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キャラクターもの・ビニール素材・プラスチック製品

確か私が幼稚園に入る前、アニメのキャラクターが印刷されたキューキューなるサンダルのような靴をみんな履いていて、母はそれが死ぬほど嫌いだった。「何あの趣味の悪いビニールのうるさい靴?!」と怒っていた。この人は、キャラクターはもちろん、ビニールやプラスチック素材までも大嫌いだった。

なので、キャラクターが描いてあるビニール製のプールバッグなど言語道断! 幼稚園の時、一瞬だけキティちゃんのプールバッグを持っていたことがある。母の意思で買うはずはないので、貰い物か何かだったはずだ。それほど嫌っていた。だからそのプールバッグが劣化で破れた時、「ほらね!こういうのはすぐダメになるのよ!だから、やっぱりお母さんが作った方が良いの」と言われた。

ということで、その後、私はずっと、母お手製の撥水加工された布製プールバッグを持たされていた。私は水泳を習っていたので一年中プールバッグを使っていたのだが、私のようにお手製のプールバッグを持っている人なんて見たことがない。低学年の時はナップサック式。高学年になるとトート型だった。薄いピンクベージュと白の水玉模様の撥水生地で作られたそれらのプールバッグは、今思えば決してダサいものではなかった。むしろ素敵だった。それでも、キャラクターのついたプールバッグを持つ皆の中で、たった一人だけ全く別物のバッグを持つ違和感! 私も皆と同じようにビニールのプールバッグが欲しかった。

だから低学年のころに、ビニール素材でラメ入りのキラキラしたサンダルが流行って、みんなが一斉に色違いをお揃いで履いていた時だって、私だけは本革のキャメル色のサンダルを履かされていた。子供からしたら茶系の靴なんておばさんくさいし、全く可愛くなかった。デパートで買った良いサンダルだったけど、そういう価値は子供にはわからない。私も近所の商店街にある、雑多な靴屋で売っているような、キラキラサンダルが欲しかった。

ある時、学校で縄跳びが必要になった。あのころ、ちょうど蛍光色が流行っていて、縄跳びも色々な蛍光色の物が売っていた。学校で必要な物なので、絶対に買ってもらえるはず。どの色を選ぼうかと楽しみにしていたら、母は、あんなビニールの縄跳びは良くないと言い出した。そしてどこで見つけたのか、本物の縄の縄跳びを買ってきたのだ。まさに“縄“跳び。信じられる?! そんな子供、私の他に見たことがない。これには、私も相当のダメージをくらった。みんなキラキラした可愛い縄跳びなのに、私だけ縄だった時の絶望。

高学年になると、学校でお裁縫箱が必要となる。当時はキャラクターのついた大きなプラスチックの箱だった。ほぼ全員がそれらを買うのに、母はキレ散らかして、「あんな悪趣味な裁縫箱を買うような人は裁縫ができない人たちだけだ!」とか言っていた。私は、もちろん買ってもらえなかった。母の“素敵な”箱や缶のコレクションで作ったお手製の裁縫箱とお手製の布ケースを持たされた。

お裁縫箱に関しては、クラスでもう一人だけプラ箱を買ってもらえていない子がいた。彼女の母親もまた、洋裁がとてもできる人で、真面目で堅実で厳しい方だった。だから私たちは、お互いの裁縫箱を見たとき、やっぱりそうだよね、という雰囲気になった。私たちは結構仲良しで、実は今でも連絡を取り合う仲なのだが、当時お互いの家の状況を理解しつつも、二人で愚痴を言うことはなかった。私も彼女も家の話を口にして、これ以上惨めな気持ちになるのは耐えられなかったのだと思う。

母は、私の希望や心情なんて、全くお構いなしだった。皆と違うことが恥ずかしいなどと言おうものなら、カンカンに怒った。「あんな変なモノを子供に持たせる方が恥ずかしい!」とか言う人だった。「あなたは皆より、よっぽど上質で良い物を持っているのよ!」と。この人には何を言っても、何をお願いしても無駄だった。自分の『好き』以外は、絶対に許さない人なのだから。

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