが、農と食をベースとした空間創りが一層楽しくなってきました。人様が来て感動していただきたい気持ちが強まっています。

祖父母が農家をやっていましたので小さい頃からよくついて行って、農業の姿を見ていたんです。それで好きになったんだと思います。

もう一つ大きく影響しているのは人との出会いとご縁ですね。

10代後半から10年くらいの間、大勢のパワフルな人達とお会いする機会を得ました。起業家、事業家、篤農家、学者、科学者、芸術家、お坊さん、神主さん、社会活動家、職人、医師、セラピストなど、分野をこえて。

中でも、80歳を超えているのに、あり得ないぐらいパワフルで、まさに超人の方がいました。元々、その土地の名家出身で、誰もが知る著名な神社の縣主でした。それでいて、えらっそうぶる様子は一切なく、いつもお辞儀され、笑顔は無邪気な少年のようで、謙虚な姿勢を絶対に崩さない方でした。

人間というのは鍛えるとこんなレベルになるんだ、という衝撃を受けまして、その方が「食がすべての根本だ。いつか"食道”という本を書きたい」と教えてくれたのもありますね。

大正生まれで、戦前・戦中・戦後の激動の時代を生きて来られました。第三高等学校(現在の京都大学)がご出身で、先輩には日本の偉人として広く知られている朝永振一郎や江崎玲於奈もおり、学生時代に大いに刺激を受けたとおっしゃっていました。

私にとっては、真の日本人とも言うべきスケールの大きな人物、20代前半の若き日に出会えたのは、幸運中の幸運でした。

「人から人へと伝播する感性―育つ環境

Q5.祖父母の影響で農業を好きになったと話してくれましたが、その背景には何がありますか?

水谷 例えば、子どもの頃に筍(たけのこ)の成長にビックリした経験があります。
筍って1日でめちゃくちゃ成長するんですよ。しかも、アスファルトを貫通して生えてくるほどのパワーを持ちます。凄すぎますよね。

それを見た時に、周りの大人も感動していたんじゃないでしょうかね、祖父母や父親とか。自然に対する感性を持った大人に育てられていたということがキーポイントだと思います。
子どもに対する言葉がけであったり接し方であったり食べるものであったり。感性のベースは家庭環境だと思いますね。

特に祖母の感動していた姿は印象的ですね。こんなの採れたで、食べてみ、おいしいやろう、って。

こういう共体験を小さい頃に何度も重ねているので、農や食に対して、こういうの良いなぁって感性のままに心が作用するんじゃないでしょうか。

変化し続ける自然と共生する空間。感動がそこに毎日あります

Q6.最後の質問ですが、戸隠の暮らしはどうですか?

水谷 自然と共生している生活なので、365日毎日空間の顔が変わります。春にもなると、目視で分かるくらい植物って1日で随分と伸びます。日々動的に変化している空間なんです。

そこに身を置く生活ってすごく面白いですよ。毎日感動するポイントも微妙に変わってきますから。ここに来ていただいた方に感動してもらえたり、こういう暮らし方があるんだということを知っていただけるのが嬉しいです。

もし、今の暮らしに不安や不満や迷いをお持ちの方は、自然の変化を感じられるところに来てみると結構ヒントになるかもしれません。自然の中から得られるインスピレーションは無限です。その時々に、ふと心に浮かぶものが、暮らしを豊かにしてくれると感じています。

記者 インタビューは以上です。本日は貴重なお話をありがとうございました!

*********************
水谷さんに関する情報はこちら

・農家民泊 戸隠ここのえ https://togakushikokonoe.com/


【編集後記】
今回、インタビューをさせていただいた塚田です。
笑顔でワクワクしながら畑を案内してくれる水谷さんから、好きを仕事にすることの素晴らしさを教えてもらいました。
水谷さんの益々のご活躍を期待しております。


この記事は、リライズ・ニュースマガジン “美しい時代を創る人達” にも掲載されています。


この記事が気に入ったら、サポートをしてみませんか?気軽にクリエイターを支援できます。

80
長野市在住。一人ひとりの輝く才能を開花させ合う事で、最高のチームが創られます。個性を殺す組織ではなく、個性が活きる組織を長野市から創っていきます。

この記事が入っているマガジン

コメント1件

初めまして。いきなりのメッセージ失礼いたします。

私は、地方創生に取り組んでいる新チームのメンバーでして、
私たちは「フレッジ(https://fledge.jp )」というサイトを通して
「働く」を通じた地方創生をしています。
そのための仲間として、「地元を愛するアンバサダー」
https://fledge.jp/article/ambassador)という存在を日本全国で探しています。
フレッジでは今後アンバサダーの方達と協力して、
「移住」、「働く」を軸としたコラムやインタビュー記事をあげていきます。

つかっちゃん 様のnoteでの記事を拝見し、ぜひ「移住」、「地元、地方で働く」に関する記事を弊社フレッジに掲載していただきたく連絡させていただきました。
ぜひ記事連載などに関してお話しできればと思います。

通話、オンライン通話、メールなんでも対応可能です。
よろしければフレッジについての資料も送らせていただきたいと思います。
ご連絡お待ちしております。
コメントを投稿するには、 ログイン または 会員登録 をする必要があります。