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ちゃんとしたお店に写真をパクられて

 インスタグラムのストーリーを捲っていると、どこか見覚えのある写真が現れた。開けたレストランの店内に差し込む日の光が美しいけれど、歪曲収差が気になる一枚。フィルターによってコントラストが強調されているだけで、それは紛れもなく私が撮影したものだった。オリジナルは自分のアカウントに投稿してある。(上の写真ではありません。)

 この写真に朝食メニューの紹介文を添えて、ストーリーを投稿したのは気鋭のレストランだ。メニューはコースのみで、完全予約制のいわば「ちゃんとした」お店。まだ開業してからそれほど経っていないにも関わらず、雑誌などに取り上げられることも多く、大変な人気を博している。私にとってもお気に入りの一軒。写真はそこで撮影したものだった。

 写真を生業にしているわけではない私は、もし依頼が有ればそれを喜んで無償提供しただろう。でも無断でとなると、やはり良い気はしない。クレジット表記という意味での提供者のアカウント名も入っていない。第三者からすれば、私が拝借したと思われる可能性だってあるだろう。しかし何より、料理というクリエイティブな世界に生きる方々が、例え素人のものだったとしても、写真というクリエイティブを雑に扱っていることを残念に感じた。

 だから、その旨を連絡させていただいた。メッセージを送って、数分後には丁寧なお詫びが返ってきた。そして投稿は削除された。これで良かったのだと思う。

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 著作権で保護されないレシピが、これだけ豊かな食文化を作り上げたという考えもある。衣食住として、同じく生活に欠かせないファッションの世界では常に模倣が話題となっていることに比べて、この寛容さは面白い。もしかすると、それが仇となって、今回のことが起きたのかもしれない。

 もちろん無断利用と模倣は区別されるものだけれど、営利の外ではともに気持ちの問題に帰結する。使う側の意識と、使われる側の感情。それは法律よりも難しい。解決策のヒントは「ちゃんとする」ことにあるような気がする。

つながりと隔たりをテーマとした拙著『さよならセキュリティ』では、「6章 噂と真実 情報の確からしさ」において、模倣や著作権について触れております。是非、お手にとっていただけますと幸いです。

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