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ははははははとはを見せて――

「ぜ~んぜん大丈夫。痛くない」
呪文のように何度だって唱えてみせる。
おおきく、やさしく、明るい声で。

日曜、公園の帰り際、四歳息子は根っこに躓き派手に転んだ。
膝小僧を擦りむき、血が流れ出る。最近の中で一番の怪我。

泣いた。泣き喚いた。
心配した友だちも、私のことも寄せ付けない。
「ママ! ママ! 痛い!」

ママに痛みを訴え続ける。
帰ってから。次の朝。保育園に行くとき。保育園から帰ってからも。
「歩けない。トイレ抱っこ。お風呂やだ」

傷の無事と甘えを見切ったママは一貫して自立を促す。
おおきく、やさしく、明るい声で。
「大丈夫。歩ける。痛くない」

こっちはその喚き声にイラっとまでしちゃうのに。
なんて素敵なお母さんに、このひとは成長してるんだろう。
「ママ、抱っこお」
私も試しに甘えてみる無視される。

怪我をした公園出口の一角にあったひまわり畑。
そのおおきく、明るい花の黄色が、重なって見える。


ひまわり

向日葵や子の怪我笑ひ飛ばす母

(ひまわりやこのけがわらいとばすはは)

【季語(夏): 向日葵、日車、日輪草、天蓋花】

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