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信頼の組織論/心理的安全性の高め方を数式化して紐解いてみた

みなさま、こんにちは、こんばんは、
KIRINJI CEOの早瀬です。

KIRINJIでは、スタートアップの会社様向けに、
コーポレート立上げや、新会社設立、新規事業立上げといった、
ゼロイチフェーズをハンズオンで支援しています。

この1年くらい、リモートワークの浸透や、働き方の多様化とあわせて、
働く上で「心理的安全性が大事だ」と多くの方が仰るようになりました。

もちろん私も非常に同意しております。心の平穏って何よりも大事。
「心理的安全性」という言葉が抽象的なままに一人歩きしてそうだな、、、
とも思っております。

そこで、今回は心理的安全性を具体的に理解し、実践していくために、
まずは心理的安全性を数式化してみよう!という趣旨のnoteとなります。

■ 結論/心理的安全性を数式的に表現すると…

心理的安全性の大きさはどう決まるのでしょうか。
以下のように数式化しました。

ただこれは完成形ではありません。
「信頼」という言葉は、非常に曖昧で、多面的な意味を持ちします。
もう一段階噛み砕きたいと思います。

そこで、山岸俊男さんの著書の言葉に、置き換えてみました。

山岸俊男「安心社会から信頼社会へー日本型システムの行方(1999)」を参考に作成

「会社の意図に対する期待」と「社会的不確実性」の差が、
心理的安全性の大きさとなります。
それぞれの言葉の意味は以下です。

山岸俊男「安心社会から信頼社会へー日本型システムの行方(1999)」を参考に作成

この言葉を正確に理解できれば、これまでよりずっと心理的安全性について
理解が深まると考えています。

心理的安全性という概念を初めて提唱したエドモンドソン教授は、

「心理的安全性とは、
 対人関係のリスクを取っても安全だと信じられる職場環境のこと」

と定義しています。
つまり、「リターン>対人リスク」だと信じられる状況を、
心理的安全性が高いと仰ってるんですね。

このリターンと対人リスクを理解するための言葉が、
意図に対する期待と、社会的不確実性だと私は考えています。

□ 「会社の意図に対する期待」を理解するために

「会社の意図に対する期待」を理解するためには、
私たちが普段使っている「信頼」について理解する必要があります。
「信頼」は、実は非常に多面的な言葉です。

①天気予報で昼から雪と聞いて、気温は低いと思ってダウンを着よう。
 
→これは自然現象を信頼しているからできる意思決定です。

②まだ降雪してないため、電車が遅れないだろうし、定刻に家を出よう。
 →これは公共交通機関の働きを信頼しているからできる意思決定です。

③他の社員も普通に出社してくるだろうから、朝会は通常通り開催しよう。
 
→一緒に働くメンバーの真面目さを信頼してるからできる意思決定です。

上記3つとも信頼が基礎にある行動ですが、
実は、それぞれが異なる種類の「信頼」に基づいた行動でもあります

それぞれの「信頼」を図にすると次のようになります。

「信頼」は「自然的秩序および道徳的社会秩序の存在に対する期待」という
2つの(異なる)概念を包含しています。
(1) 自然的秩序に対する期待  =雪が降る日は寒い
(2) 道徳的社会秩序に対する期待=電車は動く、社員がちゃんと出社する

「道徳的社会秩序に対する期待」もさらに2つに大別できる。
(2-1)相手の能力に対する期待…実行する能力を持っているか
(2-2) 相手の意図に対する期待…実行する気持ちがあるか

山岸俊男「安心社会から信頼社会へー日本型システムの行方(1999)」を参考に作成

上記のうち、心理的安全性に作用する「意図に対する期待」は、
(2-2)実行する気持ちがあるかに該当します。
従業員の心理的安全性を高める能力がある会社(福利厚生費に充てる資金が十分であるとか、Missionで従業員ファーストを掲げているとか、代表がその手の発信を続けている)では不十分で、
従業員の心理的安全性を高めるために何かをしてくれる!と信じられるだけの姿勢・行動力が大事ということですね。

