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スプライス(2009/フランス・カナダ)感想 好き勝手やって被害者ヅラする人間さんサイドが悪いよ。


みんな狂ってる!


〘スプライス〙

(SPLICE)

スプライス映画ポス

以下、一部にネタバレを含む感想記事です。


■ストーリー

超大手製薬会社に勤める男女が社から課された新薬開発ミッション、しかしこれを建前に二人は新たな生命体を創生しエゴに狂う。


■内容

人間が全く新しい生命体を生み出してしまうという冒涜まみれな出来事をベースに描かれる醜さ満載満点なヒューマンドラマが特徴的な映画。

現代と相違ない世界を舞台に、いきすぎた科学技術の暴走で生まれた存在に対して、あまりにも独善的で幼稚な人間性を見せつけていくというトリッキーすぎる展開がストーリーの中核を成す点が独特でした。

最初から最後まで「なんでそんな事になるの???」という展開とシチュエーションが続く為、観る人の好みやある種の耐性次第で、物凄く嫌悪感を覚える映画になる気がします。


■感想(ネタバレあり)

主役となる科学者夫婦(カップル?)のエルサとクライブ、この二人が生み出したドレンという様々な既存生物のキメラ人間との交流が主に描かれていく映画でした。

当所エルサは幼体ドレンを我が娘のようにかわいがり、クライブはその禁忌を受け入れられず処分する事を考えていますが、ドレンが成長するにつれてエルサのドレンに対する"教育"は自己満足へ変貌し、逆にクライブはドレンを人間として受け入れていくシフトチェンジが起こるのが面白いです。

自分達が生み出してしまった全く新しい存在を自分達の子として育てる、という部分を濃く描いていたら或いはもう少し別の魅力が詰まった映画になっていたかもしれません。


しかしこの映画は違いました。

中盤以降のエルサのドレンに対する接し方は完全に支配と抑圧そのもので、そこに蠢く自己満足の感情をエルサは子に対する愛情と誤認している節が多々見られます。これが本当に心の底から胸糞の悪いものばかりで、よくもこんな人の醜い部分を大々的に描いたものだと感心すら覚えます。


そもそもエルサの身勝手な行動によって生み出されたドレン。

エルサはクライブの忠告も何もかも無視してドレンを育て始め勝手にどんどん事を好きに進めている極めて自己中心的なキャラクターです。

そんなエルサが猫と仲良くなったドレンから猫を取り上げ「もう大人でしょ」とか「我慢を覚えなさい」とか言ってるんですよ。こいつこれで正気ってマジ?

また、年齢的に反抗期っぽいドレンから反抗されたエルサは、罰を与えようとでも思ったのかドレンの尻尾を切断する理性の無さを露呈させる始末。クライブとの間に実の子が生まれなくて本当に良かったと思いましたよね。

そんなあまりにも狂った母親気取りの家庭内独裁者エルサ、こいつは必ず殺されると、みんなそう思ったはずなんだよ。


一方のクライブ、最初こそドレンに対して自分達の子というより不慮の事故とエルサの身勝手によって生み出された実験動物的な視線を向けていたものの、ドレンの成長を見守るにつれ優しいパパとしての才能を開花。

次第にドレンもクライブに懐くようになり、これがまたエルサの謎の嫉妬心をかきたてていたのかもわかりませんが、とにかく中盤辺りまでクライブの存在はドレンにとってのある種の救いのような存在でもありました。


そんなクライブとドレンが突然セックスする悪夢のようなイベントと、ドロっとした安い恋愛劇よろしくその場に偶然居合わせるエルサという、目も当てられない展開になるなんて僕の知能で予測する事ができるはずがありませんでした。狂ってるよこの映画。

かと思いきや終盤ではドレンの性別が変化し男性型になり、エルサをレイプするという、どんな脚本会議を経て辿り着いたのか全く分からない未知の展開が待ち受けてますし。これはセックスと冒涜の映画だよ。

親と子の物語という安定感のあるルートを嫌ったにしてもやりすぎでしょ。


そんな狂いに狂った映画なんですが、ドレンの成長は僕たち視聴者も一緒に追っていくわけで、最初は不気味な人間っぽい何かにしか感じないドレンに対して中盤辺りになると物凄く愛着が湧く点は中々面白い作りだと思います。

挙動というか仕草というか、無邪気な女の子っぽさをめいっぱい詰め込んだようなキャラクター造形がされていて、とても不思議な気持ちで彼女を見守る事になります。


結局そんなドレンも突然のTSでレイプマンの化け物に変貌してしまうんですけどね。


ちなみにクライブと巻き込まれた弟は死亡、エルサはドレンの子を妊娠して最後に謎にかっこつけて終幕。どんな気持ちになれっていうの。

狂いを受け入れる楽しみ方をしないとこの映画を楽しむのは難しい。


■〆

個人評価:★★★☆☆

少なくともオススメの映画を聞かれてこの映画の名前を挙げる事はこの先一生無いとは思うんですが、不思議と印象に残る映画でもありました。

そこはやっぱりあの"CUBE"を生み出したヴィンチェンゾ・ナタリ監督の手腕の賜物なのかもしれません。

人の身勝手で生み出されてしまった新たな生命体と、親代わりを務めようとして失敗した二人の男女の物語という独創性がやっぱりフックとして大きいのかもしれません。

鬱映画、と言うほどでも無いですがある程度の胸糞要素がある為、決して気軽に楽しめるタイプの映画では無いですが、ちょっと突飛な映画が見たいって気分のときには案外マッチするかもしれません。


ではまた。


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