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変わったのは味か、店か、それとも……

近隣に出来たと聞いて一人訪れた。
我が青春の味「天下一品」。

最後に食べたのは、演劇サークルの同窓会に出た十年前。
仲間たちと「こってりは重いかな」と言いつつ完食した。
今回はどうだろう?

言わずと知れたドロドロスープ。
苦手な人は駄目らしいが、私はこれが大好き。
演劇学生の頃に出会い、虜になった。
「劇団はラーメン屋。当たり障りのない味で世に出れようか」
世の中を知らず、我こそ演劇界の「天下一品」とイキっていた時代……恥。

よく見ると、思い出とは違う店内。
家族連れも多く、清潔感に溢れもはや床は滑らない。
かの学生街の店に思いを馳せ、いただく。
変わらぬ味。無我夢中で完食。美味かった。だけど――

店を出ると雨が降り出していた。
駅までの道を自問自答して歩く。……何かが違う。何?
味に慣れてしまったから。
他の個性的ラーメンを知ってしまったから。
色々こじ付けてみたけれど、答えは出ていた。
自分が何かを失ったんだって。


秋雨や嘗てハマったラーメン屋

(あきさめやかつてはまったらーめんや)

季語(三秋): 秋の雨、秋雨、秋霖(しうりん)、秋黴雨(あきついり)


※今調べて分かった。我が思い出の早稲田通りの「天下一品」は四年前に閉店していた。


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