NERVE/ナーヴ 世界で一番危険なゲーム(2016年/アメリカ) ネタバレあり感想 命を賭けて自己顕示!
※2019/5/24に『趣味と向き合う日々』で投稿した感想記事の加筆修正版です。
SNSの仕組みやそれにのめり込む人をせいいっぱいデスゲームで風刺したような映画。
『ナーヴ 世界で一番危険なゲーム』
(NERVE)
以下、ネタバレを含む感想記事です。
■ストーリー
ダークウェブ上で展開される闇のゲームに参加してしまった女の子が、ゲームへの挑戦を通じて彼氏を作ったり親友と仲違いしたり命を落としかけたりする。
■感想
ダークウェブ、簡単に言えばサーチエンジンには引っかからず、特定の層のみ閲覧できる極めて閉じた形態のウェブサイトです。
本作はそんなダークウェブ上で若者を中心に人気を博すナーヴという危険なゲームに、男に振られて何もかも嫌になってしまった女の子が挑戦するという映画。
ダークウェブというものを取り扱った理由として、大人達と隔絶した世界で子供たちが危険な事をするという状況を一番分かりやすく描けるからだと思います。
主人公の女の子ヴィーは現実世界での出来事での反動から、ネット上で若者の間で悪流行りしているゲームに参戦します。
プレイヤーは視聴者の数に敏感で、視聴者たちの期待に応えたい、或いは視聴者を逃したくないという心理からより危険なミッションに挑戦していきます。自己顕示欲が止まらない。
ミッションをクリアする事で報酬は得られますが、それはプレイヤーにとっておまけのような扱いにすらなっていました。
多数のプレイヤーが視聴者数と脚光を如何に浴びるかだけを考えてるように見える一方、主人公のヴィーは中盤以降わりとゲームに対しては冷静な視点を持っているように描かれるのが面白いです。
こういう構造の中で、視聴者、挑戦者のほかに第三のカテゴリー、即ち優勝するまで永遠にナーヴに挑戦し続けなければならない囚人というカテゴリーが登場します。
ヴィーちゃんの彼氏みたいになる男イアンが実は囚人だと発覚するわけですが、この囚人というカテゴリーは物語上かなり重要だと思います。
ナーヴというゲームがどのような目的で開催されているのかは劇中で明かされません。
若者を金で釣って危険なゲームに参加させ、そのゲームの虜なる様を眺めるという悪趣味で空虚な遊びで、要は視聴者からすれば暇つぶしです。
個人的にはナーヴは単なる行き過ぎた暇つぶしなんだと思います。
そういう軽さが逆に怖いというかリアルですし。
そんな誰かの暇つぶしの為にいつ何時命を落とすかも分からない状況に身を置かざるを得ない囚人のイアン。
だからこそ彼の必死さにリアリティが生まれているんですよね。
他のプレイヤーと違って、絶対に逃げられない状況ですからね。
暇つぶしの為に命すら危うい状況に陥るゲームを作り上げる、というのは一見狂気じみていますが、よく考えてみたら現実の世界でも散見されますよね。
現実と地続きのはずのネットせかいですが、実体感を覚え辛いからこその軽さ、そういう怖さを良く描いている映画だと思います。
つまりこの映画はネットとリアルは別だという錯覚によって引き起こされる問題を描いた作品なんだと思います。
インターネット上でのコミュニケーションにおける秘匿性、匿名性、或いはアカウント名という名の架空の個人、実体が曖昧になるシステムが組み合わさる事で、ネット社会という別の世界がある、という錯覚が起こるんだと僕は考えてます。
ヴィーやイアンはこのゲームがもたらす結果が最悪なものである事を理解し、ナーヴを崩壊させるために策を打ちます。
それが、ゲームの視聴者(おそらくプレイヤーも)達の匿名性を破壊し、参加者たちの持つ端末に本名を表示するようにプログラムを改変するというもの。
これに合わせてヴィーが殺される演技をします。
ネットの世界という別世界での出来事では無く、現実の世界での出来事であるという事実を参加者に認識させることで、いわゆる罪悪感や現実感を覚えた参加者たちは冷静さを取り戻し、奇妙な熱狂の渦は一瞬で消滅します。
どうやってゲームを崩壊させるのかが後半で結構キモになるポイントだったんですが、このやり口は面白いと思います。
ヴィーの友人がクラッキングしているシーンなんかが結構頻繁に移されるので、何かしらのプログラム改変でプログラムベースでゲームを破壊するのかと思いきや、まさかの人間の良心に訴えかける系の落とし方。
ナーヴは崩壊し、ヴィーとイアンもついでに結ばれてハッピーエンド、かと思いきやラストカットで、二人を何者かがスマホで撮影しているシーンでエンドロール。
この真オチも好きですね。
ナーヴというゲームは消滅したのもの、結局ネット社会の根本的な問題解決は全くできていないよ!という事なんでしょうね。
いずれ第二、第三のナーヴが現れるという事への暗示でもあると思います。
この映画で描かれる内容って現代人にとっては実はかなり身近な話だと思います。
■〆
個人評価:★★★☆☆
決してフィクションと言い切れない奇妙なリアリティに包まれた映画です。
ネット社会の闇とかそういう事では無く、ネット社会も現実社会も地続きなんだよ、っていう話なんだと思います。
面白いですよ。
ではまた。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?