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勇気がないものはツマラナイ

たくさんの人を味方につけないと番組というのはスタートできないとなっている。だから企画書を書く。審査される。チェックされる。意見を言われる。修正させられる。そして、面白くならずにつまらなくなる。

欽ちゃんと週に一回、配信番組をやっている。欽ちゃんが最後に浅草軽演劇の「動きの笑い」のテクニックを身につけさせた7人組を作りたいと始めたものだが、今はその最初のコンセプトさえも変わっている。
やりながら変わっていくのだ。変わっていかなくてはならないと思っている。だから欽ちゃんの番組には昔から企画書がない。
『欽ちゃんがやります』
これが企画書になった。そうしてやりながら作っていって結局それらが30%番組3本になり『100%男』と呼ばれるようになった。

僕ら凡人は企画書を書かないと番組をやらせてもらえない。
初回は結構企画書通りかもしれない。
でも番組は始まってからが勝負だ。
頭の中で思った通りにことは進まない。
面白いと思ったことが面白くなく、意外なところが面白くなる。
出演者の予想もしなかった表情がチャーミングだったりする。
ゲストが番組の中で意外な力を発揮して毎回出てもらうようになったりする。ロケしたビデオや放送されている四角い画面の中にヒントがある。
何がダメで何がタルクて何がつまらないのか?そのことを見つけようと画面を凝視しているかいないか?
実は多くのテレビマンがこのことをやっていない。四角い画面の端の端まで目を凝らす。そこにもっと面白くなる次の展開のヒントがある。

僕の師匠である欽ちゃんもテリー伊藤もこのことを徹底的にやっていた。
勝俣州和たちでCHAーCHAというグループを作った。人気がで始めた時にわざと番組の中の露出を抑えた。「もっと見たい!」というファンの気持ちを引っ張り出した。
元気が出るテレビは最初はコント番組だった。初回の放送をやって伊藤さんは「自分に向いていない」と感じたらしい。(随分後のインタビューで知った)それですぐにロケバラエティ番組になり「荒川区熊野前商店街復興計画」を始めた。アドバイザーとしてきてもらったCMディレクターの川崎徹さんが妙に可笑しかった。一回だけの予定がレギュラーになった。いつ間にか「カッパの捜索」にも行っていた。
そんな風に番組は企画から自由になった時に生き生きとしはじめ、見ている人との一体感の中で成長と変化の過程が番組なのであると教えられた。(いや教えてくれたわけではない。僕が勝手にそう解釈した。そのやり方を会得した。修行によって身につけた)

だから「電波少年」も最初からアポ無しじゃなかった。ロケの前日にOKをもらっていた取材先から断られた。「ええい行っちゃえ」で1日張り込んだら会えた。松本明子が不安から涙を流した。そうしてアポなしが生まれた。
電波少年が有名になりすぎて国内ではアポ無しにならなくなってきた。それで「猿岩石ユーラシア大陸ヒッチハイク」が生まれた。
「旅するから面白い」と言われた。「部屋の中でも旅はできる」と反発して「なすびの懸賞生活」は生まれた。などなどなど。

毎週放送している番組の中で感じる違和感こそが次へのヒントだ。そしてそれは感じることは様々だ。だから「誰か」の感じたことで番組は変わっていく。それが番組の個性になる。面白い番組とはこの個性=総合演出か誰かの感じたこと、がはっきりと出ている番組のことだ。それは間違いなく最初に書かれた企画書とはかけ離れたものだ。

今また欽ちゃんと毎週「欽ちゃん公開オーディション」を木曜日の20時〜配信している。最初に言ったように最初のコンセプトからどんどん離れている。来週はどうなるのかわからない。それこそが楽しい。それしか楽しくない。考えた通りに番組ができて何が面白いのか?それは怠惰の証明なのではないか?79歳の欽ちゃんが出会った人、出会った一言で番組を変えていくという姿勢、勇気をキープしていることに大きな安心を感じる。
ああ僕のこのやり方で行っていいのですね、と。
効率は悪いです。経済的合理性もない。周りはふり回される。
でもやっていてワクワクする。

そうしたって企画書は書かなくてはならない。番組を作るというスタートラインに立たなくてはならないから。
本当は「あなたが作るものだったらいくらでも好きな枠とお金を出しますよ」となりたいがまだまだそこには至っていないから。

でも本当の勝負は現場が始まってから。そこで思いもよらないトラブルやハプニングが起きた時に本当の面白さが始まる。

番組は勇気だ。勇気のないものはツマラナイ。

欽ちゃん公開オーディション
https://kinchan.peatix.com

土屋Ptotomonitsukuru「世界向け番組企画ゼミ」まちの大学(募集終了)
https://machinocircle07.peatix.com

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