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男同士の契り

五歳息子、インフルエンザ予防接種二回目。
一回目はママ、今日はパパと打つ作戦。
お互い相手の番は隣で励まそうとグータッチ。

直前、男の子が大号泣で出てくるのを目撃し、気丈な気持ちが揺らぐ。
「怖いよ……」
全意識が注射に。――見るなっ。
「絶対痛い絶対……ほらやっぱり痛いっ!」

涙腺崩壊。久しぶりに泣きじゃくる息子を見た。
涙止まらず、見かねた優しい女医さんが声を掛けてくれる。
「ほら次パパやるよ。パパも痛いかなあ~」
すると、息子は何かを思いだし突然、

「パパだんがれ! パパだんばれ!」

痛い腕を振りながら、鼻水と涙を駄々洩れさせての応援。
男同士の約束! ……パパ忘れてた。

――ありがとう、今までで一番痛くなかったよ。
「パパは強いから。僕は痛かった……」

いや、あそこで応援を覚えていたお前の気持ちのが強いよ。
やがて笑顔になり、病院を出る頃には誇らしげ。
「俺たち、頑張ったな」
外はすっかり夜。
さ、帰ろ。


息白し

予防接種終わり俺等の息白し

(よぼうせっしゅおわりおれらのいきしろし)

季語(三冬): 息白し、白息(しらいき)


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