□ 会社に対する「意図に対する期待」の育て方

しかし、スタートアップは、原資にも限りがあり、
実行できる手数にはどうしても限りがあると思います。
その中で「会社の意図に対する期待」を育てるにはどうすべきでしょうか。

山岸さんは著書の中で、
(1)相手がそんなに「悪い」人間に見えない場合
(2)相手が自分に好意を持っていることがわかっている場合

に、期待を高めると言っています。
結局は非常に主観的な部分で作用されることがわかります。

ちゃんと1人1人の従業員に向き合うだけでも、十分に「意図に対する期待」を高めることはできるのではないでしょうか。

特に(2)について、「影響力の武器」という超有名な書籍でも、「人の態度や行動を変化させる心理的な力」の1つとして「好意」が取り上げられています。

・外見的魅力がある
・類似性がある
自分に好意的である
・接触回数や協働した回数が多い
と判断した時に、人は対象に「好意」を感じる。

ロバート・B・チャルディーニ「影響力の武器 第三版(2014)」を参考に作成

□ 「社会的不確実性」とは何か

今度は反対に、「社会的不確実性」についての解説です。

人が、他者を信頼する場合、自身の財産や評判・自尊心などが、
奪われたり傷つけられたりする危険に晒されることになります

こうした、自身が危険に晒された状態のことを、「社会的不確実性」が存在してる状態と呼びます。

社会的不確実性が存在している社会では、自分の身と財産を守るために膨大な時間やエネルギーがかかることから、それ以外の生産的な活動に投入できる時間やエネルギーが制限されてしまいます。

社会的不確実性を取り除く方法は2つあります。
1つ目が、いわゆる「人質」、担保を取る方法です。

担保があることで、相手が有言実行する状態は、相手を信頼する必要ありません。やらないと相手に損失が生まれるからです。
これが「(3)安心」の状態です。
しかしこれは、会社と従業員の間では適切な関係構築ではありません。

もう1つが、会社と従業員の間で、「コミットメント関係」を築くことです。

「今後も長く付き合っていく可能性の強い相手」との関係を育み、
社会的不確実性を低下させる方法です。

これは会社と従業員で考えても凄い理解しやすくないですか? 例えば、個人の目指す方向と、組織的の目指す方向が、一定期間に渡って重複していることを示せたらいいんです。

また、社会的不確実性は、相手の意図がわからないことから生まれるため、相手の考えや行動についての情報が十分に手に入れば不確実性は低下していきます。

私は、チームメンバーに対して、予め次の資料を見せています。
また、トラブル発生後にフィードバックする際も、これを念頭において、事前に伝えた通りのコミュニケーションができるように心がけています。

ミス自体は全然OK。NGなのはミスを隠したり、嘘ついて責任転嫁してしまうことだけ。

組織の心理的安全性を高めるために必要なのは、
「安心」と「信頼」のこの違いを理解した上で、
「社会的不確実性」を小さくし、「信頼」を育てることです。

■ まとめ

改めて、心理的安全性を高める公式です。

心理的安全性を高めよう!と言うのは簡単ですが、具体的な行動が伴わなくては意味がありません。

会社の意図に対する期待を大きくするのか、
社会的不確実性を小さくするのか、といった観点から、
施策を考えてはいかがでしょうか。

■ 参考書籍

この信頼の整理凄いな!と思っていただけた方、山岸俊男さんの「安心社会から信頼社会へー日本型システムの行方」を読みましょう。
(リンクはAmazonアソシエイトプログラムじゃありません)

心理的安全性についてもっと詳しく知りたい!という方は、
エドモンドソンのこちらの書籍を読んでください。
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ちょろっと出てきた「好意」の話をはじめ、
人を動かす「信号刺激」6つを解説しています。
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