400文字と十七音 2021

337

男同士の契り

五歳息子、インフルエンザ予防接種二回目。 一回目はママ、今日はパパと打つ作戦。 お互い相手の番は隣で励まそうとグータッチ。 直前、男の子が大号泣で出てくるのを目撃し、気丈な気持ちが揺らぐ。 「怖いよ……」 全意識が注射に。――見るなっ。 「絶対痛い絶対……ほらやっぱり痛いっ!」 涙腺崩壊。久しぶりに泣きじゃくる息子を見た。 涙止まらず、見かねた優しい女医さんが声を掛けてくれる。 「ほら次パパやるよ。パパも痛いかなあ~」 すると、息子は何かを思いだし突然、 「パパだんがれ

スキ
11

おもいで行き機関車両

東武博物館を訪れる。 浅草~鬼怒川等を走る東武鉄道の歴史を展示する場所。 「大宮の鉄博にまた行きたい」と叫ぶ五歳息子への前哨戦。 「こんなとこあったんだ」と言うが、実は前にも一度来てるんだよ。 一歳くらいか。私も退院後でうまく歩行ができず、お互い館内をよちよち歩いたのでよく覚えてる。 中庭にある昔の特急車両を気に入って何度も運転手の真似をしていたね。 今はドアが閉鎖され外観しか拝めない状態。 思いだせるかと期待していたから少し残念。 逆にとある座席のセットに、私が過去を思

スキ
71

受け取れなかったサプライズ

妻の誕生日プレゼントは、手作りの写真ボード。 あとは五歳息子が「いつもありがとう」と書き入れれば完成。 も、秘密作戦に息子は興奮。「ママ、目つぶっててね」とバレバレ。 でもこれは計算内。ふふふ。 真のサプライズはこの午前中に届く予定の、花束。 「いい天気だから買い出ししてくる」 まさかの言葉にこちらが驚く。 うろたえたら台無し。冷静に妻子を見送った。 今日に限って遅れない宅配を私が受け取り、プランBへ。 一旦隠しておいてボードと渡すことにしよう。ふふ。 帰宅し台所に立っ

スキ
82

そして母は帰っていった。

無言でお茶をすする。 昨日のこと(七五三撮影)を筆頭に、五歳息子の成長、私の病気、妻のやさしさ……大方語り尽くしてしまった。 既に妻子は仕事と保育園に。 今朝はわが家に宿泊した母と二人きり。 何喋る? 俳句の面白さについて語ってもな。 太極拳の楽しさ語られても返せなかったし。 「昨日はほんと良かったわねえ」 無限ループに居たたまれず「仕事のメール見てくる」と部屋に入った。 ほどなく母が声をかけてくる。「そろそろ」 ――いやまだ電車も混んでるよ。「でも早めに」 送っていく

スキ
77

五歳の誕生日に、家族写真を撮る。

息子五歳の誕生日は、絶好の天気。 保育園をお休みし、実家の母、義父母らと七五三の写真撮影へ。 新婚当時住んでいた町の、一軒家の写真スタジオ。 先ずは和装にて館内セットで撮っていく。 緊張の息子も、アットホームな雰囲気や気さくな女性カメラマンに心を開き、笑顔が増えていく。 洋装に着替え、屋外セットに実物のクラシックカーを見つけると一気にスイッチオン。自らポーズを提案し表情をワンカットごとに変化させるまで。 前日、マイケルジャクソンのステージングを見て(←え?) 練習した成果

スキ
82

母が泊まりに来る

大雨の午前中、新調した毛布とシーツが届いた。 明日の七五三撮影で上京してくる母用のもの。 母が私の家に泊まるなんて初めてじゃなかろうか。 学生時代や独身時代は、招くどころか私が実家に帰るのも十年の間に三回あったかどうか。 所帯を持ってからは一度だけ、新居のアパートに父と日帰りでお招きした。 今の家には……そう、長期入院中の帰宅リハビリに付き添って来てくれた。あの時、一緒に選んだベッドに母を迎える不思議。 (※現在の私は自力で寝起きができ、睡眠時の酸素供給も必要なく、家族と共

スキ
103

断れない、誘い文句。

午後十時。 「寝る時間」「まだ遊ぶ」 いつもの言い争い。 と、「パパがいいって言ったらいいよ」 まさかの展開。憎まれ役になる覚悟で待つ。 息子がきて「一緒に遊びたい」と殊勝な声。 駄目……と言いかけ言葉を飲んだ。 将棋盤を抱えてる。なにそれ?  「将棋やりたい。五歳になるから」 常々、誘っていた。 かの藤井聡太竜王は五歳で将棋を始めた。 じゃあ、うちは四歳から。 勝手な都合はもちろん拒否。 周り将棋を一度やったきり埃を被った。 それが……なんというタイミングで言うんだ、

スキ
84

11月の十七音(俳句)まとめと雑感

[ 十一月の俳句一覧 ] 日々のよしなしごとに付箋を貼って、日記のように俳句を作っています。 ⇒ 日付をクリックするとその当該エピソード(400文字)が開きます。 1日 肋骨を夜なべして縫ふハロウィーン 2日 朝霧へ路肩の線を綱渡り 3日 冬支度ずささと千切るカレンダー 4日 文化の日父の遺せしSuicaにて 5日 印鑑の朱肉くつきり冬隣 6日 母の鳴くポンチーカンに逝く秋ぞ 7日 怒声飛ぶレジに置かれたままの栗 8日 立冬の庭にスコップ朝日浴ぶ 9日 湯気立ててトランプ手

スキ
70

落語版『笑の大学』

落語は聞きますか? 寄席に行かれます? 眠れない夜、YouTubeで古典を聴くとコロッと寝れますよ。← 落語家・柳家さん生。 師匠の新作づくりをよくお手伝いさせてもらった。 お宅に伺い膝をつき合わせての作業。 私が台本を書き、師匠が目の前で諳んじる。 役者の台詞覚えとは違う、自分の中に物語を落とし込む姿が新鮮だった。 一度「噺」として入れば自由自在。30分を5分に縮めて話すこともできる。なかなか入らなかったけれども。 「『笑の大学』を落語にしたいんです」 ある日、師匠か

スキ
82

妻には秘密の行動

四歳息子をじじに預け、夫婦で買い出しへ。 妻がスーパーへ行く段になって「珈琲飲んでる」と別行動に出た。 今週半ば、息子五歳の二日後が妻の誕生日。 自分の時、手作りの「家族写真パネル」をもらって嬉しかった。 その妻バージョンを作りたい。 ――ケータイ貸しといて。ネット見たいから。 ガラケーしか持たぬ私。 家族写真は妻のスマホの中にある。 それをさりげなくゲットした。 セルフプリントコーナーに急ぐも、これが曲者。 セルフだと逆に手こずってしまうおじさん。 どうにかスマホをつ

スキ
87