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『失恋履歴書』 #ショートショートnote杯

小学校時代から使う机。
鍵のある一番上の抽斗ひきだしには、幸子の秘密が入っている。
履歴書。
小学6年の時に、大人ぶって購入した普通のもの。
写真にプリクラを貼って名前・連絡先を書き入れたところで筆が止まった。
次に書く学歴がない。もちろん職歴も。
幸子は思いついて、ある人の名を書いた。
顔が真っ赤になり、そのまま抽斗に入れ鍵をかけた。

二ヶ月後、幸子は履歴書の存在を思いだし再び取り出した。
名前の横に「卒業」と文字を添えた。
幸子は面白くなって破らずに保管した。それがはじまり。

以来、始まりと同時に履歴書に名前を書き、終わると「卒業」した。
現在、社会人八年目。
履歴書には六人の名が記され、その全てに「卒業」の文字が付いた。

ただ最後の一人には「再入社」の文字が。
幸子は今それを眺めながら、次に記す相応しい文字がないか思案していた。
はっと思い立ち、「永久就職」と書き入れ、また抽斗に仕舞った。


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